黒百合
君の名前教えて?
名字じゃない方、教えて?桃川夢子
全てのモブ系女子。
主軸のストーリーには一切かまない、悟が付き合ってるわけではないけと手を出した大勢の女の総称。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
パンケーキを食べたあとで、適当な服屋でまともなシャツに着替えてもらった。
悟に任せているとどう見てもウケ狙いの変な柄シャツしか持って来なかったので紺色で無地のシャツを私が選んであげた。
地味でつまんねーと言って最初は購入を渋っていたものの、笑顔で似合う、かっこいいと言うと少し照れながらレジに持って行った。
余計な事さえ言わなければ、意外と単純で可愛い奴だなと思う。
「世衣、ゲーセン行かね?」
彼は店を出るなり私の右手をぎゅっと握って言った。
うっかりときめいてしまった自分に内心焦りながも、何でもない顔を作って頷く。
落ち着け、これはゲームだ。この男を完全にオトしてフルのが私のミッションなんだ。これは復讐なんだから。こいつは私の友達を傷付けた悪い奴なんだからやっつけてやるの。
初デート記念のプリクラを撮ろうという話なりゲームセンターの地下にあるプリ機がたくさんあるエリアへと向かった。
彼はフレームや設定の拘りがないと言い、全てのタッチパネル操作を私に丸投げし、妙にソワソワし始めた。
その態度に違和感を覚えながらも、さっさと操作を終らせて撮影を開始する。
全八回の撮影のうち、二回目までは普通に二人並んでピースや変顔して撮った。
三回目で彼は後ろから私に抱き付いた。
バックハグという名のモテテクを使える男とは思わなかったので素直に感心していたら、突然私の顎を手で固定して、キスをしようとしてきた。寸前で額と片手で押し返す。そのまま何度か押し合いしたあと、彼は舌打ちをして今度は左手で私の胸触って右手でシャツワンピースのボタンを外そうとしてきた。
嘘でしょ、こんなとこで!
可愛いなんて思って油断した自分を恥ながら右のヒールで思いっきり足を踏んでやる。
「った!……嘘だろ…本気で踏みやがって…」
しゃがみこみ踏まれた足を抑えながら少し涙目に睨んでくる。
「正当防衛でしょ。」私がゴミを見るような気分で彼を見下ろすと、プリ機から空気の読めない明るい音声が流れた。
『これでいい?よかったら決定を押してね』
いーわけねーだろ、と心の中で呟く。
とはいえ撮り直す気分にもなれなくて落書きは一切せず印刷されるのを最低な気分で待っていた。悟はとなりにいるものの携帯電話を無言で弄っている。
妙に長く感じた印刷待ちを終えて、プリを二等分に切って渡すといらね、と拗ねてる、と分かりやすい顔で視線も合わさす言われたのであっそ、と感情を殺して答える。
そのあとは無言で受け取り手を失ったプリを適当に切り刻んでゴミ箱に埋葬した。
最低だった気分も一緒に捨てるつもり投げ入れたので少し頭が冷えてきた。
「もう帰るね。」
今日はこれ以上一緒にいても無理だと判断して仕切り直そうと思った。
「ちょ……まだいいだろ?五時帰りとか小学生かよ。」さすがに焦っているのか、私の手を引っ張って自分の方へ寄せた。
「小学生みたいな拗ね方する男となんて五時帰りで十分でしょ?」小馬鹿にするみたいにわざとにやけ顔で言う。
「……お前、学校と性格違わね?」
「そう?でも、彼氏には本当の私知ってほしいみたいな、ね。」いや、ほんとのネタばらしはまだ先なんだけどね、と心の中で呟く。
「この猫被りが!そうやっていつも男喰ってんだろビッチ。」
ただの煽りだと分かっていてもさすかにイラっとしてきたので繋いだ手をやや乱暴に振りほどき無言で踵を返す。
分かってる。悟は本心で言ってるわけじゃない。
ガキめ、と誰にも聞こえないような小さな声で呟いた。
次へ→