教授
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振り返った名無しの瞳を見てシリウスは固まった。
紫色の瞳を持つ名無しはいつにもまして妖艶で不自然なほど美しい判明、何を考えているのかわからない。
以前に電車で見た狐がまた現れたかと思った瞬間、瞬きをした名無しはいつもの名無しでシリウスは胸を撫で下ろした。
「好きな時に玉の瞳を借りれるようになったんですよ。」
ガラスに伝う雨粒を眺めながら名無しが言う。
「自分の目と狐の目は何か違いがあるのか?」
「…まぁ…いろいろですね…」
珍しく名無しは言葉を濁す。
シリウスも珍しく空気を読んで話題を変えた。
「リーマスはトンクスと一緒に来るんだとさ。」
名無しの顔にいつもの笑顔が咲いた。
「あの二人、いい感じですよね?」
「そうかもな。」
「お願いしてもいいですか?」
「ん?」
笑顔の名無しが何かを言うために体をシリウスに傾けたら、暖かく甘いアップルパイの香りがする。
今日の彼女もクリスマスディナーだと言うのに飾り気がない。
香水をしてるとも思えない。
彼女自身の香りだろうか。
このまま抱きしめて首筋に顔を埋めながら胸いっぱいこの香りを堪能したい気分だ。
「話聞いてますか?シリウス?」
大きな瞳が自分を見つめる。
「ああ、わかったわかった。
リーマスとトンクスをくっつけたいんだな?」
「そうです!」
俺は君とくっつきたいよ…シリウスは横で楽しそうに笑う名無しを見ながら心の中でそう呟いた。
「「乾杯!!」」
四人の声が揃ってグラスがいい音を立てた。
トンクスの服装がいつもより女の子らしくて凄く可愛い。
私は…何だか訳が分からず学校を飛び出したものだから、シンプルなニットにジーンズといつもの色気無し女気無しの格好だ。
まぁ…構わないけどさ。
机の上にはキレイな前菜が並ぶ。
ワインが用意されて、私も一口。
お酒は飲めるけれど、やっぱり食事の方がいい。
ルーピン教授の横にトンクス、私の横にはシリウスが座る。
いい感じになってきたら、シリウスを連れ出して私達は消えよう。
「さぁ、食べましょ!」
トンクスが私を見てウインクをする。
ルーピン教授とシリウスが私達女性の分をお皿に取り分けてくれた。
ああ…朝から落ち込んでたけど、このお料理を見たら少しだけ元気が出てきた気がする。
「名無し、今日は何してたの?」
いきなりトンクスが私にイタイ質問をしてきた。
「…えーとね、朝食食べて気がついたらランチの時間になってて…」
三人は声を出して笑う。
「名無しは食べても食べても細いから構わないわ。」
トンクスが優しくフォローしてくれた。
「食べた分がこことここに付くといいんだけどな。」
シリウスが胸とお尻を指差したら、ルーピン教授がやれやれと言う顔をする。
「…セクハラ親父!」
私とトンクス二人してジト目でシリウスを凝視してやった。
お料理は美味しいし、四人でたわいもない話をしているとスネイプ教授のことを少しだけ忘れていられる。
今日、ここに誘ってもらって本当によかった。
また元気になって、明日は笑ってスネイプ教授と一緒に過ごせる。
元々叶う恋じゃないんだから。
向かいの二人を見ていると、ルーピン教授の言葉一つ一つに反応するトンクスが可愛い。
そろそろ二人きりにしてあげたほうが良さそう…
私は気持ちよさそうにワインを飲んでいるシリウスの太ももをツンツンと突いた。
「お?何だ?名無し?!」
酔っ払っているのか、いきなり肩を抱かれて私はヒエッ!と小さく声を上げた。
「ちょっと!近いです!!」
シリウスの頬を片手で押してやったら、全然動じてないのか更に顔を押し付けてくる。
「こらこら、シリウスやめないか。
名無しが困ってるよ。」
「シリウス!名無しから離れて!」
「大丈夫、二人はそのままで。
私、ちょっとシリウスを外の風に当ててきます。さぁ、行きましょう!」
