体育祭:Rising
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コンコンとノックされ、開けるとねむりさんがいた。どうやらフィールドの準備が完了したようだ。椅子から立ち上がって入口に向かうとグイッと頬を引っ張られる。
突然のことにあたふたする私を見て、ウィンクをひとつ。そして告げる。
「セメントスはフィールドへの影響は気にしなくっていいって言ってたわ。それに相手の処置の準備もバッチリしてる。…もうあの時とは、環境もあなたも違うわ。だから思いっきりやりなさい」
「…ごめんなさい」
今まで無意識とはいえセーブをかけてたこと、やっぱり先生たちにはバレてたんだ。プロにもバレてるんだろうな、これは。
「謝らなくていいのよ。どんな時でも相手を思いやる優しさは大切よ、そしてそれはあなたの強み。……ほんっと、大きくなったわね。どうしてこんな優しい子に育ったのかしら」
「消太さんの教育の賜物ですね」
そう言うとつかんでいた頬を、そのまま優しく手のひらで包まれる。にひゃりとらしくもなく緩んでしまってデコピンされる。それにも笑うと、呆れたようにねむりさんは笑った。
「個人的にちゃんと応援してるわ。でもきっと、1番応援してるのはイレイザーね」
「え〜まさか!消太さんが?どうして分かるんですか?」
「そうねぇ…大人の女の勘ってやつかしら。さ、そろそろ行きましょ」
綺麗な笑顔で笑ったねむりさんに少し見惚れてしまう。慌ててその背中を追いかける。なんだかねむりさんに言われたら本当に消太さんが応援してくれてる気がしてきた。
「ありがとうございます」とお礼を伝えると、にこりと綺麗にまた笑って、先にフィールドへと向かっていった。
*
「翠蒼くん、君が俺に投票してくれたこと。委員長として推してくれたことを凄く嬉しいと思う」
「あれは…私がやって欲しいと思ったから入れただけ。だからお礼を言われることじゃないよ」
対戦相手の飯田くんと向かい合う。そんなことをいきなり言われるものだから拍子抜けした。でもこういうことをちゃんも相手に伝えるあたり飯田くんらしいなあと思う。
「君の個性の使い方、判断力、とても尊敬している。だからこそ俺は君に勝つ!」
「私も負けない!」
『翠蒼VS飯田、レディーファイ!!』
ひざしさんのアナウンスと同時にフィールドの周りに氷壁を作り出す。スピードで圧倒できる飯田くんは、恐らく場外狙いをしてくるはず。
それを防ぐために一気に作ったつもりだったけどさすがの機動力に叶わず作り終えた時には目の前。蹴り挙げられた足を避けることが出来ず、もろに頭に食らう。いってぇ、レシプロやばい。
水で距離を取ろうとするも、それを避けられもう1発今度はお腹に。さすがによろけてしまった。
そのまま首根っこを掴まれて、物凄いスピードで景色が変わったと思えばいきなりの浮遊感。作った壁よりも高い景色。これを飯田くんは狙ってたんだろうけど
「そう、簡単に負けてたまるかっつーの!」
『翠蒼!水を使って無理やり方向変えた!なんかあれだな、ウォータースポーツにあるやつっぽい!あの浮くやつ!』
壁に水をぶち当てて、無理やり方向を変える。空中でくるっと回って、着地と同時に下に来ていた彼の頭を狙って回し蹴りの要領で狙ったが避けられた。だが予想通りの所へ避けてくれて良かった。飯田くんの後ろ側に回り込めた。
これならよく狙える。
『どうした!?飯田、突然止まっちまったぞ!』
「なっ…!まさか!」
「小細工は得意なんだ、てことでごめんよっと!」
マフラーの中に水をぶち当てて、そこから凍らせる。彼が完全に動きをとめたところで背中から飛び蹴りを決めて、そのまま倒れたところに乗った。2発も蹴られたんだ、1発ぐらいお返しさせてもらわないと。
そして背中から腕にかけて凍らせて、確実に動きを止め首元に手を持っていく。
「さて…このまま全身氷漬けにしてもいいけど、どうする?」
「くっ…まいった」
USJの時の轟くんを思い出して、少し真似させてもらった。自分的にめっちゃ悪い笑顔をしてる自信がある。飯田くんの言葉を聞いて、ねむりさんが手を挙げた。
「飯田くん降参!よって、翠蒼さん勝利!」
上半身の氷を溶かして、彼の上から退けて立ち上がろうとするも出来なかった。頭を触った手のひらに、ベタっと真っ赤な血がついていた。それを見るとなんだかフラフラしてきた気がする。
見かねた飯田くんが、慌てて駆け寄って手を差し出してくれたのでありがたく借りる。うわすっごいがんがんする、まじで凄いなレシプロ。えげつない。
「作戦負けだな。悔しいが君の方が上手だった」
「いやいや…もろに攻撃くらいまくってたのは私だし。ほんとレシプロ凄いな」
「すごく血が出ている!早くリカバリーガールの元へ行こう!」
暖かい拍手に包まれ飯田くんに支えられながら退場する。大きく手を振るひざしさんが解説席から見えて、にっこり笑ってみせた。
ちらりとフィールドを見ると1面氷だらけで水浸し。あれ全部私がやったのかと思うとびっくり。けれどまだまだ、きっとこんなもんじゃ全力には遠い。
でもたまには自分を褒めてあげても良いかな、と思った。
頑張った私!偉いぞ!!
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