有精卵の出会いと悪意とUSJ
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(轟視点)
平和の象徴の力を見せつけられ、実感した。きっとそれはその場にいた全員同じだろう。ポカリと空いた穴を見つめながらしみじみと感じる。だがいつまでも見てるわけもいかねえし、ここにいて俺たちにできることは少ない。
数歩あゆみを進めて、ふと隣にさっきまでいた影がないことに気づく。後ろを振り返ると翠蒼が座り込んでいた。最初はさっき怪我してた左手首を押さえていたが、そこから氷がどんどん広がってる。誰も気づいてねえが普通じゃない。
「おい!」
「とど、ろき、くん?…だめだよ、はなれて」
「なんで!」
「轟くんまで凍らせちゃうよ!!!」
力が溢れて止まらないって感じなのはわかる。だがどうすればいいか、火を当ててみても溶けないことからきっとさっき使っていた"溶けない氷"とやらなんだろう。よく見れば手からひたすら水を出して、それを片っ端から凍らせてる感じか。どちらにせよ止めなければ。でもどうすればいいのか。
「心ちゃん!」
「心!」
迷い、思わず手を離したその時マイク先生とミッドナイト先生が走ってくる。ミッドナイト先生が翠蒼の顔を両手でつかんで、その顔は涙で濡れていた、
「大丈夫、彼も今病院に運ばれたわ」
「ねむり、さん…?」
「今の心ならもう制御出来るだろ!ほら、息しろ!」
「ひざしさん…消太さん、消太さんがっ」
ぼんやりとしたかおから、意識を取り戻したかのように相澤先生の名前を呼ぶ翠蒼。そう言えばマイク先生とミッドナイト先生も彼女の下の名前を呼びながらここに来たし、何か3人は特別な間柄なのかもしれない。ただ、彼女が相澤先生の名前を下の名前で呼んでいるところは入学して数日だが見たことがない。なにかあるのだろうか。
「イレイザーはもう治療を受けてる!ほら、無駄に泣いてたらまた怒られんぞ?」
「ん…」
「息を吸って。大丈夫、個性、止められるわよね?」
「三態操作の方はなんとか…でも、」
それはさっきみたいに止まらない、というよりは止めるのを怖がっているように感じてある一言を思い出す。氷が家族みたいなもん、だったよな。だけど今の状態だと止めてもらわない限りこの場の全員凍傷になる。炎で溶けない以上、翠蒼に止めてもらうしかない。顔を覗き込むと、さっきまでの負の感情は消えてる。これなら届くか。
「翠蒼、1人じゃねえよ。周りにいるだろ。俺もマイク先生もミッドナイト先生も」
そう言ったら、翠蒼は大きく目を見開いて頷いた。状況を説明しただけで当たり前のことだったんだがな。もう一度火をくべれば周りの氷が溶けていく。先生2人もほっと息を吐いたのが聞こえた。それにしても物理法則をガン無視した氷はどうやって出来てたのか、すげぇな。
「もう大丈夫、ひざしさん、ねむりさん」
「本当?無理してない?」
「お前すぐ無理するからなー!」
「手痛いしなんかめっちゃ疲れたけど大丈夫」
それは大丈夫じゃないだろ、と内心突っ込むが顔色は先程より幾分いい。きっとそれは先生達も気づいてるだろうからか、軽く翠蒼を小突いて何も言わなかった。リカバリーガールもこちらに来て、翠蒼がざっくりとだが怪我した左手首について説明する。
崩れてたって、咄嗟に服を破って止血したがある意味正解だったのか。もっとしっかり見ればよかったと少し後悔した。他にもよくよく見ると身体中切傷だらけだ、そんな状態で動き回っていたことに驚き呆れる。
「これ、縫いますか…?」
「イレイザーの肘見る限りそうさね。とりあえず麻酔打つよ、痛いのは嫌だろ?はいっ」
「いっっ!?え!そんないきなり打ちます!?てか消太さん縫ったって…」
「そりゃあんだけ怪我してたら縫うさ。ところであんたいいのかい?それ内緒だったんだろう」
「あっ」
それ、とは恐らく相澤先生との関係性のこと。おそるおそるこちらを半泣きで見る翠蒼。やっぱり聞いちゃダメなことを色々聞いてしまったらしい。悪ぃ、と謝るとふるふると首を振って苦笑いを浮かべていた。状況が状況だしどうしようもなかった。
「さあ、轟くんはゲート前に行ってちょうだい」
「心配しなくても、イレイザーもあいつもそこら辺きっちりしてるからよ!」
「…はい」
「轟くん、色々ごめん。あとありがとう」
翠蒼の謝罪と礼に頷いて、先生に促された通りゲートに向かう。怪我の行方は気になるがここにいて俺に出来ることはこれ以上ない。マイク先生に改めて詮索しないでやってくれ、と最後に言われ頷いた。翠蒼も色々あるんだな。
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