学べ!職場体験
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いよいよ職場体験当日。みんな集まって消太さんの話を聞く。周りの人からは雄英生だ〜とかの声も聞こえる。
「コスチューム持ったな。本来なら公共の場じゃ着用厳禁の身だ。落としたりするなよ」
「はーい!!」
「伸ばすな、“はい”だ芦戸。くれぐれも失礼のないように!じゃあ行け」
今日も元気な三奈。この元気さともしばらくお別れだ。それぞれの方面の路線に向かう中、一瞬だけ消太さんと目が合って、手をちっさく降っておく。
視界の端で、飯田くんに緑谷くんとお茶子が声をかけるのを見た。彼の向かっている方面は保須市。表情をみてもなんだか胸がざわつく。
「気になるな」
「…うん。まあ、出来ることは今はないから願うだけかな」
「そうだな」
近くにいた轟くんが話しかけてくる。返事をして歩き出しても、隣にいる彼。んん?もしや…と思いながら取り敢えず歩く。改札を通過して、新幹線に乗って、それでも隣の彼。
さすがにお互いまさか、と顔を見合わせる。
「職場体験先…」
「あいつのとこだ。お前も…」
「エンデヴァーさんのとこですね」
轟くんにもエンデヴァーさんのとこから指名が来てるとは思ってはいたけどまさか彼がそこを選ぶとは思ってなかったからびっくりだ。
「そういやあいつがなんか言ってたな… 心がどうのこうの……おいちょっとまて、なんであいつ翠蒼の名前呼んでたんだ」
どんだけこの子は反抗期真っ只中なんだ、と苦笑いしながら答える。
絶対会話思い出してたよね、まあ忘れてないだけマシなのかもしれない。覚えてるの私の名前の下りのことだけっぽいのは、うん。ノーコメントだ。
「あーたぶん、あれだ。昔お世話になったこともあるみたいだから、名前は知ってるだろうし。あと苗字だとお母さんと被るからじゃない?私の両親と知り合いだし」
さすがに引き取る云々の下りは言えなかったから、適当に誤魔化した。轟くんは私の両親が同級生なのを知らなかったらしく、驚いていた。「聞いてない?」と尋ねると「あいつとの会話は覚えてねぇ」と言われ苦笑いするしかない。
「心」
「お、どうしたどうした」
「俺も名前で呼ぶ」
少しだけ顔を顰めた後に、呼ばれた名前。こんなとこで負けず嫌いを発揮してくる彼に笑うが、名前で呼んでもらえるのは普通に嬉しい。
少し照れるけど、どうせ私のヒーロー名だし、いつかは呼ばれるからいいだろう。それならばと私も言ってみる。
「焦凍、ショート?しょーとくん?……いや、焦凍くん!」
「お」
「私も名前で呼んでもいい?」
尋ねればこくり、と頷いてくれた。良かった。なんだかさらに仲良くなったみたいでウキウキしてきた。
話も少し落ち着いたところで気になってたことを聞いてみた。
「そういや、なんでエンデヴァーさんのとこ行こうと思ったか聞いてもいい?」
「ああ。この間、お母さんのとこ行った時な」
「その説はお世話になりました…」
「いや、それはいい。…その時お母さん、驚くほど笑って赦してくれたよ」
静かに紡がれる轟くん…じゃない、焦凍くんの話。相槌を打ちながら、そっと横顔を見つめる。過去の話をする時の焦凍くんはいつも硬い顔だったけど、それとは比べ物にならないぐらい穏やかな表情。良かったなあ、と心から思う。
「赦したわけじゃないし、赦すつもりもねぇけど……でも、ちゃんと見なきゃ、とは思った」
「うん」
「… 心は?」
「私?…私はちゃんとお父さん達のこと知りたいって思ったから。そろそろ向き合わなきゃって思って」
もちろん消太さんに言ったように、No.2の元だから学べることは多いってのもある。けどそれ以上に、お父さん達のことは大きかった。
消太さんが話してくれないから、で終わらせるんじゃない。オールマイトさんに言われたように、過去も未来も大事にするんならそこからだって思ったから。
情報規制だなんて普通じゃないこと私でもわかる。けど何があろうと、私の両親であることは変わらない。
そう言うと、焦凍くんは無言で頭をぐしゃぐしゃっと撫でてきた。なんだか消太さんみたいで、強引だけど優しさが伝わってきたので頬が自然と緩む。
「とはいえ、No.2のとこって緊張するから焦凍くんが一緒でよかった」
「…別にそんなに緊張しなくてもいいだろ。あいつのとこだ」
「それは焦凍くんだからかな」
この天然ボーイは…と苦笑い。そりゃあ君はお父さんのとこだから多少の別の意味の緊張はあっても、私が感じてる緊張はしないでしょうよ。
「そうか?…まあ、でもあいつのとこでも心が一緒なら、ちょっと楽しみだな」
「…うん、だいぶ慣れてきたぞ」
「なにがだ?」
「なんでもない」
そろそろ天然爆弾にも慣れてきた、落ち着かないことには変わりないけど。めっちゃ心臓に悪い。不思議そうにする投下した本人には曖昧に笑ってみせる。
そうして穏やかに時間は進み、あっという間にエンデヴァー事務所へと到着した。
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