体育祭:Rising
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スタートと同時に、瀬呂くんの時の規模じゃないにしろ巨大な氷壁を作り出したのは轟くん。初っ端から放たれたそれを爆豪くんは正面突破で壊してきた。
予測していたのか轟くんは次の攻撃を繰り出そうとするけど、爆豪くんはそれすらも避けて左側を掴んでぶん投げた。左をつかんだのは氷結対策、凄い。身体能力だけでなく、判断力もあるなんて。
場外へ出そうになった轟くんは氷壁を素早く繰り出して回避する。爆豪くんに対してだけじゃないけど、いつにも増して攻撃が単調かつ大雑把。それは消太さんも指摘している。
『轟も動きはいいんだが、攻撃が単調だ。緑谷戦以降どこか調子が崩れてるなァ…』
またも左側を狙ってきた爆豪くん、でも今度は避けつつ掴んだ。今使えば間違いなく有効な攻撃になる、が轟くんは爆豪くんをほおり投げて距離を取っただけだった。
緑谷くんに良い意味でかけてきた思いをぶっ壊されて、そしてようやく進み始めた彼は今、爆豪くんを前にしたフィールドで、どんな景色が見えているのだろう。
どこか迷い続けている轟くんの様子に、とうとう爆豪くんがキレた。そしてぶつけられる言葉。
「勝つつもりもねぇなら俺の前に立つな!!!何でここに立っとんだクソが!!!」
ああ、痛いな。轟くんの想いも、直接戦ったからこそ爆豪くんの想いも、両方わかってるから痛い。
「負けるな!!!!頑張れ!!!」
隣の緑谷くんが立ち上がって叫んだ。聞こえているのか、轟くんの目が大きく見開かれて左側にある、炎をまとった。
握る手に力が入る。大丈夫だよ、轟くん。受け売りだとしても、君が言ってくれたんじゃないか。左も右も、自分の力なんだ。
約束でも親切心でもなんでもいい、溶かす為だけだとしても、自分の意思で私に左側を使ってくれた。それは造られた子でも、No.2ヒーローの息子としての意思じゃない。轟焦凍としての意志だ。それだけは覚えていて欲しかった。
「頑張れ」
爆豪くんの全力であろうアタック。それがぶつかる直前、灯されていた炎が消えたのが見えた。
……最後まで左を使えなかった、いや、使わなかったの方が正しいか。きっとまだ何かが彼の中であるんだろう。そう簡単には割り切れない。
土煙が晴れて、気絶していた轟くんに掴みかかる爆豪くん。そりゃそうだ。彼が望んでいたのはこんな1位じゃない、納得も出来ないだろう。ねむりさんが個性で眠らせて、ようやく決勝が終わる。
『以上ですべての競技が終了!!今年度雄英体育祭1年優勝は、A組爆豪勝己!!!』
なんとも言えない終わり方。だけど私がとやかく言える筋合いは何も無い。
そういえばリカバリーガールが表彰式があるから決勝が終わったら降りてこいと、救護室を出る直前に言っていたな。立ち上がって常闇くんはどこだと探せばすぐにいた。
「常闇くん!もう降りる?」
「ああ。でもこの分だと急がなくても良さそうだな」
「そうだね!」
のんびりと観客席から出る。なんだかこう、ほわほわと不思議な気分だ。途中ずっと気になっていた常闇くんの黒影と遊ばせてもらった。騎馬戦の時から思ってたけどほんとに別人格、めっちゃかわいい。撫でると喜んでくれた。
「疲れたねぇ、常闇くんも黒影もお疲れ様」
「オウヨ!」
「ああ、翠蒼もな」
「ありがと〜」
めっちゃ疲れた、けれどそれ以上に価値のあった体育祭。
……違うな、価値あるものにしていくためにはここからが本番。
まだまだスタートラインに立ったばかり。
今日を糧にして進んでいこう。
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