教授
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鼻歌を歌いながらわしゃわしゃと豪快に髪を拭いていたらドアをノックされた。
ノリノリの私は何も考えずにハイハーイとドアを開けて後悔した。
「…おはようございます…」
ラフすぎるTシャツにジャージ、首には白いタオルをかけて髪の毛は半乾きの私を見てスネイプ教授もたじろいている。
最悪!今からきれいにメイクしておしゃれするつもりがっ!
この格好、銭湯帰りじゃない!!!
「我輩のコートを返せ。早くしろ。10分だけ待ってやる。」
「あっ、えっ?!あ、はい。すぐお返しします。」
壁のハンガーからコートを取って教授に手渡す。
「どこかに行くんですか?」
「外は寒いぞ。無いと思うがスカートはやめろ。いつもの格好で構わん。
10分追加して20分やる。遅れた場合は罰則だ。」
そう言うとバタンっと目の前のドアが閉まった。
今日の為に用意していたワンピース…。
私はクローゼットからジーンズと、ネタでトンクスがくれた凄い編み込みのクリスマスセーターを取り出した。
セーター全体がクリスマスの街の編み込みになっていて、首回りに編みぐるみの雪だるまがネックレスみたいに10個くっついている。
「…これ着て教授を笑かしてやるか。」
教授は今日も全身黒だろうから、これくらい派手な私が横にいて明るくしてやろう!
軽くメイクして、いつものピアスもつける。
帽子とマフラーと手袋、ブーツを着用すると私はスネイプ教授の元に急いだ。
名無しが歩くと首回りの雪だるま達が一斉に跳ねた。
「どこに行くんですか?
スネイプ教授のクリスマスの過ごし方楽しみ!!」
言いつけ通り、完全防備した名無しが帽子から顔だけ出して嬉しそうに笑った。
24日に外出など、何年ぶりだろうか。
毎年この時期は自宅に篭って読書をしている。
毎年のクリスマスの過ごし方のわけなかろう…。
ド派手でクソダサいセーターがやけに似合っている。
恥ずかしげもなくよく着用できたものだ。
しかし意外に似合っていて、少しだけ笑いそうになる。
まぁ、今から人混みに行くのだからはぐれなくていい。
「よし、ここからは姿くらましで行く。」
ほれっと腕を出したら、ゲーッと嫌な顔をされた。
「…吐くなよ。」
「わかってます!」
腕をギュッと掴んで目をつぶる名無しを見てスネイプの顔に自然と笑みがこぼれる。
バチっという音と共にふたりの姿が消えた。
目の前に巨大な観覧車とジェットコースターのレールがそびえ立つ。
見渡せばどこもかしこも人が沢山!
こんな可愛い場所見たことない!!!
巨大なアーチにはキラキラパチパチ弾ける文字で、『Magic Winter Wonderland』と書かれている。
あまりにも可愛いその場所に感激して、上を向きながら大口を開けていたらしく、手袋をつけた大きな手が顔の上に乗ってきた。
「!!!」
「ほら。通行人の邪魔だ。行くぞ。」
「スネイプ教授!あれ何ですかっ!!」
「クリスマスマーケットが出ているのであろうな。…行ってみるか?」
「行きましょ!いい香りがします!」
甘い香りや、何かを焼く香ばしい香りがマーケットの辺りから漂ってくる。
そう言えば、教授が急かすから朝ごはん食べてない!!
知らない間に早足になる私の首元にいる雪だるまを掴んで教授が眉間に皺を寄せる。
「先々行くな。はぐれてしまう。」
そう言いながら肘を曲げて私の方に突き出した。
腕を組んで良いという意味だろうか?
急に胸がドキドキする。
「…では、お言葉に甘えて…」
ギュッと腕を掴んだら教授のいい香りが鼻をつく。
こんなに沢山、いろんな香りが混ざっている場所でもすぐにわかる教授の匂いに私は安心する。
「…好きそうなものが出てきたぞ。」
「えっ?!あ!!」
教授に言われて目をやると、蜂蜜酒、マルド・ミードと書かれた可愛らしいログハウス風の店がある。
甘い香りと白い湯気が立ち上っている店には行列ができていた。
「まずあれ買いましょう!」
有無を言わさぬ勢いで私は教授を引っ張り最終列に並ぶ。
「バイキング・ブラッドにしますか?」
私は店の定番メニューを指差す。
チェリー酒が入っている蜂蜜酒だ。
「我輩は構わんが…名無しは蜂蜜入りアップルジュースのほうが良いのでは?」
「…子供扱いやめてください。ワインも飲めます…。」
スネイプ教授を睨んだら、鼻の頭をふにっと掴まれた。
もう、子供扱いして!
