クィリナス・クィレル
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早朝の長い廊下を歩くクィレルの耳に最も親しい友人の笑い声が飛び込んでくる。
ギルデロイ・ロックハートの『騒がしい』は今朝も健在らしい。
今日は一体誰と馬鹿騒ぎしているんだろう…と声を辿って廊下を曲がったクィレルははたと足を止めた。
「ワオ!日本から!」
「そうなんです!途中で台風が来てしまって。それで到着が遅れて大変でした!」
クィレルを背にロックハートと会話している人物。
一体誰だろうか?と背中を見つめる。
藍色の奇妙なローブを頭からすっぽりかぶり顔が見えない。
ロックハートと同じく会話に付属する身振り手振りが大きいのかバッサバッサと見慣れぬ素材のローブが揺れている。
「どわぁぁぁああああ!!ってすっごい雨と風でびっしょびしょになるし、私、飛行術のセンスが皆無でしょ?あ、知りませんよね!あははははは!!」
「それなら今度私が教えて差し上げますよ!わはははは!!」
「本当ですか?!私本気でヘタクソですよぉ?!宇宙まで吹っ飛んでそのままなんてこともありえるかも……」
「一緒に行って月にサインでもしようかな?!」
ドッと場が湧き上がる。
ロックハートが二人に増えた…クィレルは自分の顔面がピクリと引きつるのを感じた。
「…ん?!ああ!クィリナス!おはよう!」
茫然と突っ立つクィレルに気づいたロックハートが大声を上げながら手を上げる。
クィレルがビクリと肩を震わせるのと藍色の人物がピタリと動きを止めたのが同時だった。
「紹介しましょう!彼もここの教師で私の友人です。」
ロックハートの声に合わせてフードを被った人物がゆっくりと振り返る。
「……!!」
その顔を見てクィレルは左手を口に当てて後ろに一本飛び退いた。
しまった…何て失礼なことを…と頭では思うものの咄嗟の反応は正直だ。
自分に向き直ったローブの人物。
目深に被ったフードの中は闇のように真っ暗でモヤモヤしていた。
そのモヤの中に丸い両眼だけが不気味に浮かび上がっている。
瞳の色も真っ黒で青みがかった白目がギラリと強調されて見える。
不気味な人物を前に言葉が喉に張り付いてしまう。
その時だった。
パカッと闇が開いて真っ白い歯が見える。
それはどうやら口のようでクィレルを見て嬉しそうな半月型を描いた。
さっきまで不気味に感じた瞳も一緒に優しく湾曲する。
「はじめまして!」
闇の中から現れた人懐っこい瞳と口がクィレルに向かって大きく言葉をかけた。
たっぷりとした藍色の生地を揺らしながら大股でこちらに近寄ってくるローブの人物。
着物の様にもただの長方形の布の様にも見える異種素材をつなぎ合わせた藍色が瞬く間に目の前に迫る。
黙ったまままじまじと顔面を見つめるとやはりローブの中の目と口以外の場所は闇の様に真っ暗だ。
しかもヌッとクィレルに突き出された手は肌色でそれがますます彼を混乱させた。
「おい!何とか言いたまえ。失礼じゃないか!」
後ろからやってきたロックハートがクィレルの肩を叩く。
「大丈夫大丈夫!最初はみんなこんな反応なんです。慣れてます。
この顔ですからびっくりしない方が不思議でしょ?
そう言う意味ではロックハート先生は変わってますね。」
また二人は楽しそうに笑った。
「顔はこれですけど一応普通の魔法使いです。どうぞよろしくお願いします。」
ニコリと微笑んだ丸い目が闇と同化して姿を消した。
「こっこちらこそ…どうぞよろしくお願いしますっ」
こんな魔法使い見たことも聞いたことも無い!突き出された手を握ってみたら体温や肌の柔らかさは自分と変わりない。
「独神って言います。少しの間ですがここでお世話になります。いろいろ教えてくださいね。」
「独神?」
「そう。独身の独と神様の神。読み方はどくしんじゃないですよ?ヒトリガミです。まぁ…独身&恋人無しですけど…」
わはははは!と豪快に笑うと闇の中に大きな口だけが浮かび上がった。
「私は…クィレルです…クィリナス・クィレル…」
「きゅれる…あ、失礼。ちょっと日本の発音じゃ言いにくいですね。クィレル先生。」
そう言ってローブの中の瞳が自分を見つめる。
握り返された手がじんわりと熱い。
「さぁ!挨拶はそこまで!ひとまず大広間に朝食を食べに行こうじゃありませんか!」
ロックハートの大声で我に返る。
「お腹空きました!朝ごはん楽しみ!クィレル先生も行きましょう!」
そう言うとクィレルを残しロックハートと独神はもう並んで歩き出していた。
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