第十四章 あの空をもう一度見れるなら
美しい思い出は、今でも記憶の中にある。
「わあ!きれいな空!」
白のカーテンが揺れる部屋。
白い壁に白い寝台。
静かな部屋に無邪気な笑い声が響く。
「どんな空なんだ?」
無邪気な声に対して静かな陽だまりのような声。髪を撫でる手とその穏やかな声が迚も優しかったのを覚えている。
「んー……オレンジと青で……あ!
––––––––––––青い夕焼け!」
その空の名を思いついたように自慢げな声で幼い指が窓の外を指す。
「青い夕焼けか。それは素敵だね」
その手より大きな手が窓の向こうにある空に向かって伸ばされる。
「迚も綺麗なんだろうな…」
空に向かって伸ばされた手を真似するように一回り小さな手が大きな手に重なる。
穏やかな笑い声。
温かな手が包み込むように優しく握られた。
幸せな記憶。
尊く優しい、儚い思い出。
あの日見た空を、決して忘れない。
–––––––––––––––決して。
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