体育祭:Rising
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誰と組もうか、考えた時に1番に浮かんだのは彼だった。
だから真っ先に彼の元へと足を踏み出したところで、声がかかったけれど迷うことなんてなかった。
「翠蒼、俺と組まねぇか」
彼の周りには飯田くんと百がすでにいる。それに私が入れば轟くんとの相性も個性的にバッチリだしポイントもきっと私たち二人合わせて上位はほぼ間違いない。
私を助けてくれたヒーローであり、個性の使い方も似てるけど私より上。尊敬は十分、でも私は彼に負けたくない。1番勝って挑みたい相手。
「私さ、めっちゃ負けず嫌いなの。轟くんは尊敬してるし声をかけてもらえたのはすごく光栄」
「まあ……!なら、」
「だからこそ、君に負けたくないからごめんね。私は轟くんに勝ちたいんだ」
「…そんな気がしてたから、別にいい」
パァァっと表情を明るくした百には申し訳ない。轟くんは察していたのか、きっと予想通りだったんだろう。気にした様子はなく他のところへ向かっていく。
その背中を見送って私も目当ての彼の元へと今度こそ歩みを進める。
「ねえ、私と組んで欲しいんだ。緑谷くん」
「……え、ええええ!!!?ぼく!?!?」
周りから明らかに避けられてる緑頭の彼、とその横にはお茶子。緑谷くんめちゃくちゃ叫んでる。
そりゃまあ驚きもするか、ここまで避けられてたら誰かに声をかけることはあってもかけられることは無さそうだし。
「私の個性を君に使って欲しいんだ。ダメかな?」
「いやいやいや!願ってもないよ!!翠蒼さんの個性は凡庸性が高い上に攻撃力も防御力もある。そして機動性にも十分だし、僕にはもったいないぐらいというかなんというか」
ぶつぶつタイムが始まった緑谷くんに苦笑い。お茶子が「落ち着いてデクくん」となだめてて可愛かった。
気づけば交渉タイムは残り5分、思ったより時間が過ぎているしそろそろもう1人ぐらい見つけたいんじゃないだろうか。それに何より私はちゃんと返事を聞いてない。
「それで、どうかな?私をチームに入れてくれない?」
「も、もちろん!よろしく!」
「うん、ありがとう。よろしくね!」
手を差し出せば、恐る恐るながらも握手を返してくれた。その手はがっしりしていて努力の跡が見て取れた。うん、彼を選んだのは間違いじゃない。
そしてまたぶつぶつタイムがはじまり、彼が最後の1人に選んだのは常闇くん。攻撃力は私にもあるけど決して突出している訳でもないしその点常闇くんはぴったりだろう。
「麗日さん!!!」
「っはい!!」
「翠蒼さん!!!」
「はいよ!」
「常闇くん!!!」
「ああ…」
「よろしく!!!!」
緑谷くんの騎馬の上からの呼び掛けに答える。そして始まった試合。同時に2組が攻めてきた。まあ、1万ポイントの争奪戦だよね。
「追われしものの運命……選択しろ緑谷!」
「もちろん!!逃げの一手!!」
さだめ、せんたく……中々常闇くんは面白い言葉遣いをする。
逃げようとしたその瞬間、地面がぐにゃぐにゃっと泥のように柔らかくなって足を取られる。こんなとこでぐずついてる暇はないんだ。
「お茶子!浮かして!」
「わかった!」
「みんな、目つぶっててよ」
お茶子が全員に触れたのを確認して、水で"飛んだ"。フライボードの要領で、水圧でみんなをあげる。お茶子の個性のおかげでこんだけの人数でも余裕で浮かせられた。
ただひとまず距離を取れたからって油断はできない。私たちの死角から響香のイヤホンジャックが飛んでくる。それを常闇くんの黒影が防いでくれた。緑谷くんが選んだチーム、さすがバランスがいい。
「着地するよ!」
お茶子の声で着地と同時に、今度は障子くんが単体で突っ込んできた……と思ったらくっついた足。峰田くんのもぎもぎ、一体どこから、まさか!と思えば今度は梅雨ちゃんの舌が彼の中から出てくる。そうか、体格差を活かして二人を隠しているのか。
「翠蒼さん、飛んでそれ離せる!?」
「いける!3カウントで飛ぶよ、お茶子触って!常闇くんの黒影でも引っ張りあげて欲しい」
「承知した」
「よし、3、2、1!」
再び4人で空を飛ぶ、峰田くんのもぎもぎの粘着力の強さからあまり上には飛べなかったけど、どうにか剥がすことには成功。そして着地まじかで今度は爆豪くんが飛んできた、まじか。でもここは黒影が阻んでくれる。ほんとに凄いよ黒影。
残りラスト5分目前。状況から見るとB組は予選を捨ててこの本戦に絞って最後に残ろうとしてる所がみられる。そしてそれはわざわざ緑谷くんを狙う確率は少ない、どころかほとんどないだろう。考えられる限りの最善策は1つ、きっと緑谷くんも考えてる。
「皆、逃げ切りがやりやす……」
言いかけた言葉は止まる。一瞬周りの音が止まってひざしさんのアナウンスがやけに響いた気がした。
『さァ残り時間半分を切ったぞ!』
「そう上手くは…いかないか」
「……覚悟決めなきゃだね」
「そろそろ、獲るぞ」
君なら来るよね、轟くん。
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