有精卵の出会いと悪意とUSJ
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目が覚めると知らない景色、夕焼けが窓から差し込んで少し眩しかった。ここはどこだろう。リカバリーガールがいないし、多分仮眠室とか休憩室とかそこら辺かな。ひとまずコスチュームも着替えなきゃだし、事情聴取とかもきっとある。保健室に行こうと思いベッドから降りた。
広い校舎の道すがら、USJでの出来事を思い出し先程までの喧騒が夢のようだと静かな廊下だと思えてしまう。夢なら、いいのに。でも崩された手首を中心として、身体中の痛みや疲れが現実だと思い知らされる。ほんと、よく生きて帰ってこれたよ。
「失礼します」
「おや、起きたのかい。痛みはどうだい?」
「手首はやっぱりいたいです。あとダルさも残ってます」
ひとまずそこに座りな、と指された椅子に座る。それからリカバリーガールに話を聞くところどうやら私は個性を止めたあとに倒れたらしい。単なる個性の使いすぎもあるが、それ以上に個性を全て解いた途端に手首からの出血も止まらなくなったらしい。その結果の貧血だそうだ。
そんな説明を私にしながら、至る所に巻かれてた包帯をスルスルと解いていくリカバリーガール。手首だけじゃなくて、どうやら色々な裂傷があって所々縫ってあるものも。なかなかグロい。
「あの、しょ…相澤先生は?」
「イレイザーはもう病院で処置済みさね。…両腕骨折に顔面陥没、目になんらかの後遺症が残るって話しさ」
「目に…」
ガツンと鈍器で殴られたような痛みに襲われる。目は消太さんの商売道具、それに後遺症が残るなんて。もっと早く私が助けられていれば、もっと私が強かったら。
「そんな顔しなさんな。あんたの責任じゃない。……あんたが止血してくれなかったらね、命の危険もあったんだよ?」
「いのちの……」
「そう。だから君は誇ってもいい、助けられたんだから」
後ろからの声に振り返る。そこには警察手帳を出しながら微笑む男性。塚内さん、という方らしい。2人の言葉がじんわりと胸に染みて泣きたくなったけど我慢した。ヒーローは助けて当たり前なんだ、こんなことで泣いてちゃ強くなれない。
「あ、緑谷くんとオールマイトは?」
「2人は治癒してそこで寝かせてるよ。ちゃんと無事さ」
「そうですか、良かった」
「全く…最近の若いのは無茶ばっかりする。あんたもしっかり縫った腕、綺麗に治したいんだったら無駄に動かさないこと!いいね!」
プンプンと怒るリカバリーガールに苦笑いをしながら頷く。私より大怪我していた2人も無事でよかった。新たにまた包帯を巻いてくれたことにお礼を言い立ち上がる。どうやら順番に事情聴取をしているみたいで、教室が待機場所らしい。1度戻って着替えることにする。
教室に戻ると、まだ結構な人達が残っていた。私はわりと早く目覚めたらしい。
「心!!!!」
「わ〜〜!!無事だったんだ!!!よかった!!!」
「翠蒼生きてたか!!」
「いっ…!うん、ありがとう。心配かけてごめんね」
がしっ!と勢いよく抱きついてくる透ちゃんとわらわらとあつまって来たみんなにお礼を言う。心配かけちゃったなあ、申し訳ない。
「事情聴取は出席番号順?」
「ええ。ですが先程始まったばかりですので、心さんの順番はまだ少し先ですわよ」
「あー…じゃあ着替えてこよっと」
机の上に誰かが置いてくれてたケースを取って、更衣室に向かおうとしたところで手が使えないのを思い出す。幸い左手だから利き腕じゃないけど、そもそも全身包帯ぐるぐるで1人だと着替えにくい。
誰か手伝って欲しいな、とお願いしたら快く百と響香が引き受けてくれたので3人で更衣室に向かった。そこまでで色んな話を聞く。1番笑ったのは爆豪くんが1番に事情聴取受けて1番に帰ったくだりだ。
「…ぐるっぐるだね、包帯。無茶しすぎでしょ」
「敵の中に1人で突っ込んだってお聞きしました。心さんが集合場所にいなかった時は肝が冷えましたわ」
「えへへ、ごめんね。心配してくれてありがとう、怪我はね、リカバリーガールに治癒してもらってるから見た目ほど今は痛くないよ」
着替えながら見える包帯達に顔をしかめる2人。どうやら突っ込んでいった場面を緑谷くんや梅雨ちゃん、峰田くんに見られていたらしい。
それにしても、こうやって心配してもらえることに申し訳なさもあるけれどその温かさにじんわりと胸の当たりがポカポカする。こんな友達が出来て私は幸せだ!
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