有精卵の出会いと悪意とUSJ
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世界は残酷だ。大切なものを容赦なく奪っていく。
私の両親は4歳の時に亡くなった。ヒーローとして、活動中に。
"個性"という能力を多くの人が持つこの時代、"ヒーロー"という職業は珍しくないどころかみんなの憧れ。そんな両親は私の誇りだったし、これからもそれは変わらない。
世間からはたくさん知られてるわけじゃなかったけれど同行者からは随分と慕われてたらしい2人。とても忙しかったはずなのに惜しみない愛情を向けてくれたことを、はっきりはしないけど、でも確かなあたたかい記憶として覚えている。
そしてこれは大きな私の分岐点だ。
両親が亡くなったあと、親戚中をたらい回しにされた。というのも個性が発現したてで、なおかつ精神的な所から全くと言っていいほどコントロール出来ず手を焼かれたのだ。なまじヒーローの両親の個性を強力に受け継いだ為に威力は中々のもの。暴走する子を誰も面倒見たがらない。
ただ、どうも世界は残酷なくせに優しさもある。神様なんているのか知らないけど、もしいるとしたら気まぐれなぐらい手を引っ込めたり差し伸べたりしてるのだろう。
そうした結果にたらい回しにされていた所に、声が掛かる。そして両親が懇意にしていたあるヒーローの元へ預けられることとなった。
そのヒーローというのが、イレイザーヘッドこと相澤消太さん。お母さんたちがずっと可愛がっていた後輩らしい。彼も両親のようにあまりメディアには出ないけど、なんだかんだ色んな人に慕われているし信頼されてるかっこいい、憧れのヒーローであり私の師匠。
個性が今コントロール出来てるのは彼の愛あるスパルタ指導のおかげである。
「…おはよう」
「おはよう、消太さん。ご飯もうできてます」
「ん」
しかし普段は結構だらしないこの人。本当はすごく頼りになるんだからもう少し日常生活も頑張ってくれると私はすごく楽になる。特に食生活問題はやばい。目を離すとすぐに10秒チャージで済まそうとする。作ったらしっかり食べてくれるけどね。
「いただきます」
「いただきます」
二人分の声が食卓に響く。これが幸せだということを身をもって知っているから、この時間を毎朝迎えられることにほっとしているのは私の秘密。
それはさておき今日の予定を目の前の消太さんに尋ねると、残業があるから夜ご飯はいらないとのこと。
「…消太さん、お昼ご飯ちゃんと食べてくださいよ?」
「……毎回食べてる」
「ゼリーはご飯じゃありません」
こりゃダメだ、あとでちゃんとひざしさんとねむりさんにLINE飛ばしとかないと。2人は消太さん繋がりで知り合ったプロヒーローのプレゼント・マイクとミッドナイト。消太さんの同僚でもあるおふたりにお昼ご飯事情はかかってる。
「じゃあ、いってくる」
「はい、行ってらっしゃい」
パタン、と扉が閉まって私も学校に行く準備を始める。さあ、今日がまた始まる。
残酷で、けれども愛しいこの世界が今日も回り始める。
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