第十章 夢魘に熟れし果実を喰らう
目を閉じて、心の中で“ イヴ ”の名を呼ぶ。
そして、そっと目を開けば、
––––––––––私は、真っ白な世界にいる。
扉も、壁も天井もない空間。
上や下、右や左も判らず、狭いのか、広いのかも定かではない。
箱庭のように狭く、広野のように広い空間。
時間の流れからも隔絶された世界。
此処にいるのは、私とイヴだけ。
私の目の前にいるイヴは静かに伏せて私を見据えている。
私の右目と同じ血のように赤く美しい瞳で。
〝 イヴ 〟
私の声が木霊する。
此処は私とイヴだけの世界。
誰も立ち入る事は出来ない。
私とイヴだけが繋がっているから。
此処は、この空間は
––––––––––私の始まりの場所。
けれどその時、此処は白じゃなかった。
暗く深い真っ黒な闇の空間。
この空間が白であれ黒であれ決まって此処にはイヴがいた。
そして今は、穏やかな白。
そっとイヴに近付いてイヴに触れる。
額を合わせてゆっくりと目を閉じれば、イヴもその赤い瞳を閉じたのが判った。
感じる。
私はイヴを感じる。
イヴも私を感じている。
––––––––––––私とイヴは繋がっている。
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