nightmare
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翠蒼さん達は、元犯罪者達が更生できる。つまりやり直せるような機会を与えられる社会づくりをしようとしてた。
当時は、1度間違えばやり直しが聞かないような社会だったからな。…今もそうではあるが、今以上にな。
それで、その取り組みのひとつとして働く場を与えること。具体的にいえばヒーロー事務所の事務員として雇ったり…という事だな。それをしようとしていた。
だがまあ、当たり前だが反対意見も多くてな。1度敵に落ちたものはこちら側に2度と戻れるわけがない、危険すぎる、と。
けどあの人らは言ってたよ。「間違えた人間に、道を指して照らしてやる。外れたところから引き上げてやる。それこそが真のヒーローじゃないか」って。
ほんと、どこまでもヒーローというか…大きなお世話というか…どこに捕まえた敵の後のことまで心配するヒーローがいるかって話だ。
そんで、その試みの最初で最後の人物が夢喰進次郎。…翠蒼さん達を殺した主犯。
そしてもう1人、裏切ったヒーローというのがヒーロー名バンデッジ、本名は縛里康輝。
夢喰進次郎は、元々ヒーロー志望。だがまあ叶わず、ヤケクソで敵へと落ちていった。だが翠蒼さん達に拾われ事務員をやることになった。そこから徐々に更生してるように見えたんだが……ある日突然姿を消した。
その頃ちょうど、あの人達に1つ大きな敵の掃討が依頼されていた。だから直ぐにその行方ばかりを追うわけにもいかず、俺も夢喰の行方を探すのを手伝ってはいたが、見つからなかった。
でも再会は早かったよ。掃討作戦だ。…あとから知ったんだが、翠蒼さん達は早くにその掃討作戦で同じヒーローをやらなきゃいけないことを知っていた。んで、そのヒーローって言うのが……そうだ。裏切ったヒーローだ。
作戦の情報をどこでどう知ったが知らないが、夢喰はそのヒーロー、バンデッジに情報を漏らしてた。そして翠蒼さん達はその作戦で、亡くなった。その横に、つらつらと動機が書かれた紙を置いてな。
だが翠蒼さん達は覚悟してたんだろうな。裏切りの可能性もあることを。2人はもしそうなった場合、世間に公表しないでくれ。
死んだらそれは、殉職した、ということだけを公表してくれと。もし、元敵に殺されたということになれば、永遠に彼らの更生の機会を奪うことになるから、と。
もちろん上はそれを理由にして隠したが…1番の理由はヒーローがヒーローを殺したという事実を隠して秘密裏に処理したかった。
汚いことだが、ヒーローがヒーローを裏切ったという事実を作りたくなかったんだろうな。なんせオールマイトが台頭し始めたが、まだ安定してない時代だったのもある。
……そんで、あの人たちは人知れず殉職しヒーローを引退した。
*
「今もまだ、2人は捕まってなかった…が、夢喰の方は敵連合の一員、ということか」
「……うん。そういうこと、だね」
「…そうか」
再び訪れる沈黙を、またしても破ったのは消太さん。
「隠してきて、悪かった」
ああもう。消太さんは、やっぱりどこまでも優しい。
私が、ヒーローを恨まないように。何にも囚われることなく、まっすぐ夢を目指せるように。
だからずっとずっと背負わせてきてしまったんだ、と改めて思う。…さっき、泣かなくてよかった。これ以上この人に頼るわけにはいかない。
もう沢山甘やかされてきたんだ、そろそろ自立しなきゃって思いと、憧れのヒーローのまえだから、ちょっとカッコつけたいったいうところもあったり。
だから頭を下げようとするのを止めて、彼の目を真っ直ぐ見つめて向き直る。
「消太さん、ありがとうございました」
「…なんの礼だ」
「でも、もう大丈夫ですよ。心配しなくても」
「……」
「言ってくれたんじゃないですか。記者会見」
「あれ、聞いてたのかよ……」
アジトでテレビ点いてました!と笑えばあのなあ…と頭を叩かれる。その顔は改めてみたら、うっすら隈ができてたのを見つけたけど黙っておく。
「それに、私は偉大なヒーローのフローシェとストフリーの娘です。なにより!消太さんに育てられたんですよ!」
「……そうだな」
にっ!と笑って見せれば、少しだけ目を見開いた後、呆れたように、でも優しく笑ってた。
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