「名無しとの映画どうだった？」
肉を一切れ口に入れたシリウスがリーマスを見て、机にフォークを叩きつけた。
「…友よ。俺はお前に感謝している。」
「何だい急に。」
「何故名無しを俺に会わせた？」
リーマスはジッとシリウスの顔を見た。
「…やっぱりな。名無しはスニベルスに惚れている。」
「…流石だね、友よ。僕は彼女が大切だ。わかるだろ？
スニベルスより君の方がお似合いだと思ってね。」
「わかってるじゃないか！！
スニベルス？！ハッ！！論外だね！！」
「やってくれるかい？」
「勿論！」
二人は顔を見合わせてニヤリと笑った。



名無しと出かけたあの日からスネイプは彼女のことが可愛くて仕方ない。
つい彼女を目で追ってしまう。
一度好きになった女性に対して自分はこれ程までに甘かったのだろうかと驚いてしまう。
何かの拍子に態度に現れてしまわないよう気をつけなければならない。

チラリと名無しを盗み見ると、ネビルロングボトムの焦がした鍋を覗きながら彼を励ましている所だ。
どうにもこうにも手のつけられなくなったドロドロの薬品とスネイプを見て、名無しがサッと何かを鍋に入れた。
ロングボトムはこちらをチラチラと伺いつつ、名無しに何か話しかけている。
名無しは唇に指を当てて静かにという合図をして笑った。
大方、スネイプ教授には内緒にとでも言っているのだろう。
ほんの少しマシになったのだろうか、名無しが素知らぬ顔で机を離れこちらにやってきた。
「教授、そろそろ薬品提出用の小瓶を配りましょうか？」
名無しがスネイプを見上げながら笑顔を向ける。
普段ならロングボトムを怒鳴りつけてグリフィンドールから原点してやる所だが、この笑顔に免じて気づかなかった事にした。

「ラベルの張り替えですか？」
「左様。ついでに古くなった薬品を整理したい。今夜薬品庫で作業する。」
わかりましたと名無しが無邪気に笑う。
薬品の整理？！そんな出任せが良く言えたものだと心の中で苦笑いする。
あるのはただ名無しとあの狭い薬品庫で共に時間を過ごしたいという、なんとも不純な動機だけだ。