学べ!職場体験
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拘束したヒーロー殺しをズルズル引きずり歩く焦凍くんの隣を歩く。プロヒーロー、改めてネイティブさんが「プロの俺が完全に足手まといだった…」というが1体1でヒーロー殺しの個性は強すぎるので仕方ないと思う。緑谷くんも同じようなことを言っていた。
「多分焦って緑谷の復活時間が頭から抜けてたんじゃねぇかな。ラスト、飯田のレシプロはともかく緑谷の動きに対応がなかった」
「焦凍くんが最初に"プロも直に現着する"って言ったのが効いたのかもね。個性的にも血液型が決め手だから、人数が増えれば増えるほど不利ではあるし」
とはいえ私たちもギリギリだった。むしろこの程度の怪我で済んで良かった…ホット息を吐くと、向かいから走ってきたご老人が、緑谷くんの顔にキックを決める。…え、何が起こった。
「グラントリノ!」
「座ってろっつったろ!!」
「グラントリノ!!」
「まァ…よう分らんがとりあえず無事ならよかった」
「グラントリノ……」
状況的に緑谷くんの職場体験の受け入れ先っぽい…?緑谷くんグラントリノとしか言ってないけど伝わってるのか彼の意図は。なんて見つめていれば今度は私に圧迫感。
「ココロちゃんんんんんん大丈夫!?怪我してない!!?…ってしてるじゃない!!!」
「うぐっ、あの、ス、スノーさん、」
「…スノーさん。心が窒息死しそうなんで離してもらっても良いですか」
「あら、ごめんなさい。……でも本当に無事でよかったわ。飛び出したって聞いた時は心臓止まるかと思っちゃった」
「すみません…」
その正体は、ヒーロー殺し!?と慌てるプロヒーロー達から飛び出して一目散に私のところにきたスノーさん。焦凍くんのおかげでなんとか窒息死は免れた。ひととおり騒いでから心底安心した、というふうに息を吐く彼女に2人揃って頭を下げる。申し訳ないことしちゃったな。
エンデヴァーさんはまだ向こうの方で応戦してるらしく、ここには手の空いたプロヒーロー達が来てくれたらしい。慌ただしく処理に掛かろうとする彼らを見つめていると「3人とも…」と飯田くんが呼びかけ、振り返ると頭を下げていた。
「僕のせいで傷を負わせた。本当に済まなかった…。何も…見えなく、なってしまっていた…!」
…謝らないで、とは言ったけどそう簡単に気が済むものじゃないか。
でも人は誰だって間違えるもの。私も、飯田くんも、気づいたんならそれでいい。そこからどうするかが大事なんだ。頭をあげない彼の肩を軽く叩いて顔を上げてもらう。
「君は、このまま折れる人じゃないでしょ。ここからどうするか考えれる人だって信じてるよ」
「…僕もごめんね、君があそこまで思い詰めてたのに全然見えてなかったんだ。友達なのに…」
「しっかりしてくれよ、委員長だろ」
私に続いて緑谷くん、焦凍くんもそれぞれらしい言葉をかける。飯田くんは「うん…」と弱々しい声ながらも涙をふいて答えた。
そんな彼に笑いかけ、不器用ながらも答えてくれた刹那のこと。グラントリノさんが「伏せろ!!!」と叫び、反射的にしゃがむ。見上げれば、USJの時の脳無。鳥のような形のそれは、緑谷くんを連れて高く飛ぶ。
助けなきゃ、でもどうやって。そう迷った数秒の間に捕らえていた奴が動き出していた。それに気づいた時には、奴…ヒーロー殺しが不自然に動きをとめた脳無と共に落ちてくる緑谷くんを抱え着地していた。
「贋者が蔓延るこの社会も、徒に“力”を振りまく犯罪者も、粛清対象だ。全ては正しき社会の為に…」
低く、地を這う声は脳内にガンガンと響く。ヒーロー殺しの強い信念に気圧され誰も動けない。だんだんと頭がぼーっとしてきた所で、エンデヴァーさんの声で我に返る。
「何故一カタマリでつっ立っている!?そっちに一人逃げたハズだが!?」
「エンデヴァーさん!」
「あちらはもう!?」
「多少手荒になってしまったがな!して…あの男はまさかの…」
気づいたエンデヴァーさんが駆け寄ろうとするが慌ててグラントリノさんが止める。その瞬間向けられたヒーロー殺しの目に、誰1人動けなくなった。個性でも何も無い、奴の信念によって。
「正さねば…誰かが血に染まらねば……!“英雄”を取り戻さねば!!来い、来てみろ贋者ども。俺を殺していいのは、オールマイトだけだ!」
今までに感じたことの無い恐怖、威圧。へたり込みそうになる足を立たせておくだけで精一杯。誰も動けず、ただ1人ヒーロー殺しだけが私たちに向かってきた。そして急にそれは足を止める。
気を失ってる。それに気づいて、止まっていた息を吐きその場に崩れ落ちる。焦凍くんも飯田くんも、プロヒーローの人たちも同じように放心状態だった。
あの時、誰1人個性なんて使われてなかった。なのにただ1人、ヒーロー殺しだけが私たちに向かっていた。
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