学べ!職場体験
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一夜明けて、私たち4人は病院にいた。といっても私は3人と同じ部屋というわけにはさすがにいかず一人部屋で寂しく過ごしてる。先程終わったばかりの診察の結果では、ナイフが刺さったので縫ってはいるが、幸い後遺症も残らないそうだ。跡も残らないらしいのでほっとした。
「あ、あの。ちょっと病室でても大丈夫ですか?」
「ええ。翠蒼さんは別に下肢を怪我してるわけじゃないし大丈夫よ。お友達のところ?」
「はい…1人はちょっと寂しいので」
担当の看護師さんにも無事に許可を貰えたので焦凍くん達の部屋を訪れると快く迎えてくれた。「どうしたんだい?」と飯田くんに聞かれたがさすがに寂しい、って言うのは恥ずかしかったので「ちょっと暇でさ〜」と誤魔化しておいた。
急に行ったのにありがたい。焦凍くんがベッド横のお見舞い用の椅子を差し出してくれたので座らせてもらう。
「緑谷くん達昨日寝れた?」
「ううん…僕たちも寝れてない。冷静に考えると凄いことしちゃったよね…」
「そうだな」
「あんな最後見せられたら生きてるのが奇跡だって思っちゃうね…」
緑谷くんの言葉に深く頷く。少なくとも緑谷くん、焦凍くん、私たち3人は"生かされた"。このケガで済んだのはほんとに奇跡だと思う。
「あんだけ殺気向けられて尚立ち向かったお前はすげぇよ。救けに来たつもりが逆に助けられた。わりィな」
「いや…違うさ、俺は…」
何か言いかけた飯田くんを丁度遮って、ドアが開きグラントリノさんとマニュアルさん…が入ってきてと、見えないぐらい大きな男の人?がドアの前に立っている。
グラントリノさんが「すごい…グチグチ言いたい…がその前に来客だぜ」と言うので立ち上がり緑谷くんのベッドの近くまで行く。
「保須警察署署長の面構犬嗣さんだ」
「面構!!…署、署長!?」
「掛けたままで結構だワン」
署長がなんで、こんなとこまでわざわざ…てかワンって今言ったよね…ほんとに犬…
「君達がヒーロー殺しを仕留めた雄英生徒だワンね。ヒーロー殺しだが…火傷に骨折となかなかの重傷で現在治療中だワン」
署長の話に全員ハッとする。あの時は無我夢中だったけど、"個性"の使用、そしてヒーローの職業はルールの上で成り立ってきたもの。確かに相手はヒーロー殺しで、飯田くん、ネイティブさんは殺されそうになってた。
でもそれを助けたくて"個性"を使うことは完璧に私たちの私利私欲でしかない。ただの我儘な子供がすることだ。
「資格未取得者が保護管理者の指示なく“個性”で危害を加えたこと、たとえ相手がヒーロー殺しであろうともこれは立派な規則違反だワン。
君たち4名及びプロヒーローエンデヴァー、マニュアル、グラントリノ、この六名には厳正な処分が下されなければならない」
「ちょっと待ってくださいよ」
署長さんの言う通りだ。資格を持ってない私たちがしたことはヒーロー殺しといえど、人を傷つけたことには変わりない。いかなる処分も受けるべきだ、と拳を握ったところで焦凍くんが動くのが見える。え、ちょっと待って。絶対なにかする。
「飯田が動いてなきゃネイティヴさんが殺されてた。緑谷が来なけりゃ二人は殺されていた。誰もヒーロー殺しの出現に気付いてなかったんですよ。
規則守って見殺しにするべきだったって!?」
「ちょちょちょ…!」
「焦凍くんっ、ストップ…!」
「結果オーライであれば規則などウヤムヤでいいと?」
「…人をっ、助けるのがヒーローの仕事だろ」
慌てて緑谷くんと共に焦凍くんの腕をつかんで慌てて止めるけど止まらない。気持ちは分からんでもないけど今は止まってくれ頼むから!
「だから、君達は“卵”だ…全く良い教育をしてるワンね、雄英も…エンデヴァーも…」
「この犬…!」
「やめたまえ!もっともな話だ!」
署長さんの言葉にさすがに私もちょっとムッとした。雄英…消太さん達のせいにはされたくない。これは私たちの独断で勝手な行動だ。とはいえ流石に犬呼ばわりはやりすぎだ。飯田くんが引き止め、そしてグラントリノさんが「まあ最後まで聞け」と制してくれた。
「以上が警察としての意見…で処分云々はあくまで公表すればの話だワン」
「えっ…」
静かになった病室で、署長さんが話を続ける。公表すれば私たちは称えられるが処罰は免れない。だが公表せず、火傷のあともあることからエンデヴァーさんの功績にすれば違反は握りつぶせる、ということ。その代わり私達のしたことは一部の限られた人にしか知られない。
汚い話、と署長さんは言うが私たちを守ってくれる為に考えてくれた策なんだろう。そもそも私達は褒められたくて戦ったわけじゃない。そんなの答えはもう決まってるものだ。
「この違反はここで握りつぶせるんだワン。だが、君たちの英断と功績も誰にも知られることはない。どっちがいい!?一人の人間としては…前途ある若者の“偉大なる過ち”にケチをつけたくないんだワン」
すごくいい人だ。迷惑をかけてしまって申し訳ない。いや、署長さんだけじゃない。エンデヴァーさんなど私たちをみていたプロヒーロー達も監督不行の責任をどのみち取らなきゃいけないそうだ。学校側にも連絡は行く。たくさんの人に迷惑をかけた。4人揃って頭を下げる。
「よろしくお願いします」
「大人のズルで君たちが受けていたであろう称賛の声はなくなってしまうが、せめてともに平和を守る人間として…ありがとう!」
署長さんはそう言って頭を下げる。お礼を言わなければいけないのはこっちだ。「ありがとうございます」ともう一度頭を下げるとようやく署長さんも笑ってくれた。
「初めからそう言ってくださいよ…おっ」
「そんな事言わない。早とちりした焦凍くんが悪い」
罰が悪そうに目線をそらす焦凍くんを軽く小突く。そして緑谷くんと目を合わせ、笑った。
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