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堕ちた人間は塵を纏いて

雪はいいものだ。
モンスター達の死体を隠すにはぴったりな条件が一致している。紛れてくれて、雪と塵が混ざり合ってくれる。寒さと視界の悪さで殺すのも容易い。
本当…いい場所だな。

「ネームレス、そろそろ行こうぜ。早く行かないとボスに怒鳴られる。」

黒のパーカーにフェイクファーを揺らすスケルトン、サンズの声を聞いて振り返る。雪の日なのに主張が激しい金歯を見せながら笑う彼のことが俺は好きだ。
人間の俺を庇い、ボスに嬲られようとも俺を殺さなかった彼を俺は愛してしまったんだ。
それから俺はサンズを守るため、人間を殺すためにこのスノーフルにいる。
この地下世界の王様は人間のソウルを集めること、そしてこの世界は殺すか殺されるかという宣言をしているぐらい殺意が高い方だ。実際に会ったが、出来ればあまり会いたく無いという感想だ。本当に何故あの方は俺に自分の槍を託したのだろうか…。

「ああ、そうだな。」
「アンタ…何か良からぬことを考えていたな?」
「…死んだらこの雪に溶け込めるかなと思っただけだ。」
「それはどうだろうな。話じゃアンタたち人間は俺たちみたいに直ぐに塵にならないんだろ?」
「…そうらしいな。」

俺は人の死に立ち会ったことなんて無いから本当にすぐ塵にならないなんてことは知らない。ただ、サンズたちは死んだらすぐに塵になるらしい。
そんなシーン、俺は絶対見たくないしサンズやボスが殺されそうになったら俺が真っ先にそいつを殺すだけだ。
王様から託された槍を肩にかけ、サンズの方に向かう。幸い今日は視界が微妙に悪い日だ。ここで誰かを殺しても近くにこない限りは気付かないだろう。
一歩、また一歩とサンズに近づく。相手は全く警戒しておらず俺が隣に来るのを待っている。本当にお前、そういうところだからな。だからボスにいつも怒られるんだ。
槍を構える、相手に気づかれないように静かに、気配を消して。
あと、三歩、二歩、一歩。

「…ネームレス?」

一線。
サンズに向け俺は真っ直ぐ槍を放つ。
三叉の槍は先端をサンズの首の両端を掠め、窪みで首を引っ掛ける。サンズの苦しそうな声が聞こえ、そのまま地面に差し込む。雪に倒れ込む音と槍が深く刺さる地面の感覚を確認する。
雪に貼り付けにされたサンズをじっと見つめると、荒い息を吐きながら俺をじっと見つめるサンズの目線と絡む。

「あ、て、てめえ…。」
「ボスには後で俺が適当に言ってやるよ。」
「…へへ、アンタもボスに締められるぜ。」
「別に構わないさ。」

無抵抗なサンズに馬乗りになる。股にサンズの背骨が当たる。
今日は雪で視界が悪くて良かった。
だって、ここで人間とモンスターが愛し合っても誰も気づかないのだから。
異様に目立つサンズの金歯を舐め、そのまま恋人たちがするようなキスをする。
この行為が終わるまで、どうかこの塵で俺たちを隠してくれますように。
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