そう言った私にシリウスはウンウンと顔だけを動かす。
私はトンクスにだけわかるように小さくウインクするとフラつくシリウスと二人で店の外に出た。
店の向かい側が小さな広場になっていて休憩するにはちょうど良いベンチが並んでいる。
私はシリウスをそこまで引っ張って行くと一緒に腰掛ける。
雨はとっくに止んでいて、キンと冷えた空気が辺りを包んでいた。
「名無しもう一度…紫の瞳が見たい。」
酔っ払っているのかシリウスが突然そう言い出す。
「嫌ですよ。お水でも買ってくるので待ってて下さい。」
そう言って立ち上がろうとしたらガバッと抱きしめられる。
いつものシリウスの香りにワインの香りが混ざって、その大人の香りにドキリとした。
「ちょっ!シリウス…どれだけ飲んだんですか…離してください!」
「紫の瞳が見たい…見せてくれるまで離れないぞ!俺は!」
駄々っ子のような態度で私を抱きしめながら嫌々をする。
全く…しょうがない人だな…
「わかりました。見せるので離れて下さい。」
そう言って頭を優しく撫ぜたらシリウスは素直に体を離してくれた。
「何故そんなに見たいんですか?」
「……」
シリウスは黙りこくって私を凝視している。
「…いきますよ。」
私は私の中の玉に声をかけると瞬きをした。
夜の景色が紫色の靄がかった世界になる。
シリウスの顔も紫のフィルター越しに見える。
「どうですか?満足しましたか?」
その時、目の前のシリウスが私の両手を自分の両手でギュッと掴んだ。
お互いの小指と小指が触れる。
『もっとこっちにおいで。』
上半身裸のシリウスがベッドの中で私を呼ぶ。
何故か可笑しくて、くすぐったくて私は身をよじって逃げている。
『こら、逃げるな。』
『もう起きて支度しなきゃ。』
『もう少しだけ…いいだろう?』
グイッと引き寄せられて、シリウスの顔が私に近づいて、何故だか私はそれがとても愛おしい…
「!!!」
びっくりしすぎてベンチから飛び上がったらバランスを崩して後ろにひっくり返ってしまった。
さっきまで酔っ払っていたシリウスが私を見て唖然とした後、笑い出した。
「名無し大丈夫か?!」
ジワリと私の左手が熱くなって視線を落としたら金色の糸が一本、シリウスに向かって斜めに伸びている。
それを辿って行くと、さっきまで何も見えなかったシリウスの左手の小指に金色の糸が現れて私の糸と繋がった。
…嘘。
私の運命の相手はシリウス?!
慌てて左手に視線を戻す。
もう一本、しっかりと金色の糸が遠く遠く暗闇に向かって伸びている。
「オイ!大丈夫か?!」
頭上から大きな声がして私は我に帰った。
瞬きをする。
「あっ…痛っ!お尻が…」
地面に打ち付けたお尻がヒリヒリと傷んだ。
「あははは。びっくりするじゃないか。
お陰で酔いが冷めたよ。さぁ。」
シリウスが手を差し出したけれど、さっきの映像が蘇って私は自分で立ち上がった。
「もう!いきなり手を掴んだらびっくりするじゃないですか!!」
私は恥ずかしさを隠すようにシリウスに食ってかかった。
軽く叩いてやろうと右手をあげたらギュッと、でも優しくその手を掴まれた。
「シリウ…」
「好きだ。」
…え?
急に真面目な顔でシリウスが私に言う。
もう何がなんだか、思考が追いつかない。
「友達からでいいんだ。
これから少しずつで構わない。
俺を好きになってくれないだろうか。」
シリウスがこんなに真剣に気持ちを伝えてくれているのに、私は何故だかスネイプ教授のことを考えてしまう。
スネイプ教授…会いたい…
「…名無し」
スネイプ教授の声が聞こえた気がした。
私を見つめていたシリウスが私の背後に視線をやって、突然怖い顔をした。
その形相に思わず私も後ろを振り返った。
フワッと私の体が一瞬だけ中に浮く。
その後視界が闇に包まれる。
私の好きな図書館と薬草と、薬品の香り。
暖かい左手が私の背中に回って、黒いローブが私を包む。
気がつくと私はスネイプ教授の腕の中にいた。