体育祭:Rising
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タイムアップ、の声と共に崩れ落ちた緑谷くん。その手には"70P"のハチマキ。そう、最後の最後で取り損ねたのだ。
このまま行けば私たちはここで敗退。
でも私が最後に見た影は彼だけじゃない。
「緑谷くん、顔上げて」
「デクくん」
お茶子と顔を見合わせて、常闇くんを指さす。彼の手には、なんとハチマキが。最後轟くんが動揺したその瞬間、伸びていた影は緑谷くんだけじゃなく、彼の影。つまりダークシャドウものびていた。
「緑谷、お前が追い込み生み出した轟の隙だ」
『4位!緑谷チーム!!!』
ぶわっ!!と文字通り滝のような涙を流した彼に大笑いして喜びを分かちあった。何はともあれ決勝進出、ようやく長い長い午前の予選が終わった。
この後は1時間のお昼休憩を挟んで、午後からの決勝トーナメントのくじ引きをするらしい。そのあとはレクリエーション大会。今年も1VS1のガチバトル、単純に力量が試される。
念の為にお昼は水分多めに取っておこうと思いながら食堂の方へみんなと歩いていると、ふらっと外れていく轟くんと緑谷くんが見えてしまい足を止めた。
「心さん?どうかされました?」
「あー…うん!ちょっと用事思い出したから私は別で食べるね!ごめん!」
「わかりました。ではまたあとで」
私の様子に気づいた百に断りをいれ、彼らが歩いていったような気がする方向へ足を進める。
盗み聞きなんて趣味じゃない、けれど単純に気になってしまった。轟くんが今何を思って戦っているのか。知っていたつもりだけど、気になった。
「あ、ばっくごーうく、ぶっ!」
「黙ってろ」
廊下の突き当たりのところで、なぜか壁によっかかってる爆豪くんを見つけて声をかけただけなのに顔を鷲掴みにされる。主に口。ちょっと息苦しいのに離してくれない。
なんだなんだと抗議のつもりで腕を叩くと無言で視線だけ後ろに流された。それを追うと轟くんと緑谷くん。
「クソ親父の“個性”なんざなくたって……いや…使わずに“一番になる”ことで奴を完全否定する」
最後にそう閉じられ遠ざかる足音に立ち尽くす。叩いていた腕は外されているのに動けなかった。
頭の中に回るのは途切れながらも聞こえてきた、あの日に聞いたこととほぼ同じ過去の轟くんの話と嫌にこびりついて離れないさっきの憎しみと少しの悲しみの混じった声。
「…知っとったんか?」
「…まあ、ちょっと前に話すことがあって」
突き刺さる視線から逃げるように逸らす。そんな私をみて、呆れたのか知らないけど軽いため息をついて歩き出した。そのまま背を向けて私に言う。
「あの半分野郎の過去も、今も、オレにゃ関係ねえ。全部倒して1位になるだけだ。もちろんテメェも倒す」
「ありがとう、でも私だって負けない」
返事はなくてそのまま歩いていってしまった彼の背中を見ながら、にやける顔が止まらない。だってクラストップレベルの爆豪くんにそんなこと言って貰えたんだ。嬉しくないわけが無い。勝ち進めばきっと当たる相手、負けたくない。
多分私と一緒にいくのは不本意だろう。彼の背中が見えなくなった頃に私も歩き出して食堂へと向かった。
*
「え、なんでみんなそんな可愛い格好してんの??好きなんだけど???」
「心さん…どこにいらっしゃったのですか?」
「ふらふらした後ご飯食べてた!」
「連絡したのよ?」
「まじか梅雨ちゃん!スマホの電源切ってたから見てなかったわ!」
昼休みが終わり、グラウンドに降りてみるとなんとA組女子たちが可愛いチアに変身していた。
なんだか百や響香が落ち込んでいたりしてたので聞くと、峰田上鳴コンビに騙されたらしい。どんまいすぎる。
でも正直こんな可愛い姿見れるのは私得すぎるので、あとでこっそり写真をもらおうと決意した。
『さぁさぁ皆楽しく競えよレクリエーション!それが終われば最終種目、進出4チーム総勢16人からなるトーナメント形式!一対一のガチバトルだ!』
ひざしさんの声がして、ねむりさんが壇上へ。ざわざわしてたこえが少し静まっていく。
「それじゃあ組み合わせ決めのくじ引きしちゃうわよ。組が決まったらレクリエーションを挟んで開始になります!」
競技の説明を受けていると、斜め前にいた尾白くんが突然手を挙げ「辞退したい」と告げた。理由は騎馬戦の時の記憶があやふやなこと。突然の申し出に驚く周り、私もびっくりして彼の続きの言葉を待つ。
「チャンスの場だってのはわかってる。それをフイにするなんて愚かなことだってのも…!でもさ!皆が力を出し合い争ってきたこの座なんだ。こんな…こんなわけのわかんないまんまそこに並ぶなんて俺はできない」
並々ならぬ彼の決意に、ざわざわと動揺してた声が静まる。B組の子も続けて同じ理由で辞退したいと申し出た。それらはねむりさんの「青臭いのは好み!」の判断で許可された。
「尾白くん凄いなあ…ねえ、心ちゃん。…心ちゃん?」
「うわっ、ごめん。ぼーっとしてた。うん、そうだね。凄いと思うよ」
隣のお茶子に話しかけられ、ビクッとしてしまう。尾白くんの言葉がぐるぐる回って離れなかった。理由はわかってるような気がしたけど気のせいだと思い込んだ。
やるって決めた気持ちには嘘がない、勝ちたいのも本当。なのにどうして、こんなに彼らと距離を今更感じるんだろう。
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