教授
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
レポートを提出してから、私と教授はいろいろな可能性を話し合いながら、薬の調合も同時に始めた。
今日は一度調合したものを服用しようと夕食後、薬学室に篭っていた。
教授は大鍋に謎の材料を入れてかき混ぜている。
においと色が凄い。
これを私が飲むのだと思うと気が重い。
「教授、これって味は美味しいんでしょうか…?」
口の端だけ釣り上げるようにしてスネイプ教授が笑う。
ブヨブヨとした紫色の物体を入れると、気味の悪い湯気が立ち上がった。
それをスプーンですくって、ホレと言わんばかりに教授が私の目の前に差し出した。
思いっきりしかめ面をして、私はスプーンを受け取る。
「…死ぬことはない。少しショック症状がでるが、じきおさまる。」
口に近づけると、苦い香りがする。
「…いただきます…」
鼻をつまんで、口にスプーンを入れた。
粘液質の薬品が喉にどろりを流れ込んでくる。
鼻をつまんでいるのに生臭い香りがして胸がムカついた。
うまく飲み込めない。
それでも手で口を押さえてゴクリと無理に飲み込んだ。
その瞬間、目の前で何かが破裂した。
視界に星が飛ぶ。
ぼんやりと黒い影が私に覆いかぶさる。
私はそのまま意識を手放した。
気がつくと医務室のベッドの上にいた。
「気がつきましたか?」
「ポンフリー先生!」
慌てて体を起こすと、吐き気がして私は身を屈めた。
ポンフリー先生が慌てて水をくれる。
私はそれを飲み干した。
「今何時でしょうか?!」
「9時ですよ。ここに運ばれてから1時間経ちました。」
「もう大丈夫なので行ってもいいでしょうか?」
「スネイプ教授と新薬の開発もいいですが、人体実験は程々にしなさい。」
私は苦笑いしながらポンフリー先生にお礼を言うと、スネイプ教授の元へ急いだ。
「材料のどれかにアレルギーがあるのだろう。ここまで過剰に反応したのは名無しが初めてだ。」
「笑ってませんか?教授?」
私はジト目で教授を睨む。
「苦い、まずい、飲んだ瞬間気絶。しかも私の体には何の変化も無し。」
「医務室に運ぶのは重かった…」
痩せろと遠回しに言われて私は赤面した。
「次からはベッドを置いてから人体実験します!」
「むくれていないで、紅茶でも飲みたまえ。」
シナモンの香りの紅茶を目の前に出されて怒りを忘れて飛びついた。
「私、シナモン大好きです!」
教授はやれやれという顔をして私のレポートを広げた。
「一つの仮説だが…」
私は教授の横に椅子ごと体を寄せる。
教授は少ししかめ面をしたけれど何も言わないのでそのままにした。
「宿主の精神の成長と共に現れるのではないだろうか?
17歳のころ、今まで感じたことのない感情が芽生え、君の精神が少し成長した…。」
「待ってください、では私は17歳のころから精神年齢がストップしている訳ですね。その仮説からすると。」
教授は笑いを堪えるように手で口元を抑える。
「ふざけないでください!」
私は教授の肩に自分の肩をコツンと当てた。
その時、ふわりと揺れたスネイプ教授の髪から薬草の香りがした。
急に大人の香りがして、私の心臓がドキンと跳ねる。
…ジワリ
と、微かな熱が生まれる。
「?!」
びっくりしたようにシャツの胸元をつかんだ私を教授が怪訝そうな表情で見つめた。
「まだ気分がすぐれませんかな?」
「あ、いえ、大丈夫です。」
熱はすぐに消えた。気のせいだろう。
「さっきの話ですが、17歳の頃、教授の言う通り私が今まで知らなかった感情が芽生えたとして、それって何だと思います?」
「…兄弟の仲は良いのかね?」
「はい。とっても!兄さんが大好きです。」
「幼馴染と兄上の関係は?」
「…今は…恋人同士です。でも、17歳のころはただの友達同士でした。」
教授は私の顔を見つめて黙り込んでしまった。
なんだか変な空気になって、私も黙り込んだ。
自室で名無しのレポートに目を落としながらスネイプはある仮説を立てた。
17歳の頃、名無しが感じたもの。
それは嫉妬では無いだろうかと。
10歳年が離れていると言う兄と幼馴染の微妙な恋愛関係を名無しが感じ取った。
兄も幼馴染も自分を置いて二人きりの世界に行ってしまう…その考えが嫉妬となって胸に残った。
それが憑き物を誘発する原動力になったのではないだろうか。
ただ、兄のことも幼馴染のことも心から愛している名無しはすぐ嫉妬の感情を消し去った。
だから憑き物は消滅した。
そう考えると辻褄は合うが、負の感情で現れる憑き物はかなり危険であるのは確かだ。
スネイプは名無しを思う。
美しい横顔、自分を見て微笑む姿、紅茶とクッキーを嬉しそうに食べるあどけない表情…。
黒い感情を爆発させながら、体内から憑き物を出す名無しを想像できない。
もし嫉妬が正解ならば、私は協力できない…協力したくない。
名無しにはいつも笑っていて欲しいと思う。
柄にも無くそんなことを考え、ハッとしてレポートを閉じる。
裏表紙にコミック風の名無しの似顔絵が描かれているのに始めて気がついた。
彼女の似顔絵には吹き出しがついている。
You are special to me. Thank you!
あなたは私の特別。ありがとう。
スネイプはドキリとする。
これでは愛の告白ではないか。
だが、少し考えて深い意味はないだろうと思う。
私を手助けしてくれてありがとうと言う意味合いだろう。
全く、もう少し語学を勉強したほうがいい。
スネイプはその吹き出しを指でなぞった。