気張ってこーぜ!期末テスト!
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ストン、と消太さんが壁を越えて降りてくる音がして慌てて顔を上げる。仕掛けてくる、構えなきゃ、と混乱したままの頭で本能的に氷を出そうとする。けど、"消太さんに向けて打とうとするやつは"やっぱり出ない。
なんで、なんで、とパニくる頭に終止符を打ったのは「心」といつもより更に静かに名前を呼ぶ消太さんの声だった。
「消太、さん」
「大丈夫だ」
「……」
「あの時のは事故だ」
「でもっ!」
声を上げた私に被せるように、優しく、それでいてまっすぐとした大好きな声で告げる。
「いつまでもそんなとこで囚われてくれるな。超えてくれなきゃ困るんだよ……なるんだろ、ヒーロー」
ぐるぐるグダグダ考えてた頭の中のモヤがぱあっと晴れていく。ちくしょう、めちゃくちゃかっこいい。
……ああ、そうだよ。私はこの人を超えるんだ。憧れで、尊敬してて、だからこそ越えて、守ってきてもらった分守れるぐらい強くなる。
この人がいつかお父さん達に自慢しに行ける、そんなヒーローになりたいんだよ。
らしくもなく今まで、何も言わなかった。それはきっとあの時、私にトラウマを"作ってしまった"という罪悪感からだ。消太さんはどこまでも優しいから。
体育祭できっかけは貰った。今の私の最大もよくわかってる。自分の力を信じれるようになってきた。
でも、本当に自分の力にする為には今ここで乗り越えなきゃいけない。
目の前に応えたい人がいる。待っててくれてる人もいる。
もう手の震えは収まってた。
「…いきます」
「来い」
もう一度距離を詰めてきた消太さんから、今度は距離をとりつつ氷の礫を当てていく。時折鎌のような水をぶつけていき、消太さんの個性を発動させる。
狙い通り使ってくれた。…これで消太さんが個性を使えるのはあと1回だ。
そこからは、さらにひたすら避けながら、次に個性が使える瞬きの瞬間を狙う。水が手から滴り落ちた…今だ。
「いけぇっ!」
まばたきの瞬間を狙って体育祭と同じように、流氷を作り出す。民家の外壁がいい感じに方向づけをしてくれてスピードをつけて消太さんに押し迫る。
でも多分消太さんなら間違いなく
「最大出力か…残念ながら、体育祭でみたな」
「ですよね!わかって、ます!」
越えてくる。
そう思ってたから、飛んでよける消太さんの顔面に個性をもう一度発動される前に水球をぶつける。あと1回を使うためには、これを避けて上から来ると思ってた。
人間いきなりぶつけられたら目を一瞬でも瞑るもんだ。例えそれが水だと分かっていても、必ず。
その瞬間を稼げた。下から突き上げるような氷で、消太さんの体ごと包み込む。そして、確保用のカフスをかけた。
「確保、です」
『翠蒼、試験達成』
演習場にアナウンスが響いたのを聞いて、消太さんの周りの氷を水に変えていく。
「消太さん、ありがとう」
「何の事だ」
「色々!」
「……さっさと戻るぞ」
「はーい!相澤先生!」
「はい、は伸ばすな」
*
バスに乗って、再び校舎へと戻って色々治療を受ける。百も焦凍くんも大きな怪我はなかったけど、私に関してはもろに蹴りが入ったり捕縛布が顔に掠ったことで切り傷盛りだくさんだったので、さすがに保健室に向かって治癒をしてもらった。甘いような容赦がないような消太さんだ。
とはいえめっちゃ重症!という訳じゃないのですぐに保健室をでて、校舎内の待機場所に向かおうとする。保健室に爆豪くんと緑谷くんが寝てた時はビビったけど、どうやら無事に2人はクリアしたらしい。良かった良かった。
「失礼しましたー…おわ!?」
「お。怪我、大丈夫か」
出てすぐのドアのところで、焦凍くんに遭遇。なんかデジャブ…と思ったけど、あれだ。体育祭の時みたいだ、と1人で勝手に懐かしく思う。
「うん。大したこと無かったし平気だよ。焦凍くん、やっぱりどっか怪我してたの?」
「いや、心が帰りバスの中で寒そうだったから」
だから待ってた、と言われトクンと心臓が高い音を立てる。
「…あっためてくれる為?」
「ああ。左側来い、まだ顔ちょっと青いぞ」
「っ!」
そっと頬に触れる優しい手に、さらにその音は激しくなっていやでも自覚するしかない。
さっき蓋したはずなんだけどな、おかしいな。でも、これを抑えられる方法なんてやっぱり分かんない。はじめてだもん。
「心?大丈夫か?まださみぃか?」
「…ううん。大丈夫だよ、ありがとう。焦凍くんは相変わらず優しいね」
「そうか?」
「そうだよ。控え室、戻ろう」
「ん」
もう、認めるしかない。
私、どうしようもなく、焦凍くんが好きだ。
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