教授
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「もうダメです!ここまで来てます…」
名無しが顔のすぐ下に手を置いて青い顔をした。
「何も考えられない…」
オエっと舌を出して自分の横を歩いている。
「…落ち着くまで散歩でもするか…」
「散歩したいです!やったぁ〜」
自分の一言一言に嬉しそうな反応をするこの助手を見ているとくすぐったい気持ちになる。
「散歩しながら食べるスナックでも買ってやろうか?」
「…ローブに吐いて良いならお願いします…」
「チョコレートファウンテンで子供達に囲まれて大人げなくはしゃいでいたな。
我先に苺にチョコレートをつけていた所を目撃して我輩は…」
「いやいやいや!そんな事しませんよ!!子供優先に決まってるでしょ?!」
鼻の頭に皺を寄せてスネイプを睨みつける表情を見ながら、ころころ表情を変える名無しを可愛いと思う。
リリーに会えたら、リリーと話す機会があったら…そんな事ばかり考え願っていたはずなのに…見たかったリリーの笑顔を見たはずなのに、感傷に浸る筈の気持ちは今横にいる名無しに向いている。
不思議な事に楽しい気分になっているのだ。
店を出てからもスネイプ教授の横顔をそっと観察しているけれど、その表情から心の中までは読めない。
リリーさんの事をまだ考えている?
私と一緒にいるけれど、心の中はリリーさんと一緒にいるのかもしれない…そう思ったら鼻の奥がツンとして私は慌てて空を見た。
夕焼けの空はオレンジ色から黒のグラデージョンになっていてとても美しい。
バッグの中に包装されたカフスボタンが入っている。
今渡してしまおうか?
こんなタイミングで渡されたら教授は困る?
少しでも私を心に入れて欲しい…
「名無し。」
「えっ?はい!」
急に名前を呼ばれてスネイプ教授の方を向いた。
「空を見上げながら口が空いている。閉じたまえ。
夕焼けを見ながらオレンジジュースの事でも考えていたのだろう。」
「…!!」
意地悪に笑う教授の顔を見て私は脱力した。
「ジュースじゃありません!ミートスパゲッティーです!!そこの屋台のドーナツ奢ってください!!」
まだ食べるのかね?!と驚く教授の右腕を掴んで私は歩き出した。
「…スネイプ教授、また二人で出かけましょうね。」
「……。我輩は暇ではないのだが…」
「またまたぁ!今日楽しかったでしょ?」
教授は眉をひそめて私を見る。
私がスネイプ教授を好きだと言って、この関係が壊れるのが怖い。
だからバッグの中のプレゼントは渡せない。
「ドーナツをそんなに抱えて、どれだけ大食らいなのだ。」
胸にバッグを抱きしめた私を見て教授が呆れたように言った。
何よ…人の気も知らないで…
夕日を背に教授が優しい笑みを浮べる。
そんな顔しないで。
優しくされるとどんどんあなたを好きになってしまう。
「あー!ルーピン教授のお土産買うの忘れましたぁ…」
「土産など奴に渡すな!」
「このドーナツあげてもいいですか?」
「それをよこせ!」
そう。この感じ。私はこの距離でいい。
スネイプ教授が大好きだから言えない。
私の頭に優しく置かれた教授の体温の温かさが少しでも長く続きますようにと私はただ願っていた。