とある暗い部屋。
僕は大きく目を見開いた。


「公安に潜入！？そんなの無理だよ！」
「お前ならいけるだろう。そもそも、拒否権なんて無い」


銀髪のロングヘアが特徴的な男『ジン』は、人を何人も殺してそうな（実際殺している）目でそう吐き捨てた。


「でも、僕は16歳だし…」
「心配しなくても、アナタの変装術は一流よ」


無駄にスタイルのいい年齢不詳の女『ベルモット』も助けてくれそうにない。


「もしもだよ？この組織に公安のNOCが潜り込んでいたとしたら、この計画は成り立たないと思うんだけど…」
「この任務は俺と、ベルモットと、お前しか知らない。」
「さすが、この組織は抜け目がないね〜。アハハ〜」


とりあえず二ヘラっとした笑みを返したが、脳内は大荒れだ。


なにも、普段から文句ばかり垂れ流して組織の役に立っていない訳ではない。
むしろ、僕は文句1つ零さず任務を必ず遂行する組織の犬なのだ。

それならどうして今回ばかりはこの任務を避けようとしているのか…


それは、僕がトリップ者だからだ。


公安には、トリプルフェイスで有名な『降谷零』がいる。
そして、その3つの顔の内1つに組織の情報屋『バーボン』がある。

組織の幹部である僕は、バーボンと仕事をすることもあるし…
いやむしろ、異常なまでに仕事が被る。

さて、この状態で公安に潜り込むなんて厳しすぎるにも程がある！

ただ、どうやらこれ以上ごねたところで状況は変わらなさそうだ。


「はぁ…分かったよ。行けばいいんでしょ？」
「始めからそう言え。…今回の任務に乗り気ではないようだが…失敗したらどうなるか分かっているな？ブロンクス」
「うん、もちろん」


とりあえず、今回の任務がバーボンと一緒じゃなかったことだけは救いかな。


こうして、ブロンクスもとい僕、春川咲良は公安に潜入することとなった。