教授
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「随分急いでどちらに行かれるのですかな?」
「…お久しぶりです…教授…」
尻餅をついたままの私の腕を掴むと、凄い力で引き起こした。
教授は私に怒っているのか、不機嫌な顔でじろりと睨まれた。
「…今朝、準備したものに不備がありましたか?」
あの事があってから、私は教授が不在の時を見計らって授業準備をし、その後薬学以外の授業の手伝いをしていた。
もちろん夜の実験ももう大丈夫と一方的に打ち切ってしまった。
「…あれから…」
「平気です!体に異変はありません!!」
教授の言葉に被せるように私は答えた。
私を見下ろす教授の顔を見ると、何だか切なくなって涙が出そうになって慌てて俯いた。
会えなくなると、気持ちばかりが大きくなって好きで好きでたまらなくなる。
「次は薬草学だから急がなきゃ…」
そう言いながら、私は教授の横を通り過ぎようとした。
「待ちたまえ。」
右手首を掴まれて、私は立ち止まった。
「一度試したいことがある。今夜薬学室に来るのだ。」
「今夜はその…」
「必ずだ!」
スネイプ教授の大声に体が固まった。
ビクッとした私を見て、スネイプ教授は足早に行ってしまった。
…どうしよう。
好きな人に会いにいくのは嬉しいはずなのに、それと同じくらい気が重い…
教授に会ったら頭の中でひたすらお経を唱えよう!!平常心平常心!!
気合いを入れて薬学室の扉をノックした。
バンと勢いよく扉が開いて、教授が目の前に立っている。
「ひえっ!」
距離が近すぎて思わず声が出てしまう。
思いっきり不機嫌な顔で教授が私を見下ろす。
「きたまえ…」
教授は私の横をすり抜けると、ツカツカと歩き出した。
私も教授の後に続く。
着いた所は暴れ柳が見える何もない芝生だった。
「ここで何するんですか?」
私は訳が分からずキョトンとした。
教授がチラリと私を見て、杖を一振りした。
その瞬間、凄い爆音とともに花火が上がった。
お腹の底に音が響いて、体の中がビリビリ震える。
日本でお馴染みの花火。
故郷を思い出して私は歓声をあげる。
教授がまた杖を振る。
次々と花火が上がって夜空が明るく輝いた。
私の大好きなしだれ柳の花火が上がる。
「スネイプ教授、凄く綺麗です…」
教授は私を見て、微かに微笑む。
いつか好きな人と一緒に花火を見たいなぁと憧れてたけれど、まさに今ここホグワーツで夢が叶うなんて…
私は憂鬱な気持ちなどすっかり忘れて教授の横顔と空を交互に見上げながらうっとりしていた。
しばらくすると花火は消えて、火薬の香りだけが残った。
「ああ…終わっちゃった…残念。」
「…やはりな。」
スネイプ教授の大きな手が突然私の頭を撫ぜた。
「!?」
「…フカフカしている。」
ハッと後ろに手をやると、大きな尻尾が左右にブンブン触れている。
教授は目を細めながら狐の耳を触って感触を確かめている。
「ぎゃっ!!!!」
私は叫びながら、ザッと後ろに飛びのいて地面にうずくまった。
教授と花火に見とれて、耳と尻尾が出ていることに全く気がつかなかった。
なんと言い訳したら良いのか私はパニックになった。
頭を抱えながら、脳みそをフル回転させる。
「我輩の思った通りだ。爆発音だったのだな。」
「…はいっ?!」
顔をあげると、教授のドヤ顔が私を見下ろしていた。
余程の間抜け顔をしていたのか、スネイプ教授が珍しくニヤリとした。
「その口を閉じるのだな。いつにも増して間抜けに見える。」
私はやっとのことで理解した。
スネイプ教授は私の耳と尻尾は爆発音とともに現れると勘違いしているらしい。
そう言われて最初に耳と尻尾が出た時、凄い光と音とともにロックハート教授が吹っ飛んだのを思い出した。
「随分難しく考えていたが、簡単なことだったのだ。内側からのショックではなく、外側からのショックが必要だったようですな。」
「…そのようですね。」
何だかよくわからないが助かった!
そう思ったら、尻尾がまた左右にブンブン振れた。
「さぁ、立ちたまえ」
スネイプ教授が私に手を差し伸べてくれる。
私は恐る恐る教授の手を掴んだ。
暖かくて大きな手が私の手を優しく包む。立ち上がって教授と接近した瞬間、ゾワゾワと何かが体の中から這い上がって来て、シャツの胸元から真っ白な光が飛び出した。
「あっ!!!」
驚いて私は教授の手を離す。
白い光は凄い速さで空中を三回転すると、スネイプ教授めがけて降りて来た。
「っ!!!!」
ドサッとスネイプ教諭が尻餅をついて、声にならない声を上げた。
「教授!!!」
心底驚いたような顔する教授の全身にぐるぐると真っ白い狐が絡みついている。
それは嬉しそうに尻尾を左右にブンブン振って、教授の顔に自分の顔をスリスリ擦り付けて目を細めていた。
教授はびっくりしすぎて固まったまま、されるがままになっている。
私もどうして良いのか分からずに狐をただ見つめる。
その時、狐がパッと顔を上げて私を見た。
次の瞬間凄い速さで私の元に飛んでくると、ぐるぐると体の周りを回り始めた。
少しの間そうして落ち着いたのか、私の肩に飛び乗ると頬ずりして尻尾を振る。
私が体を撫ぜてやると、狐は静かに私の胸元に顔を突っ込んでふっと消えてしまった。