「はい、時間です。皆さん鉛筆を置いてください！」
可愛い生徒達が一斉に顔を上げた。
「できた人は提出、間に合わなかった人は来週までに仕上げてくださいね。」
小さなブリキ缶の蓋を開けると紙のヒトガタ達が一斉に飛び立って生徒の机の上を浮遊し始めた。
「片付けが終わった人は教室から出てかまいませんよ。お疲れ様！」

ヒトガタが集めたレポート用紙を受け取りながら私は窓の外を見た。
春のマホウトコロの庭は桜の花が咲き乱れている。
時折風が吹いて桜吹雪が美しい。
コンコンと教室の扉がノックされて私は窓辺から視線を移した。

「（名前）、用意はできたのか？急がないと週末に間に合わない。」
優しい笑顔で兄さんが笑う。
手に持つ風呂敷包みには日本の薬草がたっぷり入っているのだろう。
不思議な香りが漂っている。
私は兄さんの前に立つとその包みを受け取った。
「兄さんは何か必要なものある？今度帰る時、持って帰ってくるけど。」
「そうだな…私が何も言わなくても彼は欲しいものを持たせてくれるはずだよ。」
「そうね。兄さんとあの人はとっても気が合うもの。」
私は風呂敷包みを掲げて笑った。