教授
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シリウスの背中を見ながら私は重い足取りで雪の上を歩いた。
玉は呑気にシリウスの首に巻き付いて、彼をよりゴージャスに見せている。
「…よかったな。」
前を向いたままシリウスが私に声をかける。
「えっ?!」
「…。」
「?」
少し間を置いて私を振り返ったシリウスは嬉しそうに笑ってチケットをヒラヒラと振った。
「ここの店、なかなか入れないらしいぞ。」
「あ、ありがとうございます。」
シリウスの楽しそうな笑顔に私も思わずそう答えてしまう。
でもそれで会話は終わってしまってまた私たちは無言で雪の道を歩いた。
「あの、いったいどこまで行くんですか?駅はこっちじゃありませんよ?」
「あそこに良いものを置いてきた。」
シリウスが指さす方を見て私のテンションが上がった。
そこには大きなバイクが停めてある。
「あれシリウスのハーレーですか?!」
凄くかっこいいハーレー!!!しかもサイドカーが付いてる!!!
「すっごくすっごくオシャレですね!!!!」
いつかハーレーに乗りたいと密かに思っていた私は気まずいことも忘れて思わずバイクに走り寄った。
かっこいい…完璧だわ…
「わはははは、名無しがそこまで食いつくとはな。イケてるだろう?」
「最高ですね!」
私は笑顔でシリウスを振り返った。
そんな私の顔を見たシリウスが真顔になる。
「…。」
「…。」
また私ったら…はしゃぎすぎてしまった…。
気まずくなって俯いた私はバイクから一歩後ずさって静かにしていた。
「フフ。ほら。」
顔を上げるとシリウスがこれまた素敵なヘルメットを私に差し出す。
「出発する前にこいつをどうにかしてくれ。」
シリウスが首の玉を指さして困ったように笑った。
玉はシリウスの頬をペロリと舐めると大人しく私の胸元に消えて行った。
シリウスのハーレーもサイドカーも乗り心地は完璧!
そのスピードも最高!
私は段々と暮れて行く空を見つめながら全身に冷たい風を浴びていた。
夕日が沈んで行く景色はとっても綺麗。
ふと横を見るとシリウスの美しい横顔が夕焼けのグラデーションの中浮かんでいる。
胸にじわっと何かが灯って慌てて私は前を向いた。
「さぁ、到着だ。」
シリウスは人気のない場所にハーレーを止めると少し微笑んで右手を私に差し出す。
差し出された右手を軽く掴んで私はサイドカーから立ち上がった。
「…ここは…マグルの街ですよね?」
「当然だ。魔法界に日本料理店は無いからな。」
路地を出ると賑やかな街並みに人が沢山歩いている。
いつしかシリウスとクディッチ観戦に来たことを思い出して懐かしさが込み上げてくる。
「お店はすぐですか?」
「ああ、あの建物の角を曲がるとすぐだ。」
前から歩いてくる女性達がシリウスを見ている気がして、私もこっそり横顔を伺う。
いつもこんな感じで道行く人にジロジロ見られるのかな?
美形って大変だな…。
「さっきから男達が名無しを見ている。」
「はい?!」
シリウスが急に変なことを言うから私は大声を出した。
「ははは!やっぱりな、全然気づいてないだろう。みんな見てるぞ。」
「顔に何かついてますか?!」
慌ててバッグから手鏡を取ろうとする私の右手をシリウスが掴む。
「そういう意味じゃない。美しい女性だからみんな君を見るのさ。」
「…!!」
またキザなこと言って!!!
「からかうのもいい加減にしてください。
それにさっきから女性がみんなシリウスのこと見てますよ。気づいてました?」
ジト目で見てやったらシリウスが、いつものことさ!!と楽しそうに笑った。
曲がり角の手前の建物から可愛らしい子供たちの声がする。
柵で取り囲まれた大きな庭を見ると数人の子供たちが夕暮れのなか階段に座り込んでいた。
私はその子供たちを見ながらシリウスの後について歩いて行く。
『聖ヨゼフ孤児院』
門の表札にはそう書いてある。
「このりっぱな建物は孤児院なんですね。」
「そうみたいだな。」
私たちはそんなことを言いながら曲がり角を曲がって目的の店に到着した。