気張ってこーぜ!期末テスト!
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7月に入れば昼間はもう、めちゃくちゃ暑くなる。
左手に持った花が枯れてしまわないか、と一瞬不安になったけどまあ目的地まではあと少しだし大丈夫だろう。そう思いつつ少しだけ足を早める。
「お父さん、お母さん、久しぶり」
色んな人のお墓の影が伸びる中の1つ。お父さんとお母さんの眠る石の前に腰を下ろして告げる。返事は相変わらずない。色々ドタバタしてたこともあって、ここに来るのは久しぶりだ。たぶん入学して少し後に来たくらい。
少し土があがった部分を払って、出入口のとこから取ってきたペットボトルで水をかけて持ってきた花を挿す。今日は特別な日だから、本来ならお墓に備えるもんじゃないけどひまわりにした。2人が好きだと言っていた花だ。
もう鳴き始めた蝉のサウンドをバックに、手合わせ目を閉じる。
憧れの雄英に合格して、もう4ヶ月経ちます。消太さんは相変わらず厳しいけど優しいです。あとまさかの担任でした。
ほんと雄英入ってから色々あったんだ。言ったら2人ともめちゃくちゃ心配されそうだし、語りだしたら長いので割愛するけど、ほんっとに色々あったんだ。でもね、素敵な仲間に恵まれたおかげでちゃんと元気にやってます。いつか会わせてあげたいな。ここに連れてこれたら良いなとも思うよ。
あとね、ヒーロー名決めたよ。2人に貰った名前にした。これから2人を超えるくらい強くなって、いつか天寿全うした後にさ、お父さん達に胸張って会えるように頑張るからさ。
もう大切な誰かを二度と失わないように、みんなの大切なもの守れるヒーローになるから。
でも、やっぱり、今日だけは思っちゃうな
「生きててほしかったなぁ……」
お父さん達のことは割り切ってる。二人がいないからといって不幸者だなんて思わないし、いない世界を恨むつもりもない。だけどそれでも願わずにはいられない。
けれど今は私の生きてるこの世界が全てだから、前を向く。
*
昼ごはん何にしようかなーと帰り道を歩く。真っ昼間だからいいけど、この辺夜は絶対怖いな。人通りがこんなにないとは。
「オムライスかな〜……ん?」
なにか視線を感じて振り返る。その先には1人の男の人。じっと私を見てて、何か用かなと見つめてみるけど声をかけてくる気配はない。
知り合い…ではない顔だし、普段の生活を思い出してみても接点がある人じゃなさそうだ。本当に何の用だ?正直気味が悪いし、無視しようと決めて歩きだそうとするんだけど
あれ、なんで。足が動かない。
その間にもその男の人はニタニタと笑いながら1歩、1歩と距離を詰めてくる。足は動かない。こうなったら個性を使って、と思うのに腕すら動かないことに気がついた。誰か、助けて、誰か
「心!!」
「しょ、と、くんっ」
「……お前、誰だ」
名前を呼ばれ、パニックに染っていた頭がクリアになる。焦凍くんは私を庇うように前に出て、向かってきた男に低く尋ねる。けれどその男は、ちっと舌打ちをしたあと反対方向に走り出した。
瞬間、体の力が抜けて膝から崩れ落ちる。やばい、呼吸ができない。ヒュッと口から音が漏れる。
逃げる男を追いかけようとする焦凍くんの服を、咄嗟につかんでどうにか止めた。どんな人かも分からないのに巻き込めない。フルフルと首を振ると理解してくれたようだ。
「知り合いじゃねぇよな?って……おいっ、心っ」
「だい、じょう、」
「過呼吸か…悪ぃ、ちょっと我慢してくれ」
ヒュッヒュッと息を吸おうとする私の様子に異変を感じ、一緒にしゃがみこんで腕を引かれる。彼の胸の中に閉じ込められて、トクン、トクン、と心臓が響く。
「吸わなくていいから吐け。慌てなくていい」
どれくらいそうしていたか分からない。でも酸欠でゆがんでいた視界が少しずつクリアになっていく。息も落ち着いて、手も動く。彼の胸を緩く叩けば、ゆっくりと話してくれた。
「…ごめん、落ち着いた」
「よかった。どっか痛いとことかねぇか?とりあえず動けるなら近くの警察署までいくぞ。敵かもしれねぇ」
こくり、と頷くと手が差し伸ばされる。迷うことなくその手を掴むと、ぐっと引っ張られて離されることなく歩き出す。じんわりと暖かいが広がるその手に、どうしようもなく泣きそうになった。
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