気張ってこーぜ!期末テスト!
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「それじゃあ、期末テストお疲れ様ってことで…」
「「「乾杯!」」」
学校帰り、前々から約束してた響香と百の3人でマックで寄り道した。百はこういうとこに来るの初めてみたいでソワソワしてる。くそほど可愛い。ボックス席に2人と向かい合う形で座った。
「響香、マイク先生だったよね?」
「うん。口田が頑張ってくれたおかげでクリア出来たよ。まさか虫が苦手なんて思わなかったけど」
そうか、ひざしさんは虫が苦手なのかと長年の付き合いながら初めて知った情報を頭にメモ。今度ゴキブリのおもちゃでも仕掛けとこうかなと画策する。
詳しく聞けば、なんと口田くんの個性で岩の下にいた虫たちを操って地下から潜り込ませ、そして身体中に這わせたらしい。想像してたよりえげつなかった。
「心は難易度高すぎなかった?よく勝てたよね」
「ええ…私も少し思いました…」
「まあどの道1人余るしね。それにみんなと同じハンデに加えて、相澤先生、私の時だけ個性の使用回数3回制限あったから」
「へー」
さすがにトラウマや消太さんとの関係を洗いざらい話すわけにもいかないので、そこら辺はぼかさせてもらう。でも納得してもらえたようだ。ポテトをつまみながら「ヤオモモは?」と話を振る。
そして百から聞く話は、試験が終わってすぐに教えてくれたものと一緒で、ちょっと前に自覚した感情がズキズキと主張してくた。……もう、楽しい時間なのになんでそれを壊そうとするかな。視線が俯き気味になりそうになるのを堪える。
「でも轟さんは本当に心さんのこと、信頼しておられるのですね」
「…私?」
「ええ。試験中に"心に、なんかあったら八百万をちゃんと頼れって言われた"と仰ってたこともそうですし、心さんが試験中にバスで待機してる時は"あいつは必ず合格する"って、迷いなくおっしゃってましたもの」
「っ」
百の言葉に、決壊する。あっという間に視界がぼやけて、ポロポロと流れ落ちてくる。
「あのね、百、ごめん、あのね」
「ちょ、心、大丈夫?落ち着こう、ね?」
「え、ええ…それに謝られるようなことしてませんわ」
オロオロしてる2人。困らせたいわけじゃないのに、どんどん出てくるそれは止まりそうになくて勢いのまま吐き出した。
「違う…謝らなきゃ…。私、焦凍くんのことが好きだ…!それで、百に嫉妬した。親友なのに、酷い感情、向けそうになって、最低で、それで、ごめん、ごめんっ」
「…やっと自覚したか〜!」
「心さん、泣かないで下さい。私は全然気にしてませんし、むしろ嬉しいですわ」
「え…」
ムギュっといきなり向かい側から乗り出して、2人からのハグ。いきなりされるもんだから、びっくりしてポロポロ落ちるのがゆっくりと落ち着いていく。そんな私をみて、2人は笑いながら教えてくれた。
「心が轟を好きなことなんて、分かってたよ。いつ自覚するかウチらはずーーっと待ってたし?」
「それに心さんは普段、周りに気を遣ってご自身の本心をあまりお出しになりませんから…だから、そうやってぶつけて下さって嬉しいんです」
「そうそう。あんたなら無かったことにしかねないからさ」
落ち着いていたものが、今度は嬉しさから零れていく。まさか、そんなことを言われる日が来るなんて思わなかった。ほんとにこの親友達には叶わない。
2人は笑いながら私が泣き止むまで待っていてくれて、それにもまた泣きそうになったけどそこは我慢した。
「…2人とも、ありがとう」
「いいのいいの、その代わりたっっっぷりお話、聞かせてもらおうかね〜」
「ええ!心さんは轟さんのどんな所を好きになったのですの!?」
「ど、どんなところ…」
興味津々!!っと、2人がキラキラした目で見つめてくる。うっ、眩しい。その可愛さにハートを撃ち抜かれながら改めて考える。…焦凍くんの好きなとこ。
優しいとこはそうだし、見た目もそうかもしれないけど中身もかっこいいし、あと、いつも救けて欲しい時に救けてくれて、欲しい言葉をくれて。
ああ、でも1番は安心させてくれるところかもしれない。自分の事情を知ってるってのもあるけど、焦凍くんの前なら色々気が抜けちゃうとこもあって……まって、私どんだけ焦凍くんのこと好きなんだ。ボンッと思考がショートする。
「だ、大丈夫ですか?お顔が真っ赤ですよ!?」
「う…百言わないで…」
「ヤオモモー大丈夫よー考えすぎてフリーズしてるだけだから。ね?」
「響香の意地悪…」
いじけてみせると、ごめんってと言いながらナゲットを差し出されたので許す。顔の熱が覚めない。ほんとこれ恥ずかしい。
「それで、心は自覚したとこでどうすんの?」
「どうするって…」
「付き合いたいなら告白するとか、アピールするとか」
響香の言葉に、考える。
確かに好きだとは自覚した。そりゃあ付き合えたら、とか想像しなくもないけど私の中でも彼の中でも、今の最優先はなりたい最高のヒーローになること。その為に強くなること。
だとしたら、私はどうすんのと言われたら
「どうもしない…かな。だって今はヒーローになりたくて、強くなることに精一杯で、それが最優先だから」
「そっか、心らしいね」
「ええ。私達は応援してますわ」
「ありがとう。…でも、ね」
「ん?」
言葉をきった私に、2人は首を傾げる。
「はじめて…なんだ。人を好きになったの。だからさ、大事にしていきたいな、とは、思います。……やばいこれ超恥ずかしい」
いたたまれなくなって顔を隠す。ダメだ、今の私はこれでいっぱいいっぱい。仮にいつか告白する日が来たとしても出来る気がしない。心臓がめちゃくちゃ痛い。
「…やばい心が超可愛い轟ずるい」
「…ええ、こう、守りたくなります」
「やめてえぇぇさらに恥ずかしくなる…」
頭に軽い重みを感じて、顔を隠した両手の指の隙間からチラリと覗くと2人が真顔でそんなことを言ってるもんだからもうダメだ。ほんとに恥ずかしい。
ジュースで顔を冷やしたり、ちょっと個性使って手で冷やしたりしてみるけど顔の熱はしばらく引きそうにない。
*
「ごめんね、なんか沢山話聞いてもらっちゃった」
「いいって。楽しかったもん」
「またぜひ行きましょう」
いつの間にか日も随分傾いてきて、これは家に着く頃には完全に日が落ちているかもしれないなと思いながら店を出て歩く。
他愛もない話をしながら、駅まで歩く。百はそこでお迎えが来るみたいだし、響香とは方向が違うからそこでお別れ。寂しいから、いつもより少しだけゆっくり歩くけどあっという間に駅に着いてしまった。
「じゃあね」
「ええ、また明日!」
「またね!2人とも今日は本当にありがとう。大好きだよ!」
別れる寸前2人を引き止める。普段から好きだの可愛いだの騒いでるけど、こう、改めて伝えるとなるとなんだか妙に緊張して、声がいつもより大きくなった。
2人は一瞬、顔を見合わせたと思ったら飛びついてくる。
「ウチも!好きだよ!」
「わ、わたくしもですわ!」
道行く人に見られるけどなんにも気にならない。ぎゅっと2人にまわした腕に力を込めた。
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