nightmare
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「お前のせいだ!!!お前のせいで、また失った!!お前のせいで!!ヒーローのせいで!!!!!」
だから、お前も、お前の周りも、今度こそ!全て消す!!
*
「った…」
ガンガンと痛む頭痛で目覚める。あの男の声が脳内に響いて、あの時の苦しさも思い出して思わず首に手をやる。大きく息を吐くと、背中に汗で病院着が張り付いて気持ち悪い。
嫌な夢だった。おかげで寝たのに寝た気がしない、完璧に寝不足。ひとまず着替えよう、と体を起こした。差し込む光が眩しい。
昨日はあの後、直ぐにひざしさんとねむりさんが来て痛いほど2人に抱きしめられた。ひざしさんなんか泣きまくって大変だった。
正直鬱陶しいほどに、離れてくれなかったけれどそれだけ心配かけたってことで昨日ばかりは何も言えなかった。最終的には消太さんに強制的に剥がされて帰ったのは笑った。いくつだよあの人……
朝ごはんを食べて、スマホを開くとめちゃくちゃな件数が来ててびっくりする。昨日は疲れてすぐに寝ちゃったから見てなかったけど、こんなに来てたとは……ひとまずクラスLINEにひとこと入れておこう。
昼過ぎ、ぼーっとテレビを見ているとこんこんとノック音がして「はーい、どうぞー」と答えると、入ってきたのは紅白が鮮やかな髪の、彼。まさかの人物に目を疑うけど、間違いじゃない。
「無事で、よかった…」
「しょ、うとくん…?」
無言でこちらに歩いてきたと思えば、次には手を引かれて彼の胸の中。背中に回された腕の力が伝わたって来て、抱き締められてるんだって分かって止まる頭。
「… 心?」
「ごめっ、止まんな……あれ?」
じんわり伝わるあったかさに、勝手に何故か溢れてきていたそれ。慌てて彼の胸を押して拭おうとするんだけど逆に彼はさらにぎゅっと力を込めてくる。
「…助けられなくて、怖い思いさせて、悪かった」
ずっと抑えていたものは彼の言葉で簡単に取り払われてしまうんだから、ずるい。消太さんの前だと、お父さん達のこともあったから気張れたのに。
今泣いたら余計に心配をかけてしまうことも分かってるのに、他でもない焦凍くんに言われたら、止めなくてもいいかと思ってしまった。
しばらくして、落ち着いた私はようやく羞恥心、というものが帰ってきて俯きながら離してもらう。
「落ち着いたか?」
「あの、ほんっと、なんか情けない姿ばかり見せて申し訳ない……」
わりとぐっしょりと濡れたあとがついてしまってる胸の辺りから視線をそらしつつ謝ると「別に情けなくはないだろ」と言うもんだから、思わず彼の顔をまじまじと見てしまう。
「え、いや、仮にもヒーロー候補が敵に攫われたぐらいで……」
「あんなとこの中心にいて、怖くないわけねぇだろ。…それに、ヒーローだって人だ。怖いもんだってあるだろ」
私の手をとって、そして真っ直ぐに目を合わせて言われた言葉にまた泣きそうになって、今度は堪えた。手から伝わる温もりは心臓をゆっくりと、大きく動かす。
「…そっか」
「ああ」
焦凍くんは、すごい。こんなに簡単に沈んでいたところを救いあげてくれる。
「……焦凍くん達が、来てくれたから私は今ここにいる。あの時ね、焦凍くんの氷が見えて、大丈夫だ!って敵に囲まれてピンチなのにさ、思っちゃった」
「……」
「助けてくれてありがとう!ヒーロー!」
ずっと泣いてばっかりだったけど、ようやく笑えた。それに内心ほっとして、安心してたから次の言葉は予想できなかった。……いや、そうじゃなくても予想なんてできるもんじゃない。
「…なあ、心」
「ん?」
「好きだ」
2つの色の違う瞳が、ゆらゆら揺れて綺麗だなんてどこか他人事のように思った。窓の外からよく鳴く蝉の声が、やけに大きく耳に響いた気がした。
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