夏だ!海だ!林間合宿だ!
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週が明け、あっという間に終業式を迎えいよいよ林間合宿当日。
私の方はと言うとあれから別に特段何もあるわけじゃなく、警察の方から連絡が来たけどそういった人物の不審者情報や事件の話は出ていないらしいので、まあ安心と言っていいところだろう。
そして私よりももっと大きな事件になりかけていたのが、買い物に行っていた組。緑谷くんがあの死柄木に接触されたらしいのだ。そういうことがあり、私たちにすら行先は当日まで知らされない、ということになった。なにはともあれ全員無事に合宿にいけるならオールオッケーだ。
「ええ!A組補習いるの?つまり赤点とった人がいるってこと!?」
みんなで集合場所に集まってワイワイしているところに、突然B組の子が吹っかけてくる。この子誰だっけ…ああそうだ、思い出した!物間くんだ。なんかA組に恨みでもあるの?ぐらい突っかかってくんなあ、と眺めてたら拳藤さんに手刀で沈められてた。
それにしても、とB組女子を眺める。
「可愛い子ばっかじゃん…!目の保養!」
「あんた時々峰田みたくなるからやめな」
「いっ!響香ひどい!」
バシッと見惚れてたら、私も手刀を入れられた。痛い…と摩っているといつの間にかもうみんなバスに乗りこんでて、慌てて私も追いつく。
窓際の席が空いていたので、そこに座る。酷くはないけど酔ったりもすることもあるのでラッキーだ!なんて考えてたら「心」と名前を呼ばれる。焦凍くんだ。
「隣、いいか?」
「おー!どうぞどうぞ!」
「ありがとう」
少しだけ口角を上げてから隣に腰を下ろした。ふとした時に見せるそういう表情に、いちいち小さく胸が鳴るのはまだ慣れない。…ああもう、今から合宿!!しっかりして私!!
「あれから大丈夫か?」
「うん。あれから特に付きまとわれたりとかもないし!」
「…そうか」
少し声を潜めて聞いてくれるその気遣いが嬉しい。思わず顔を緩めて応える。するとほっとしたような顔をする彼に、また心臓が鳴る。ありがたいことにそれをかき消すようにバスの中が騒がしい。おかげで気が紛れる。
てか今あまりの騒がしさに、消太さんみんなになんか言おうとしたのにやめたよね。……なんかめちゃくちゃ嫌な予感するな。長年の勘がこう、びしびしと伝えてくる。
「どうかしたか?」
「え、ううん。みんな元気だなーって」
「そうだな」
とはいえ確証はないしどう説明していいか分からないので、多分眉間にシワがよってただろう私に尋ねてきた彼には誤魔化す。まあ勘違いならそれがいい。
「でも合宿ってどんなことするんだろ。消太さんがキツイって言うぐらいだし、血吐くぐらいまではなんかやらされそう」
「…… 心が言うとすげぇ現実的だな」
「あはは!でもみんなと一緒なら大丈夫な気がする!頑張ろうね!」
ガッツポーズをつくって焦凍くんの方をむくと、無言で頭をぐしゃぐしゃっとやられる。「どうしたの急に」と聞いても「…なんとなく」と表情一つ変えずに答えられるので困惑するしかない。
別に撫でられるのは嫌いじゃないし、というかむしろ安心はする。するんだけど、自覚した今心臓もうるさく動く訳でして。……お陰様でせっかく収まった心臓がまた忙しなく動き出してしまったじゃないか。
恋愛初心者は辛いなあ、と乱れた髪を直した。
*
1時間後、停車したバス。休憩だー!とゾロゾロバスから降りるんだけど、びっくりするほど何も無い。峰田くんが必死に探してるけどトイレすらない。
……あれ、おっかしいな。また嫌な予感してきたよ。
「つーか何ここパーキングじゃなくね?」
「ねぇアレ?B組は?」
「お…おしっこ…」
「何の目的もなくでは意味が薄いからな」
消太さんの言葉にそれはだんだんと確実なものになっていく。私に広がる不安とは逆に、「よーー!イレイザーーー!!!」と明るい声。「ご無沙汰してます」と頭を下げている先にみんなの注目が集まる。
そこに居たのは2人組のヒーローと小さい男の子。プッシーキャッツさん、と言うらしい。今回お世話になるそうだ、うわあすっごい猫。可愛い。
「連名事務所を構える、4名1チームのヒーロー集団!山岳救助等を得意とするベテランチームだよ!キャリアは今年でもう12年にもなる……」
緑谷くん名物のヒーロー語りが聞こえてどんな人かわかる。凄いなあ12年、と思ってたらピクシーボブさんに緑谷くん殴られてた。心は18!だそうだ。
そんな2人の横で、マンダレイさんが「宿泊施設はあそこね」と指したのは遥か向こうの山の麓。私だけじゃなく、全員に嫌な予感が走る。
「今はAM9:30。早ければぁ……12時前後かしらん」
「ダメだ……おい……」
「戻ろう!」
「バスに戻れ!早く!」
「12時半までに辿り着けなかったキティはお昼抜きね!」
みんなバスに駆け出したんだけど、もう手遅れ。
「わるいね諸君。合宿はもう始まってる」
無情な消太さんの言葉と共に、地面ごと空に投げ出される。大量の土と共に着地したのは崖の下。上からプッシーキャッツさん達がこちらに向かってさらに残酷な事実を告げた。
「私有地につき個性の使用は自由だよ!今から3時間!自分の足で施設までおいでませ!この!魔獣の森を抜けて!」
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