教授
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優雅に机の周りを歩く名無しの手には大きな皿がある。
その上にはチキンや野菜がいつものように山盛りになっていて、美しい姿とのギャップにスネイプは小さく笑う。
「今日のチキンは焼き加減が最高ですねぇ!ほら、教授もたくさん食べて!」
隣に座った名無しがスネイプの皿にチキンを入れて嬉しそうに笑った。
「我輩はいらん。自分で食べろ。」
「はい、野菜も食べてくださいね。」
スネイプの言葉を無視して人参とカリフラワーが追加される。
睨んでやろうと顔を見たら、幸せそうな顔でチキンを口いっぱいに頬張る名無しの笑顔があった。
スネイプは嫌味の一つをぐっと飲みこんでチキンを口に入れた。
今日は料理も特別だけど、ドリンクも可愛いものが沢山!
その中でも私が気に入ったのはカットした林檎が沢山入っているシナモン味のカクテル。
アップルパイみたいな香りがする中に、ほんのりバニラの香りがある。
バニラの香り…シリウスの顔が浮かぶ。
彼はいつか家族とは疎遠だとちらりと私に話してくれたことがある。
今頃は誰と過ごしているんだろう。
楽しいクリスマスを過ごしているかしら…?
そんなことを考えながら、そのカクテルに口をつける。
ああ、おいしい。
お酒っていうより林檎ジュースみたい!
こう見えてもお酒には弱くない。
がぶがぶ飲んだって平気なんだけど、いつもより楽しい気分になるわね。
横を見たらスネイプ教授がいつもの表情で小さく切ったチキンを食べていた。
ナイフとフォークで上品に食事するその姿を美しいと思う。
筋張ってとても大きいのに繊細な魔法薬を調合する教授の手。
私の体を触るときも繊細で優しいのかしら…?
あの指はどんな動きをするの?
「何を見ている?」
「えっ?!」
びっくりしてたてたフォークとお皿の音が私のイケナイ妄想をかき消した。
「別に何も!もっとワイルドに食べたらいいのになぁと思いまして…」
「…名無しと一緒にしないでいただきたい。
…また我輩は何か良からぬ想像を…」
「開心術しないでくださいっ!!」
「何を想像していた?」
スネイプ教授の顔が突然私に迫ってきて顔が熱くなる。
「顔が赤いが…カクテルの飲みすぎではなかろうか?」
「ああっ…そうです!カクテルのせいです!ちょっと窓を開けて風にあたろうかなぁ~」
そう言いながら私は教授から逃げるように窓辺に逃げた。
そっと窓を開けると冷たい空気が流れ込んでくる。
澄み切った冬の風が私の頬を冷ます。
真っ白な雪をかぶった風景が月光に照らされて美しい。
そっと背中に置かれた手のひらの体温に振り返るとスネイプ教授が真っすぐ私を見つめている。
私の右手を優しく取ってゆっくりと自分のほうに引き寄せた。
腰にスネイプ教授の腕が回る。
気が付くと大広間には素敵な音楽が流れていた。
私たちはぎこちない、遠慮がちなダンスを踊る。
ダンスなんて初めてで、でもスネイプ教授が優しくリードしてくれるから何となく踊れてしまう。
凄く幸せで嬉しいはずなのに泣きそうになる。
絡めたふたりの手に視線を移したら、さっき私がプレゼントしたカフスボタンが袖口に光っていて胸がギュッと熱くなった。
「スネイプ教授」
「…。」
私が真っすぐ教授を見ても何も言ってくれない。
普段絶対見せてくれない優しい笑顔がそこにあるだけ。
もうこの気持ちを我慢できない。
「私、教授が好きです」
腰に回る腕に優しく力がこもる。
私たちの体がゆっくり回転して、音楽の終わりと共にぴたりと止まった。
辺りに静寂が走る。
ずっと押し込めていた気持ちを伝えてしまった。
お願い…何か言って…
絡めた指が離れてスネイプ教授が私の頬を優しく撫ぜた。
私の胸は震えて、触れられた頬が熱い。
スネイプ教授の睫毛が私の瞳にうつる。
夢で見ていたのよりずっと切ない。
温かく柔らかい唇。
もっとギュって…ずっとしていたい…離さないで…
私の頬に一粒涙がこぼれた。