nightmare
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空を見れば夜が明け始めていた。
「…行こっか。轟くん達と合流しよう」
画面を見て、湧き上がる人と真逆に1人泣いていた緑谷くんが私たちに言う。何も言うことが出来なかった。ただ頷いてごった返す人の中を歩き始める。
「爆豪!怪我してんのか!?」
「は?」
「いや、さっきまで全然気づかなかったったけどお前ズボンめっちゃ血ぃついてんぞ」
隣を歩いていた切島くんが、少し前を歩く爆豪くんにそういうのでみんなの視線が彼のズボンに集中する。あ、ほんとだ…ベッタリだ。
そんな様子は一切なかったけど見落としていたのか。でも量的に結構出てるし、嫌がるだろうけど止めさせてもらおうと踏み出した足がカクンと曲がる。
「あ、れ…?」
「おい!翠蒼!?おまっ、足!」
「翠蒼くん!君、顔真っ青じゃないか!!止血出来るものを!!個性を使わせるのは危険だ!!」
「翠蒼さん!!」
ああ、そういえば足、刺されてたんだっけ。個性使って止血して…なかったな。やってたとしても、ちゃんと出来てなかったのか。
それなら爆豪くんの服についた血って、私だろうな。ごめん、と口を動かそうとして上手く動かない。
貧血で霞む視界。今頃になって痛みが来るけど、それよりも瞼が重い。
「心!!!!!」
最後に君の声が聞こえた気がした。
*
再び目が覚めると、1番に入ってきたのは天井と点滴。少しだけ、視線を横にずらすと消太さんがいた。
「しょ、う、たさ、ん」
「っ!起きたか」
「ここ、は?」
「…病院だ」
名前を呼んだつもりが、カスカスの声が出てびっくりした。……そうか、病院ってことは倒れて運ばれたのか。ぼんやりとした頭が少しずつ回り始める。ゆっくりと支えてもらいながら体を起こすと、足に巻かれた包帯が見えた。
「あの、みんな無事ですか?ちゃんと」
「起きて早々それか……無事だよ、ちゃんと。1-AもBも、ちゃんとみんな無傷じゃなくても無事に帰ってきてる。お前が最後だ」
「そっか……良かった」
1番怖かったことを聞くと、呆れたように溜息をつきながら答えてくれた。てことは、ちゃんと救けてくれた彼らも無事に帰れたってことか…
「…おかえり」
「っ、ただいまっ!」
唐突に言われた言葉に、びっくりしたけど笑って見せれば消太さんに、いつもの様に頭をぐしゃぐしゃと混ぜられてまた笑う。腕を伸ばせばぎゅっと抱きしめられた。
その温かさに、ようやく帰ってきたんだなあと実感した。
しばらくして、お医者さんが入ってきてここに運ばれるまでのことを説明される……というか半分ぐらい説教だ。どうやら私は倒れてから丸1日寝てたらしい。
「ほんと、すぐに周りの子達が止血してくれたからいいものの。危なかったからね?いくらなんでも気付こう?」
「うっ……す、すみません…」
倒れた原因は出血による貧血。刺された場所が太ももだっただけに、大動脈を掠ったらしい。幸いにも後遺症とかは残ったりしないが、痕はのこるからね!と言われてしまった。
「あと2、3日は入院してもらうことになるけどいいね?」
「はい……」
「それじゃあお大事に」
がちゃん、とドアが締まる。そして消太さんと再び2人きり。
なんとなく、言うなら今しかないと思った。
「消太さん」
「なんだ」
「…敵連合のアジトで、お父さん達のこと聞きました」
緊張で声が震えたのが分かる。少しだけ消太さんの目が見開かれた。
しばらくの沈黙の後、「どこまで聞いた」と静かに問われ「ほぼ全部です。動機も含めて、全部」と応えると「そうか」と返ってきて再び静かになる。その沈黙を破って、真っ直ぐに消太さんを見つめて私は言う。
「でも、消太さんの口からちゃんと聞きたい」
「……わかった」
少しの間を置いて大きな息を吐いた後、消太さんはポツリ、ポツリと語り始めた。
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