体育祭:Rising
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体の痛みを感じて起き上がる。体というか、首がめっさ痛い。ソファでいつの間にか寝てたみたいだ。
慣れ親しんだ我が家は薄暗い。まだ消太さんは帰っていないのかと思いきやお腹にかけられたブランケット。
「起きたか」
頭上から降ってきた声にゆっくり体起こす。時刻を見れば7時過ぎ、随分寝てしまった。「おかえりなさい」と声をかけると「ん、着替えてこい。シワになるぞ」と言われた。
無愛想な返事だけど、お腹のブランケット、そして帰っていたのに付けられてない電気、それだけで優しさが伝わる。
自室に戻って少しシワがついてしまったスカートを伸ばして干す。そしてジャージに着替えてリビングへと再び戻ると消太さんがコーヒーを飲みながら、ぽんぽんと自身の座るソファの横を叩いた。
「…消太さん手取れてる!!」
「手は取れてない」
「もう大丈夫なんですか?てか顔も取れてた…」
「だから取れてるのは包帯だ。婆さんの処置が大袈裟だったんだよ」
状態は良好なのは聞いていたし、個性にも多少は影響が出るけれど大きなものじゃないとは聞いていたけどいざ外れたのをちゃんと見ると、安心感が大違いだ。私的には消太さんが、イレイザーヘッドで、相澤先生でいられることが1番大事なんだけどね。
わーなんだか久しぶりにちゃんと顔を見た、嬉しいなあなんて思いながら消太さんの横にちょこん、と腰かける。と、いきなり頭に手を載せられた。そしてそのままそれが髪をかきみだす。
「よく頑張ったな」
「!」
「おつかれさん」
私からゆすることはあっても消太さんは滅多にスキンシップをしてこない。ほんと特別な時しか甘やかしてくれないけど、今日は例外らしい。にへら、と我ながら気の抜けた笑みを浮かべてるがそれでも、頭の上の手は離されることない。心地がいい。
……今日ぐらい頑張ったんだし、1つぐらいお願いをしてもいいかなと言ってみる。
「消太さん、ぎゅっとして下さい」
はーっと、ため息が帰ってきたからやっぱりダメか。と思いきやぐっと力強く引き寄せられてそのまま鍛えられた胸にダイブ。怪我明けの人に勢いよくぶつかった焦りとか、まさかの聞いてもらえたことに驚きとか、よくわかんなくなって、じわじわと何故か涙が出てきた。
「…爆豪との試合が、今のお前の全力か」
「多分。何も考えずに出したら、ああなりました」
「ったく、何泣いてんだ」
ゆっくりと私の体を話してから、また頭に手が乗る。勝手に溢れてきて止まらない涙を拭いながらため息をつかれた。
「ヒーローになるんなら、あれをコントロール出来なきゃダメだぞ」
「……うん」
「強くなるんだろ?」
消太さんの言葉に何度も頷く。この人の隣に立ちたい、これまで守ってもらった分、私もこの人を守れるくらい強くなりたい。消太さんが自慢出来るぐらいのヒーローになろう、それが私の誓いだ。
「ご飯、作ってないや…」
「別にいい。適当にコンビニで買ってきたからとっとと食って今日は休め」
泣いたせいもあって酷く疲れた。ぽやぽやしながらご飯を食べてお風呂に入って、自室のベットになだれ込む。ちらりと目に付いたサイドの机に置いてあった今日のメダル。手に取って、部屋の電気に掲げてみる。
鈍く輝く銅メダル、目をつぶれば今日までの出来事。
ヒーローに憧れたのは、お母さん達の存在。
でも本気で目指してきたのは消太さんの存在があったから。
雄英に入学して同じ夢でも、それにかける想いは人それぞれで。色んなものに沢山触れてきた。
嫌ってほどの実力差も思い知らされた。
途方もない悪意も思い知った。
たくさんたくさん色んなものを今日まで見てきた、これからもたくさん見るだろう。
でもここが私の1つの原点、今日の誓いを胸に強く、なりたいヒーローになろう。
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