学べ!職場体験
namechange
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「おまえは私欲を優先させる贋物にしかならない!“英雄”を歪ませる社会のガンだ。誰かが正さねばならないんだ」
人の本質はそう変わらないと、飯田くんの決意を一蹴して語るヒーロー殺し。USJの私の行動を思い出す。いくら消太さんを助け出すためとはいえ、あれは完全に私欲だった。でもそれに気づかせてくれた人がいる。
飯田くんだって同じだ。人は存外、良い方向にも悪い方向にも変わりやすい、それを私はよく知ってる。
「時代錯誤の原理主義だ。飯田、人殺しの理屈に耳貸すな」
「いや、言う通りさ。僕にヒーローを名乗る資格など…ない。それでも…折れるわけにはいかない…
俺が折れれば、インゲニウムは死んでしまう」
「論外」
そう吐き捨て、向かってくるヒーロー殺し。……明らかに様子が違う。慌てているのか、何がなんでもプロヒーローと飯田くんを殺そうと向かってくる。それを気づいてるプロヒーローは「逃げた方がいい!」と言うけどそんな余裕はない。動けない3人を連れて逃げる暇があれば刺されてる。
「轟くん、翠蒼くん、温度の調節は可能なのか!!?」
「左はまだ慣れねぇ、何でだ!!?」
「私も、ある程度は!」
「俺の脚を凍らせてくれ!排気筒は塞がずな!!」
なんで、と数秒考え動きが止まる。その間に攻撃を繰り出す焦凍くんの上からナイフが降ってくるのを、思いっきり彼のからだを突き飛ばして前に出た。
刹那、自分の右肩に刺さり飛び散る血。ヒーロー殺しまで届いたようで、体がズンっと重くなる。体が完全に固まる寸前に、自分の周りに氷壁を出した。これで最低限は防げるはずだ。自分の体も若干凍らせてしまったけど焦凍くんがいるなら溶かしてくれるだろう。
「おまえ、なんでっ」
「私はいい!飯田くんを!」
私のすぐあとに、腕を刺されそのまま倒れ込む飯田くん、くそ、こんな近くなのに何も出来ない。
「飯…」
「いいから早く!!!」
「焦凍くん!うえ!!!」
上から迫り来るヒーロー殺しの、さらに上から氷壁を越えて高く高く飛ぶ緑谷くん。そして飯田くんが壁を蹴って、そこに一瞬で追いつく。
ボロボロの2人の拳が、足が、届く。
「お前を倒そう!今度は…犯罪者として!」
「たたみかけろ!!」
「ヒーローとして!!」
「いけ!!!」
畳み掛けるように、焦凍くんの炎がヒーロー殺しに迫った。炎からでてきたヒーロー殺しはやけどを負っていて、意識がなくなったせいか。体に自由が戻った感覚がする。緊張がやっと解けて、息を吐く。時間にしてきっと5分10分の短い戦いだけど、随分長かったように感じられる。
みんな拘束したり色々やってるんだけど、立てない。溶かそう、と手に力を入れた時呼ばれた自分の名前。
「心!!」
「ごめん、溶かしてくれてありがと…」
私が溶かすよりも早く、気づいた焦凍くんが溶かしてくれた。そしてナイフが刺さりっぱなしの右肩を気遣って右から持ち上げてくれる。
動けるようになった腕で刺さっていたナイフを抜くと、隣の焦凍くんが「まじか…」と引いていた。でもこうしなきゃ止血が出来ないのでしょうがない。
「緑谷くん!飯田くん!血出てるよね、仮みたいなものだけど止めるよ」
「ありがとう!翠蒼さんは…」
「大丈夫。ほら、足出して」
足の方を見ると傷は深くないけど出血しまくってる。軽く触れて止めて、飯田くんの方へ行く。私以上に深く刺さっていたのか、出血が酷い。
「翠蒼くん、すま、」
「飯田くん。謝らないで。そういう時は、ありがとうって言って欲しいな」
「…ありがとう」
「どういたしまして!」
泣きそうになりながらも笑う飯田くんに、私も少しだけ泣きそうになった。
.