体育祭:Rising
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「おい、覚悟できとんか」
「もちろん。……全力で、勝ちに行くよ」
「はっ!できるもんならやってみろや!」
爆豪くんと向かい合う。今度はちゃんと答えることができて、彼も今度は目をそらすことはなかった。
『さあ!準決勝第2試合!轟の相手はさあどちらだあ!?
誰であろうと容赦なし!ガンガン攻めて攻めて攻めまくりの爆発ボーイ爆豪!VS冷静な試合展開で勝ち進んできたクールガール翠蒼!決勝進出をかけて、いざ!!!レディーファイ!』
「しっねぇえええ!」
「そう言われて死ぬバカいる!?」
ヌルッとしたスタート。だがびゅんっ!と飛んできた爆豪くん。彼の目の前に瞬時に氷の柱をだす。しかしそれは簡単に崩され、腕を掴まれた。
掴まれた腕を凍らせて爆破されるのを防いだが、お腹に1発蹴りを入れられる。少し動きが止まってしまったすきに爆破されそうになったのを避けて、水流をぶつけるが距離を取れただけだった。
その隙に、飯田くんの時のようにフィールドを囲むように氷壁を作り出す。爆豪くんの爆破の勢いで場外に放り出されると困る。
「ちょこまか小細工してんじゃねぇよ!!ぶつかって来いや!真正面から!!」
「うっさいなぁ!もう!」
自分の目の前に作り出した氷壁を爆破して、そここら現れた爆豪くんの下から突き刺すような氷錐を出す。けれど前髪をかすっただけで大したダメージにはならない。
体制が崩れたところを狙って、初戦と同じように水球を作りぶつけ凍らせようとするが凍りきる前に壊される。その勢いで突っ込んできた彼を避けきれず、さらに正面から顔を爆破されてしまう。なんか頭から生ぬるいものたれてる、これ血だな。
『もろに入ったあああ!!いったそ〜…』
「同じ手が通用するかよ、読めてんだよ!!舐めんじゃねぇ!!」
「舐めてないっつの!!」
氷で作った剣を振り回し、リーチのある彼に間合いに入らせないようにするが当たらない。至る所に出した氷が目につく。
「本気出てこいや!ああ!?こんなもんかよっ!」
「そんなわけないでしょ!?」
防戦一方、このままじゃジリ貧。体の動きも個性の速さも鈍ってきてるのを感じる。寒い、爆豪くんの爆発で少し暖かいと思ってしまうほど。体に霜がうっすら降りてるのも感じる。
今仕掛けないと、このままじゃ押されて負ける。やるなら今しかない。
脳裏に轟くんの言葉が響いた。ほんのり、手のひらにもう残るはずのない温もりを思い出す。…大丈夫だ。
そして私たちの少し上から見守ってくれてるだろう、あの人も思い出す。
見上げることはしない、見ててくれるのは知ってる。いつだってあの人は傍で見ていてくれたから。不思議と怖さはなかった。
とにかく今は使ってあげたい、こんなことを思ったのははじめてだ。威力も範囲もわからないけれど、今できる全力をぶつける。ずっと思いっきりつかってあげられなかったぶん、使ってあげよう。
ないものねだりはもうおしまいだ。
地面に手をつけて、そして振り上げる。次の瞬間には今までこわされた氷たちもまとめて、一気に爆豪くんへと押し寄せていた。
『なんっだこれ…どんだけの氷…』
呆けたようなひざしさんの声がスピーカー越しに聞こえる。自分で出しといてなんだがびっくりした。氷の海のようだ。こりゃ凄い。水も出しながらだから、ほんとに海みたい。
でもその2つの同時使用に精一杯で、分子運動の細かい所まで全くいじれてない。今まで作った氷の中でもかなり脆いものになってるだろう。
初戦でお茶子の流星群を吹っ飛ばした爆豪くんだ。少しでも量を増やすため、ずっと"溶けない氷"を普通の攻撃の際は作り続けていたとはいえ、きっとこれも壊してくる。
「まだまだァ!!足んねぇなあ!!」
「ちっ…やっぱり、ねっ!」
『飲み込まれたと思いきや、爆豪、全部ぶっ飛ばしたァ!!!!』
爆風で吹っ飛ばされそうになる体。なんとか堪えて、まだ向かってくる彼に再び流氷を作り出そうとして、地面に手をつけた。
だがその手は上がらずがくん、と地面が近づく。走ってくる彼の姿が途切れ途切れに見えて、まるで寝る前のようなまぶたの重さ。
ぴきぴきと緩やかに地面が凍るのはみえるけど、彼の元にたどり着く前にそれは止まってしまった。というか自分の体も凍らせたのかな、なんだかすごく体が寒い。そして気分悪い。
キャパオーバー、というやつだろう
こんな時なのに冷静な自分がいて、頭の中で理解する。悔しいなあ。勝ちたかった、でもそれ以上の満足感。やっと個性を自分の力にすることが出来た。今はそれだけで十分だ。
「ありがとう、消太さん……」
消太さんはきっとわかっていたんだろう。いつか私がこの壁にぶつかること。でも、ヒーローになるなら自分で乗り越えるべきだ。だからこそずっと何も言わずに見守っててくれた。
消太さんにそんなこと言われたことは無いけど、そういう人なのはよく知ってる。黙って見守るって選択をするあたり本当に優しい人。
ああ、本当甘やかされてんだなあ。でも今日で最後になっちゃうかな。少し寂しいけど、これでいい。
「翠蒼さん、行動不能!よって、決勝進出は爆豪くん!」
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