教授
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ここは何処だろう…
私は真っ暗な道を一人歩いていた。
不安と恐怖を胸に手探りで道を進むと視線の先に細い灯りが見える。
近づくと灯りは扉の隙間から漏れていて、私はそっと扉を押す。
扉の中はスネイプ教授の薬学室で、薬品棚の前に教授がいる。
「スネイプ教授!」
私は嬉しくて、教授の名前を呼びながら走り寄った。
振り返った教授は優しい眼差しで私を見つめる。
「怖かった…」
そう言いながら、私は教授の広い胸に飛び込んでギュッとその体を抱きしめた。
教授も私を抱きしめてくれる。
大好きな香りと優しい温もりで私の心は幸せに満たされた。
もっともっと教授にくっついていたい…
「名無し、早く私に気づいて」
突然、スネイプ教授では無い、でもどこか聞き慣れた声がして私は咄嗟に体を離した。
目の前に立っていたのはスネイプ教授ではなく、私だった。
「私を見て」
パチっと目を開けると見慣れた天井があった。
全部夢だ。
私はベッドから身を起こして今見た夢を思い出す。
スネイプ教授と私。
私が私に言った言葉。
私の憑き物と何か関係があるのだろうか?
急にスネイプ教授に抱きついた感触を思い出し私は赤面した。
胸がギュッと苦しくなって心臓の音が大きくなる。
急に胸の奥から今まで感じたことがない感情が湧き上がって、私はシャツの胸元をギュッと掴んだ。
大広間に行くと、私の席の横に見慣れぬ男性が座っていた。
新任の教授だろうか。
生徒も他の教授もまだ来ておらず、一人きりで座って本を読んでいる。
「…おはようございます。」
私は彼に近づくと挨拶をした。
「おはようございます!あっ!」
私の顔を驚いたように見つめながら、男性は椅子から立ち上がる。
「…?新任の先生でいらっしゃいますか?」
彼が余りにも私の顔を見つめるので気まずくなって質問した。
「ああ、既にご存知かとは思うが…私はギルデロイ・ロックハート…ロックハート教授と呼んでくれたまえ。闇の魔術に関する防衛術の担当だ。君は…」
「私は名無しと申します。
全ての授業で助手としてお手伝いさせていただいておりますので、ロックハート教授も必要であればいつでもお声かけください。」
名無し!!とロックハート教授が私の名前を呼んで、爽やかな笑顔を向けた。
「私の著書をお持ちであれば、いつでもサインをしよう!
お持ちでなければ全冊差し上げるので後で私の研究室に来たまえ。」
この人は有名な作家なのだろうか?
「私は日本から来ましたのでこちらのことには疎くて…存じ上げずすいません。
是非、読んでみたいです。」
ロックハート教授は私の手を取った。
「日本人はみんな君みたいに美しいのかな?」
「えっ?」
「艶やかな黒髪、大きく輝く漆黒の瞳、可憐な笑顔…世界中冒険と戦いをしてきた私だが、君のような素敵な女性には初めて会ったよ。」
何だか自分の言葉にうっとりしたようにロックハート教授が熱っぽい視線を私に向ける。
気まずくなって手を引っ込めようとしたけれど、がっしり掴まれて離してくれそうにない。
「お世辞がお上手ですね…」
「お世辞ではない!君は本当に美しい。是非お近づきになりたいものだ。まずはお友達から…」
そう言いながら、ロックハート教授の顔が私の手に近づく。
何をする気なの?!
「何をしているのですかな?」
ロックハート教授の唇が私の手に触れる直前に、私の背後から聞きなれた声が響いた。
私はロックハート教授の手から逃れて後ろを振り返る。
「スネイプ教授!」
ホッとして咄嗟に教授の後ろに身を隠すように移動した。
「これはこれは。おはようございます。スネイプ教授。」
難しい顔をするスネイプ教授にロックハート教授が爽やかな笑顔を向ける。
スネイプ教授は無言でロックハート教授を見た後、私を見た。
「名無し。午前中、予定が無ければ私の授業の助手をお願いしたい。」
「もちろん…」
「名無し!私の授業の助手をお願いしたい!」
私の声にかぶせるようにしてロックハート教授が会話に入ってきた。
「今日は授業の初日なので、君が手助けしてくれると大変助かるのだが…
名無しをお借りしてもよろしいですか?スネイプ教授?」
スネイプ教授とロックハート教授は無言でどちらも視線を外さない。
「ロックハート教授、スネイプ教授の授業準備をしてからすぐに向かいます。
スネイプ教授、この後すぐに研究室に行きますね。」
私は席に着くとパウンドケーキを一切れ口に入れて、紅茶で飲み込んだ。
「では、お先に失礼します。」
二人を残して逃げるようにその場を後にした。
作業台に材料を並べていく。
ロックハート教授とスネイプ教授はかなり相性が悪そうだ。
あの二人を一緒にすると良くない…そんなことを考えながら薬草を小分けにしていく。
その時バンッと勢いよく扉が空いて、スネイプ教授が足早にやって来た。
「そこに座りたまえ。」
教授は私に向かって杖を一振りする。
体がひとりでに動いて、椅子に腰掛けた私の前にベジタブルサンドとチョコチップクッキー、ロイヤルミルクティーが用意された。
「パウンドケーキ一口では到底足りないだろう。」
到底足りないとはどう言う意味だ!!と心の中で突っ込むも、どれも私の大好物でとても美味しそう。
遠慮なくいただことにした。
「いただきまぁす。」
食べる前に私は胸ポケットから紙のヒトガタ三枚を取り出し、フッと息を吹きかけた。
三枚は意思を持ったようにふわりと動くと、それぞれ私の代わりに薬草を分け出した。
「スネイプ教授、私、昨日…夢の中で憑き物に出会ったかもしれません。」
もぐもぐと口を動かしながら、私は教授に話しかけた。
ヒトガタは忙しなく用意を続けている。
「…その話は今夜聞いてやろう。先に食べたまえ。」
今日の教授は優しい。
夢のこともあり、何だかつい教授を見つめてしまう。
その時胸がざわざわして、何かが爆発しそうな気分が湧き上がる。
「名無し!」
背後の扉が勢いよく開き、満点の笑顔を浮かべたロックハート教授が大股でこちらにやってきた。
私もスネイプ教授も目を丸くした。
「遅いので迎えにきましたよ。さぁ、行きましょう!」
ポカンとする私の腕を掴むと、では、とロックハート教授が歩き出す。
「…!スネイプ教授、ご馳走様でした!」
そう言い終わらない内に、ロックハート教授を睨むスネイプ教授も突然湧き上がった私の気持ちも姿を消してしまった。
重たい…
ロックハート教授のサイン入り著書で前が良く見えない。
遠慮なく持って行きなさい!と爽やかな笑みを浮かべ、ついでにキスもしてあげましょう!と迫ってくる教授をうまくかわし私はひとり廊下を歩く。
大変失礼ながら、あんなロックハート教授でも著書を見るとその実力は凄そうだ。
あの爽やかな笑顔が闇の魔術と戦い、勇ましく変わる様を勝手に想像して少し見直した。