暖かい蜂蜜酒とチーズたっぷりのホットサンドを頬張りながら私は次は何を買おうか辺りを見回した。
「ああ!揚げたてチュロス!おいしそぉ〜!!」
「後で買えばいい。先にそれを食べてしまえ。」
見慣れた教授の呆れ顔が私を見下ろす。
「ここのクリスマスは日本と少し違いますね。」
「ほう。どのような違いが?」
「家族連れが沢山いるし、とにかく華やかで楽しいです。
日本はクリスマスよりお正月のほうが本番って感じでしょうか。
日本でクリスマスは家族と過ごすより、恋人達の日みたいな認識ですね。」
そう言ってスネイプ教授の顔を見て私はハッとした。
恋人達の日…。
言葉にしたら急に恥ずかしくなったて顔が熱くなる。
「家族で過ごすのは素敵です!うん、本当に!」
訳がわからない事を口走りながら私はチーズサンドの最期の一口を口に入れた。
教授は私をチラッと見てまた前を向いた。
「あっ!メリーゴーランド!」
視線の先に本格的な遊園地が見えて私は安堵した。
楽しいメロディーとキラキラした照明。
本当に動いている馬や馬車。
子供だけでなく、大人の魔法使いも楽しんでいる。
「…乗りま…せんよね?」
「いかにも。」
「私は…乗ろうかなぁ?!」
「好きにすれば良かろう…」
それじゃぁ…とニヤニヤしながら乗り場に行こうとしたら、ドンっとお尻に衝撃を受けて私は振り向いた。
「うっ…グスッ…」
振り変えるとそこに小さな男の子が立ってベソをかいている。
炙ったマシュマロが沢山刺さった串を持っている手が私のお尻に激突したのか、いくつか潰れて私のジーンズから糸を引いている。
「僕、大丈夫?」
もしかして私がお尻を激突させてしまったのだろうか?
私は慌てて男の子の前にしゃがみこんだ。
「…ママ…」
男の子は私の顔を見て、目にいっぱい涙を貯めた。
「親とはぐれたのか?」
スネイプ教授が仏頂面で男の子に尋ねると、ビクッと怯えてポロポロ涙を流す。
「大丈夫だよ!怖くないよ?
ママはどこに行ったの?」
教授をジロっと睨んでまた男の子に視線を合わせる。
「…わかんない。振り返ったらいなかった…」
小さな顔の大きな瞳からいく筋も涙が伝う。
「いいもの見せようか?
ママをすぐ見つけてくれる魔法。」
私は男の子の頭を撫でて悪戯っぽく尋ねてみた。
男の子は不思議そうな顔をして一瞬泣くのをやめた。
(玉、おいで)
そう言うと、セーターの中から玉がヒョコッと顔を出す。
男の子はびっくりして目をまん丸にさせた。
「この子がすぐにママを連れて来てくれるからね。
少しだけ我慢してね。」
玉は男の子に巻きつくと頬ずりしながら尻尾を発光させると勢いよく空に舞い上がった。
「親を探しに行かせたのか?」
「もう見つけたでしょう。」
私は男の子を抱き上げながらスネイプ教授に笑う。
「お尻でマシュマロ食べちゃってごめんね。」
男の子は私の顔を見て困ったように微笑んだ。
その後すぐに玉が魔女の袖を掴んで飛んできた。
私は男の子の家族に手を振るとスネイプ教授に向き直った。
「狐は随分と優秀だ。
教師などやめてその道に進んだらどうかね。」
「その道とは…探偵とかですか?」
スネイプ教授は探偵姿の私を想像したのか、小馬鹿にしたように笑った。
「教授…申し訳ありませんがお尻のマシュマロを確認してはもらえませんでしょうか?」
「……。」
後ろを向けと言わんばかりに手をシッシッっと動かす。
恥ずかしいけど仕方ない。
見えないんだもん…。
無言で呪文を唱えたのかお尻がジワッと熱くなってすぐ元に戻った。
「ありがとうございます…へへへ」
「…意外に立派だな」
「…?!ええっ?!何、何ですか?!」
お尻のこと?!何?!
教授は私を放ってスタスタと歩き出した。