体育祭:Rising
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眩しい太陽の光を受けて目が覚める。
スマホを開けば時刻は9時、寝過ごした。
慌てた飛び起きてリビングに行くと、テーブルには少し歪な形のおにぎりと書き置き。昨日ギプスが取れたおかげで久々の消太さんの字だ。
『今日はゆっくり休め。帰りはまた連絡する』と先生なだけあって、結構整った字から優しさを感じる。
でもやっぱり申し訳ないな。消太さんは普通に出勤なのにお弁当も朝ごはんも用意できてない、こうなったら晩ご飯はご馳走にしよう。
ひとまずは消太さんの手作りおにぎり、と適当にあったインスタントの味噌汁を食べる。わ、おにぎりツナマヨだ。さすが消太さん、私の好みバッチリ把握してる。
ゆっくり休め、とは言われたものの昨日の興奮からか中々落ち着かない。家の掃除をしたりしてみるものの、ソワソワする。
うーん…そうだ、買い物に行こう。
*
「アホだ私…」
我が家から少し離れた激安業務スーパーで、あれもこれもと調子に乗った結果、両手にずっしりとした重み。同年代の一般的な女の子よりは鍛えてるんだけどな。それでもくっそ重い。やらかしたな私。
まあトレーニングだ〜なんて言って自転車で来なかったのまじで後悔した。家まで元々遠いけどさらに遠い。あと天気がいいな〜とかウキウキしてたけど、今はそれすら憎い。暑い。日差しが見事に突き刺さる。
「…い、おい。翠蒼」
「うわっ!轟くん!?」
「大丈夫か」
ほんと周りの景色を一切見ることなく、ただ無心で運んでいたから肩を叩かれるまで彼の存在に気づかなかった。まさかこんなとこで会うなんてびっくりした。
「ちょっと買いすぎちゃって。轟くんはもしかして…」
「ああ。お母さんに会ってきた」
昨日よりもすっきりして、あと安心したような、嬉しそうな、そんな顔にほっとする。上手くいったんだな。
そうなのか、と返事しようとしたところでスマホの着信音。ポケットの振動からわたしのだとすぐわかった。ごめん、ちょっと出ていい?と聞くとおう、荷物もっとくぞ、と言われありがたく甘える。
スマホを取り出すと、画面に表示された名前は消太さん。何かあったのか、と少し不安に。
「もしもし、消太さん?」
『悪い、今日は遅くなりそうだ。だから晩御飯もいい』
「あ、分かりました」
『じゃあな。また帰る時に連絡はする』
プチッと着られた電話。後ろの方でもガヤガヤしてたしよほど忙しいのだろう。それでも電話してくれたってことは恐らく今日はほぼ帰れないということ。朝から1度も顔を合わせてないしせめてってことかもしれない。
「まじか…ああ、ごめんね。轟くん、荷物もたせちゃって」
「いや、どうかしたのか。相澤先生」
「あー…なんか、仕事で帰るの遅くなるからご飯いいって」
「そうか」
頷いて私の手はスルーして歩き始める轟くん。…いや、歩き始める!?
「ちょちょちょ、轟くん!荷物!!」
「これ1人で持つ量じゃねぇだろ、家まで持ってく」
「え」
慌てて追いかけて、袋に手をかけて引っ張るんだけどめっちゃ離してくれない。力強いなおい。せめてひとつ持たせて欲しいのに。しばらく引っ張りあってたんだけど、通りかかった人に「あら〜仲良いわね〜」なんて言われてしまって手を離してしまった。
それを肯定と受け取ったのか、轟くんは「家こっちであってるか?」と歩き始めてしまう。何がなんでも運ぶ気だ。…しょうがないこうなったら素直に甘えよう。
「ごめんね、ありがとう」
「いや…翠蒼だ、って思ったらふらふらしててびっくりした」
「うっ、情けない…」
すみません、私はだいぶ重かったです。もっと鍛えなきゃなあと考える。男女の差があるとはいえやっぱり同じヒーローを志してるし、ちょっと情けない。
「別に、情けなくはないだろ。男女差で筋肉量に違いがあるのは当たり前だし、無理に筋力つけても良いとこ無くなるだけだろ」
「…良いとこ?」
「翠蒼の場合はスピードとかバネだな」
少しばかり落ち込んでいたのに、轟くんの言葉で簡単に浮上してしまう。そんなこと言われると思わなかったから驚いた。
こう、轟くんは別にそんなこと考えてないんだろうけど、欲しい言葉を欲しい時にくれるから、なんかずるいって思ってしまう。けどそれ以上に嬉しい。なんか複雑な気持ち、ぜんっぜん不快ではないけど。
「ありがとね」
「いや…俺の方こそ、ありがとな」
「え?私何もしてないけど」
お礼を言われるようなことなんにもしてないぞ?と思うとまたまた予想外の爆弾。今度から轟くんのことは爆弾少年と呼んでやろうかほんと。
「…お母さんのとこ行った時、結構緊張して。でもお前の言葉思い出して、それが力になった。だから……翠蒼?どうした?」
「いや、なんでもないよ…」
さらには整った顔で、フリーズした私の顔を覗き込んでくるんだから溜まったものじゃない。天然ボーイめ……!
でもまあ、力になれたらとは思ってたからそれは素直に嬉しい、嬉しいんだけどね。
赤くなった顔をいかに家に着くまでに早く冷ますか、緊急ミッションが発生しました。
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