教授
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名無しと言うべきだろうか…。
椅子を進めてみたら、『セブルス』としつこく指を指すのでスネイプは先に自分の席に着いた。
名無しの姿をした狐は嬉しそうに笑うとスネイプの方を向いた形で膝の上に乗ってきた。
首に手を回してきたものの、幸い足は閉じたまま、ぽふっと横坐りに来たのでスネイプは心底ホッとした。
狐の名無しはニコニコしたまま、永遠にスネイプの顔を見つめているので、どうしたものかとスネイプも名無しを見つめ続けた。
瞳は紫であるが、いつもと変わらずとても綺麗な顔をしている。
色が白くてきめ細かい。
細く黒い絹糸のような髪が時折さらりと動く。
中身は狐だということがスネイプを大胆にさせる。
そっと大きな手で名無しの頬に触れてみた。
狐の名無しは目を細め気持ちよさそうに頬を手のひらに押し付ける。
「セブルス…」
潤んだ瞳に熱がこもり、艶っぽい表情が浮かぶ。
ゴクリとスネイプの喉が鳴った。
日本の狐は美しい女になって人を化かすと名無しが言っていたが、こういうことだろうか。
このままでは何か始まってしまいそうで、スネイプは狐を膝からそっと下ろした。
「何か用意してやろう。」
名無しの好きなミルクティーとクッキーを目の前に置いてみたが、クンクンと匂いを嗅ぐだけで手をつけようとしない。
どうやら狐は何も食べないようだ。
「主人は大食らいなのに、お前は何もいらないようだ。」
スネイプは少し笑って、狐の頭を撫ぜた。
狐の名無しはスネイプの顔を見るてニコリと笑い返す。
なんだか面白くなってきたスネイプはキツネに質問してみた。
「今日は何故ここに来た?」
名無しはニコニコ笑うだけだ。
まだ言葉ははっきり話せないらしい。
「主人はもう寝たのか?」
にこりと笑う。YESということなのだろう。
「ルーピンとブラックとの食事会は楽しかったか?」
名無しに直接聞きたくて聞けないことを訪ねてみる。
狐の名無しは目玉を上に向けて、一瞬考えている。
「るーぴん」
名前を復唱する。
「しりうす」
スネイプはブラックをシリウス呼びしている狐を見て眉間に皺を寄せた。
名無しは自分に好意を寄せていると思う気持ちが微かに揺らぐ。
「……私を好きか?」
何だか急に気恥ずかしくなって、スネイプは背を向けた。
「…リリー…」
スネイプの胸がスッと冷たくなった。
今何と言った?私の聞き違いだろうか?
名無しを振り返ると、困った顔で微笑む名無しが立っていた。
「…今…何と…」
スネイプは名無しに向かって手を伸ばす。
指先を狐の名無しの手が優しくそっと握る。
体温を確かめるようにスネイプの指に自分の指を絡め嬉しそうな顔をした。
もう何度聞いてもリリーの名を口にする事は無く、ひとしきり手を握るとそっとスネイプの前まで狐はやってきた。
「…セブルス…」
どこか物悲しい紫の美しい瞳でスネイプを見つめそっと抱きしめた。
名無しは滑るように部屋から出ていこうとする。
「名無し!待ってくれ!」
後ろ向きのまま、ピタリと動きを止める。
「明日も…明日も待っている」
名無しはチラリと振り返りにこりと笑った。
何故リリーの事を知っているのか?
訳がわからずスネイプは呆然と扉を見つめ続けた。