教授
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私は芝生に座って生徒達を眺めていた。
大勢の生徒達の間を行き交う無数の糸がキラキラ眩しい。
糸を見たいと願うと、視界が紫色に変わる
。
部屋で鏡を見てみたら、私の黒い瞳が紫色に変わっていた。
私の瞳を通して玉が見ている世界。
よく考えると、この能力は恐ろしい。
人の運命を見てしまうなんて…。
でも最近気がついたことがある。
生徒達の小指には大抵、二、三本の糸が絡み付いている。
もちろん糸が無い子、一本だけの子もいるけれど、大勢の生徒は沢山の糸を持っていた。
大人を見たときは浮気でもしているのかと思ったけれどそうではなく、糸の数は可能性を表しているのではないだろうか。
未来の可能性。
運命の相手は自分の選択で決まる。
複数糸を持つ者は、選択によって未来が変わる。
その時始めて、小指の糸は一本になるのだ。
…私の小指に二本の糸があった。
誰に繋がっているんだろうか。
薬学室でこの能力を使えば、スネイプ教授の糸が見えるはず。
でもそんなの見れるわけない。
誰にも言えない。
言えばきっと誰もが運命の相手を知りたがる。
トンクスに言いたい。聞いて欲しい。
でもトンクスは知りたがるだろう。
ルーピン教授と自分の糸が繋がっているのか。
もし繋がっていなかったら?
この能力はむやみやたらに使っていいものじゃない。
知り合いの運命を見るなんて、絶対やってはいけないんだ。
目を閉じてまた開けると、紫色の風景はいつもの色を取り戻した。
糸は切ったり、結んだりもできるのだろうか?
何だかわからないけれど、簡単にできてしまう気がする。
きっとできる。
私の直感と玉の心がそう私に確信させる。
他人の運命を変えることができる。
スネイプ教授の糸が私に繋がっていなかったら、切って繋げればいい…私の小指の糸と…。
そんな事を考えてしまう自分が恐ろしい。
その時、不意に後ろから名前を呼ばれ振り向くとルーピン教授が優しい笑顔で立っていた。
「今度は自分で行かずに私に言ってくださいね。温室には毎日行ってるんですから。」
スプラウト教授から脱狼薬の材料を受け取って私達は並んで歩いた。
「プライベートな物まで君にお願いできないよ。」
「ルーピン教授のお願いならお安い御用です。」
「…言ったな?」
「えっ?」
ルーピン教授が意味深な笑みを浮かべて私を見る。
「ホグワーツに残るなら、クリスマスディナーに来てくれないか?
あ、いや、君ももちろん予定はあるだろうから、クリスマス当日って訳じゃない。」
ルーピン教授、私を誘う前にトンクスを誘って!と私は心の中で思う。
じっとルーピン教授の顔を見ていたら、気まずそうに頭をかいた。
「…その、トンクスも来るんだ…」
「トンクスも来るんですか?!」
「そうなんだ。名無しも誘おうと二人で話しててね。
今日あたり連絡があるんじゃないかな?」
トンクスの話をするルーピン教授の瞳がいつもより優しくて私は嬉しくなる。
その時、木枯らしが私とルーピン教授の間を抜けて行った。
「ふふ、ルーピン教授じっとしていてください。今の風で葉っぱが髪の毛についてます。」
柔らかそうな茶色い髪に手を伸ばしたら、自分でも髪を触ろうと伸ばしたルーピン教授の左手と私の手がぶつかった。
『リーマス!』
トンクスが泣いている。
でも悲しくて泣いているんじゃない。
トンクスは嬉しくて泣いてるんだ。
力強くルーピン教授がトンクスを抱きしめた。
私の知ってるトンクスと少しだけ感じが違う。
『…私、妊娠したの!』
「えっ?」
大声を上げて飛び退いた私を驚いたようにルーピン教授が見つめた。
「名無し?大丈夫かい?」
頭の中の映写機がブツンと切れて、私は呆然とした。
玉の力だ。
「あ…ごめんなさい。玉が体の中で回転したので驚いてしまって。この頃力が強くてたまにあるんです。」
「そうか。いいことじゃないか。」
ルーピン教授が微笑んで歩き出す。
妊娠したってどういうこと?
つい最近、また振られたってトンクス言ってたよね?
二人はまだ付き合ってないよね?!
今のは何?!
ルーピン教授の背中を見ながら私は胸元をギュッと掴む。
とにかくすぐにトンクスに連絡しないと!
『トンクス、ルーピン教授から聞いたよ?
クリスマスディナーだって?』
【私も今連絡しようと思ってたとこ!】
ヒトガタに浮かぶ文字が今日はゆっくりに感じてもどかしい!
でもここは慎重に聞かなきゃ。
私の胸はドキドキ高鳴った。
『私がいたらお邪魔でしょ?』
【名無しを誘う前から邪魔者がいるの!!】
『どういうこと?』
【シリウスも来るの】
ああ…そういうことね。
『シリウスをあなたとルーピン教授から遠ざければ良いわけ?』
【親友でしょ??】
『二人っきりになったら何する気?』
【もちろん告白のリベンジ】
この文面からして、二人はまだ付き合ってない。
『はいはい、親友さん。今度特大パフェ奢りね!』
【はいはい、親友さん】
…無いとは思うけど…一応ね。
『今日すごく寒いけど、体調崩してない?』
【元気すぎてヤバイ】
『今年の風邪は吐き気を伴うとかマダムが医務室で話してたから』
【吐き気?無い無い!逆に食べ過ぎてヤバイ笑】
まだわからないけど、きっと妊娠もしてない…はず。
ルーピン教授が付き合う前の女性に対して無責任な行動を取ると思えない。
【23日の夜。楽しみにしてるからね】
『告白が成功して、24、25日も二人が楽しく過ごせるように私とシリウスで頑張ります』
【 ♡(´ε` )】
会話を終えると私は安堵のため息をついた。
はぁ~……。
そのままボフっとベッドに倒れこむ。
「…じゃ、あの映像は何なのよ…」
天井を見詰める。
そういえば私が見たトンクスは今より落ち着いて大人っぽく見えたな…。
「…可能性の未来?!絶対そう!」
私は興奮して体を起こした。
ベッドから飛び降りて部屋をぐるぐる回る。
糸が絡み付いているルーピン教授の左手に私が触れたから相手の未来の一つが見えた。
待って?!…ってことは、ルーピン教授とトンクスの糸は繋がってるってことじゃない!!!!
「きゃぁぁぁああああぁぁぁ!!!」
私は嬉しくなって部屋中を跳ね回った。
凄い!素敵!最高!
しかも赤ちゃんまで!!!
でもこれは絶対言っちゃだめ。
トンクスとルーピン教授が選択することだから。
私が決めちゃだめなんだ。
…でも嬉しい。
嬉しさを隠せなくてニマニマしていたら、胸がジワッと熱くなった。
胸に触れると玉が飛び出した。
私の体に巻きついて甘えてくる。
「玉、またひとつ成長したね。
でも、これはむやみに見せないで。私がお願いした時だけにしてね。」
ふわふわの尻尾が私の頬を撫ぜる。
「でも…嬉しい。見せてくれてありがとう。」
私は玉の顔を抱きしめてグリグリじゃれついた。