nightmare
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"心!!!"
「しょう、と、くん……」
目を覚ますと、視界に入ってきたのは知らない部屋、そして複数の人。手を軽く揺すると動かない体。……そうだ、連れ去られたんだ。爆豪くんと共に。
隣りをちらりと見えた爆豪くんはまだ眠っている。モヤに飲み込まれすぐに、薬か何かを嗅がされたからその影響だろう。窓はないから時間は分からないが、体のだるさ的にかなり長い時間眠らされていたと推測。
「焦凍くん…轟焦凍か。なんだ、恋人か?」
「……誰」
「しがない敵さ。死柄木、夢喰、こいつであってんだよな?」
「ああ……!ようやく……!」
「おい、手は出すなよ。まだだ」
「ちっ、わかってるよ」
最初に起きた私に気づいたのは、継ぎ接ぎだらけの男。そして奥からUSJの時にもいた死柄木と、夢喰と呼ばれた、よくわからない男。
改めて数えると今でてきた2人を合わせて、8人。何やらワイワイと騒いでいる奴もいる。ほとんどか覚えはないが、直前に包まれたモヤは間違いなくカウンターのようなところにいる黒霧によるもの。今回の一連の騒動は敵連合によるものだとすぐにわかった。
「それで私達を拉致って、なんの用?」
「スカウトさ!そこのが起きたらにしようかと思ったが…まあいい。夢喰、話すんだろ?」
「ああっ!ようやく…!!」
バレないように拘束を揺らしてみるが動けそうにない。その状況でこんだけ囲まれる、となると嫌な汗がツーっと背中を伝う。震えそうになら体を抑えて、睨みあげた。
「私はなんにも話すことないし、聞きたくもない」
「俺がお前の両親を殺したって言ってもか?」
「っ!?」
声も出なかった。お父さんと、お母さんを殺した敵が、犯人がなんでこんなとこに。ましてやそれが敵連合となんで手を組んでいるのか、分からない。
黙った私の表情に笑ったそいつは、つらつらと話し始める。まるでおとぎ話をするかのようにうっとりと、笑みを浮かべて。
そしてねっとり、私の首を掴んだ。嫌だ、気持ち悪い。ひゅっと息がなる。
「ただ個性のおかげでヒーローになれたやつが褒められてる?賞賛されてる?こんな世の中腐ってる!おかしい!なんで俺はヒーローになれなかった?ずっと、ずーーっとそう思ってきた。けどな、お前の両親は違ったよ。あいつらだけはな!!俺にヒーローになれると言って、俺の価値をようやく認めてくれた!」
徐々に、徐々に力が入れられていく。気道を塞がられる圧迫間と酸素が薄くなっていく息苦しさ。
「だが、お前を生んだ。強い個性をもったお前を生んで、俺を否定した!!!……だから、ヒーローである俺が殺してやったんだよ。間違いをしたら、正すのがヒーローだろ?そして、娘のお前が強い個性をもつだけのお前が、ヒーローなんかなれねぇようにな!両親は命を持って教えてくれたんだ!お前のせいでお前の親は死んだも同然だ!!!なのに!!お前は!!!!」
さらに力が込められる。視界がもう霞んできた、酸欠の頭がガンガンとなる。苦しい。辛い。生理的な涙が頬を伝うのがわかる。
それを勘違いしたのか知らないが「泣いてんのか?許して欲しいか??」とニヤニヤ笑う男を睨みつけても、それは止まってくれない。
嫌だ、こんなやつの前で泣きたくない。唇を噛み締めてみても止まらない。
「俺はなあ、お前みたいな!ただ強い個性を持つ。それだけで全部手に入れて、なりたいもんになってる奴らがな、大嫌いだ!ひたすら前だけ見て、自分より後ろのやつは振り向きもしねぇ!そんなのヒーローじゃねぇよな!?ああ!?」
ふざけんな、あんたに何がわかる。
高校に入って出会ったみんなの顔が浮かんでくる。どんな思いで、どんな気持ちで、ヒーローを目指してるかも知らないくせに。ただ強い個性を持つだけだなんてふざけるな。
悔しい、言い返せないのが。なすすべもなく殺されるのは嫌だ。拘束されて動かない手でも、どうにか個性をだそうとした瞬間。
「やりすぎだ、手出すなつったろ。くそが」
ハラハラと、私の首をつかんでいた手が崩れていき離れた。ようやく入ってきた新鮮な空気に咳き込む。酸欠の頭がガンガンとする中、視界はクリアになっていく。
その先には両腕をなくして叫ぶ男。
突然崩れるだなんて、そんなこと出来るのはこの場に一人しかいない。嘔吐きながらも顔を上げた先には肩をすくめる死柄木。
信じられないと言ったような視線に気づいたのだろう。「約束破ったそっちが悪いんだからいいんだよ」と言ってのけるその感覚に、ゾワッと恐怖を感じた。それでも今それを見せるわけにはいかないと、死柄木を睨む。
「おいおい、助けてやったんだぜ?…ああ悪い悪い。敵討ち、したかった?USJの時、実の両親じゃないイレイザーですらあの目で向かってきたんだ。そうだろ?」
まあ安心しな。まだ死んでねぇからよ、と悶え苦しむ男を横目に薄く笑う死柄木は黒霧に「そいつしまっとけ」と言ってどこかへ連れていかせた。
その目に体が勝手に震え始める。おかしい、とかそういう次元じゃない。煩い、黙れ。そう言いたいのに。そんな私の様子を見て、死柄木はそれを愉快そうに笑って、まだ話す。
「でもまあ、お前の両親が死んだのはこいつだけのせいじゃねえ。こいつの個性は、夢を喰う。それだけだ。その個性でお前の両親を同時に殺せると思うか?…そんなわけねぇよな。分かるだろ?答えは簡単、協力者がいたんだよ、その協力者は、」
死柄木が言いかけたと同時に、がちゃりと隣から音が鳴る。
「った…なんだよこれは、おい」
「おお、お目覚めか。……それじゃあ、昔話はここまで。本題に入ろう。早速だが……ヒーロー志望の爆豪勝己くん、翠蒼 心さん。俺の仲間にならないか?」
「寝言は寝て死ね」
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