教授
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何度ノックをしても反応しないルーピンに業を煮やし、スネイプが無理やり解錠すると部屋の中はもぬけの殻だった。
開いた窓から大きな満月が覗いている。
嫌な予感がした。
慌てて窓に走り寄り下を覗くと、名無しが背中に白い狐を背負ったまま、禁じられた森の方に走って行くのが見えた。
「ルーピン教授!」
息が続かなくなった私は一度立ち止まって、大きな声で叫んだ。
禁じられた森。
ハグリッド教授に連れられて二、三回入ったことがあるだけの森。
こんな夜間に一人で来たのは初めてだ。
しかもハグリッド教授の小屋からだいぶ距離がある。
「玉、何か見える?」
玉は私から離れるとゆっくり進んで行く。
白い体をぼんやり発光させるので明かりには困らない。
森にはケンタウロスや大きな蜘蛛がいるから絶対にひとりで入るなとハグリッド教授に言われていたのを思い出し、私は足を止めた。
「玉、待って。やっぱり引き返そう。」
玉は私をじっと見て、次の瞬間肩に乗って来た。
「ハグリッド教授の小屋にまで行こう。」
そう言いながら振り返った目線の先に、ルーピン教授が立っていた。
「ルーピン…!!」
声を出した瞬間、右から凄い力で腕を引っ張られ息が止まった。
「ルーピン、落ち着け。」
私の目の前にスネイプ教授が立っていて、手を広げている。
私は訳がわからず立ち尽くす。
突然、獣の声が森中に響き渡った。
バキッと枝を踏む音、スネイプ教授と私に飛びかかる黒い影。
スネイプ教授を守らないと。
玉が影の前に飛び出して、二つは一つの塊になった。
白い尻尾が円を描いてスネイプ教授を守る。
私は何もない光の中で玉になっている。
ルーピン教授の悲しげな遠吠えが聞こえる。
今は狐になった私の体に瞳が真っ黒な半獣人のルーピン教授が噛み付いていた。
悲しい叫び声を出しながら、痛み苦しんでいる。
私はグルグルとルーピン教授に巻きついてその体をゆっくり締め付けた。
黒く重たい感情がどろりと私の体内に入って来る。
玉の体が白から灰色に変わっていく。
…ルーピン教授、もう大丈夫。
スネイプを包む眩しい光がパチンと音を立てて消えた。
少し先にルーピンが倒れている。
その顔はいつもの彼でつい先ほどの半獣人では無いようだ。
すぐ下を見ると、名無しがスネイプのローブを掴んで目を閉じている。
その顔は真っ青で血の気がない。
「名無し!!」
しゃがんでその体を抱き起すと氷のように冷たいが息をしている。
スネイプはきつく名無しを抱きしめた。
…あれ?さっきまですごく寒かったのに…暖かくて気持ちいい。
体の中から温泉が湧いてるみたい…。
これは夢?
まだベッドの中にいるのかな?
早く起きなきゃ。
今日は午前中、魔法薬学の授業だったよね?
スネイプ教授…まだ怒ってるかな?
早く教授に会って、私の特別は教授だって言わなきゃ…。
ずっと守るからね…もう大丈夫…。
腕に強く抱きしめた冷たい体が突然熱を帯び始めた。
驚いたスネイプは名無しの顔を凝視する。
頬は桜色に染まり、唇も赤く色づいている。
「…名無し?」
名無しがゆっくりと目を開けて、スネイプを見る。
その瞳はいつもの色ではなく、紫色に輝いている。
普段から美しい名無しの人外じみたその美貌に鳥肌が立つ。
名無しは妖艶な笑みを浮かべながらゆっくりと両手をスネイプに巻きつけると、甘えるように顔を寄せ、スネイプの頬に自分の頬を擦り寄せた。
…突然、名無しが体を離す。
今度は何事かとスネイプは声も出せず固まった。
「教授!!!」
いつもの名無しが目の前にいる。
「スネイプ教授!!怪我はありませんか?!」
両手でスネイプの胸元のローブを掴んで、顔面蒼白な彼女は、いつもの真っ黒な瞳で短い黒髪は乱れ土と枝が付いている。
スネイプが何か答えようとした途端、今度はハッと思い出したように後ろを振り返る名無し。
「ルーピン教授!!!!」
名無しはスネイプを無視し、少し先に倒れているルーピンの元へ駆け出した。
「目を開けてください!ルーピン教授!」
小柄な名無しがルーピンに覆いかぶさる。
「…教授!私、ルーピン教授を殺してしまいました!!!!」
顔を上げた名無しの目から大粒の涙がボタボタと溢れ出した。
こんな状態なのに、何とも間の抜けた名無しの行動がおかしくて笑いそうになる。
殺してしまいました…いや、勝手に殺すな…どう見ても生きているだろう…。
スネイプは二人の元に歩いて行くと、号泣する名無しを押しのけてルーピンの首筋に手を当てた。
「泣くな。医務室に運ぶ。」
「…へっ?生きてますか?」
「勝手に殺してやるな。」
名無しはゴシゴシと涙を拭うとルーピンの頬を優しく撫ぜた。