テニスって面白い?(完結)
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この小説の夢小説設定・男性夢主
デフォルト名「望月光瑠(もちづきみつる)」
切原赤也と同い年
テニス初心者
ふざけるが根は真面目
しっかり者
ポジティブ
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俺は部活時間が終わっても無理を言って残らせてもらい、負傷先輩のメニューを記録して達成したら、赤也と3強の先輩が心配して迎えにきてくれた。先輩たちの優しい言葉が胸に染みて不覚にも涙が溢れてしまった。横にいた赤也のTシャツで顔を拭いたら怒れてしまった。
ーーー
部室に戻ると中はかなり荒れていた。
「え……えぇ!?なんやこれ!部室荒らし?」
急いで自分の鞄にある財布や携帯を確認した。中身も無事だったことが分かり、安心した後に先輩達の荷物も無事か声をかけようと後ろを向くと幸村先輩がいた。
「ごめん。俺から説明するよ」
ーーー
初日から言われた無茶苦茶なメニューは、負傷先輩が練習できない八つ当たりで組まれた内容だということ。そのことに気づいた仁王先輩が負傷先輩と取っ組み合いになって部室が荒れたこと。今、部長が顧問の先生に話に行ったことを教えてもらった。つまり……
「あの練習は本来のメニューやなかったってことですか……」
「う……うん。ごめんね。声かけたけど聞こえてなかったでしょ?」
「すっすみません幸村先輩。アドレナリン出ていたせいか集中してしまって……」
「すごい集中力だったよ。腕を掴んで止めれば良かったけど、光瑠の本気を見たくなっちゃって……本当ごめんね」
「いえ、もしあの時に止められとったら、今までの頑張りが無駄になりそうやし最後までやれてスッキリしましたわ」
「よし、俺と幸村と柳は荒れた道具を片付けるぞ。赤也と光瑠はさっさと着替えて帰れ。……迷惑をかけてすまなかった。しっかり休んでもらいたい」
「いや、片付けなら俺らがやりますよ。なぁ赤也」
「弦一郎の言う通り、これは俺達2年の責任だ。光瑠には本当に悪い事をしたと思っている。すまない」
「柳先輩までやめてくださいよ!俺、大丈夫ですから!」
「……先輩達がそう言ってるんだから、さっさと着替えて帰るぞ」
赤也は頑固な光瑠を無理やり引っ張りながら着替えて帰路へついた。着替え始めてから光瑠が異様に大人しくなった。何か余計な事を考えているのか、身体が急に辛くなったのか横目で心配していた。学校を出た瞬間に光瑠が周囲を確認した後、こっちに向いて口を開く。
「なぁ!俺、ビックスリーに名前で呼ばれちゃったー!!赤也が名前で呼ぶから、つられちゃったんかな?しかも褒められてスゲー嬉しい」
「はぁ?お前元気かよ」
目を輝かせながらハキハキした声で予想外の発言に唖然とした。どうしてこんなに能天気なのか一生理解できないだろう。俺だったらあの負傷先輩のこと殴ってるし、辞めた奴らの方がまともな考えをしていると思う。だから光瑠の明るさと根性には素直に尊敬した。ビックスリーだってきっと同じように思っていることは想像できる。まぁ、俺の足元にも及ばないのは前提だし、なんかムカつくから浮かれたコイツには絶対教えてやらない。
コートの裏側で倒れている光瑠を見つけた時は、部活後の熱い身体が一気に冷え切るほど凍りついた。駆け寄ったら、何も知らない光瑠は呑気に筋トレの動画とGPSアートアプリを見せてくるし。馬鹿みたいに笑った顔に安心して気が抜けてしまった。あの時仁王先輩がクソ野郎先輩を殴ってくれて良かった。
「これで明日からボールにも触れるやんな?」
「柳先輩も言ってただろ?お前は明日休みだ」
「えっ嘘!?休みでも顔は出すやろ?」
「いやいや、朝ゆっくり寝られるチャンスだぞ!?ド真面目か」
「赤也は寝坊するもんね。夜は早く寝るんやで」
「うるせー。てか、あのランニングのアプリもう一回見せろよ。あれって本来はGPSで走ったコースを線で記録して絵や文字を書く使い方だろ?」
「そうそう!コートの外周をずっとグルグル走ってるのを記録してるから太く囲ったみたいになっててオモロいやろ」
「ぎゃははは!気持ち悪い〜」
赤也としょうもない話をしてゲラゲラ笑いながらしながら帰った。家に着くと同時に眠気が襲ってきた。今日はいつもより早く眠った。
ーーー
「いや、だからなんでいるんだよ」
「おはよう赤也。今日はギリギリセーフやね」
「光瑠から聞いたが、赤也の家は俺の通学路に近い様だ。明日から迎えに行こう」
「赤也〜柳先輩にお迎えいただけるとは羨ましい奴め!」
「はぁ?なんスかそれ!」
赤也が来る20分前、今日は休みのはずである光瑠が部室に入った瞬間に昨日の事を知っている部員達の空気が凍りついた。事情を知らない部員も空気を感じとり光瑠のことを変な目で見ていたけど、部長から過度な練習を続けていたから今日は休むように伝えたはずなんだと説明してくれた。改めて謝罪と今日は休む様に説得したが、光瑠は来てしまったので見学をしたいと話した。根性と頑固は紙一重だと思いながら申し出を受け入れることとした。
何事もなかったように部室の掃除をしながらテニス部に入ったきっかけや、赤也の話をしていた。光瑠の話を聞いているうちに部室の雰囲気は明るくなっていた。
「話聞いたぞ?赤也。親友に愛されてるな」
「丸井先輩!何の話っスか!?」
「丸井先輩〜照れちゃうんで、赤也には内緒ですよ!!」
「おーい!時間だ。準備運動始めるよー」
『『はい!』』
ーーー
朝、部長に改めて注意されたので今日は大人しく言われた通りに練習を見学していた。客観的にランニングを見ていると走り方も人それぞれだった。早い人は背筋が伸びていて腕をよく振っていた。今まで気にしたことも無かったことが目に入る様になっている事に気づいた。仮説を見つけては、すぐに確認したくなって軽く走ると、真田先輩の怒号が飛んできたので大人しく座っていた。
「全くお前は見学させられている意味を分かっているのか?」
「すみません。つい見ていたら何かしたくなって……」
「心意気は認めよう。しかし身体を壊しては本末転倒だ。分かっているのか」
「はい……」
「だから、お前にラケッティングを教えよう。これなら身体も響かないだろう。それにラケットコントロールの練習になる」
「ラケッティング?」
真田先輩にしっかり怒られた後に、ラケッティングを数種類のやり方を教えてもらった。簡単ではないが朝練が終わる頃には少しコツが分かり始めていた。
放課後の部活時間も顔を出すと、先輩達は呆れた顔で俺を受け入れてくれた。もちろんずっとラケッティングをしていた。定期的に真田先輩は俺のところに来て、コツを教えてくれたり、応用した技を見せてくれた。他の先輩にも声をかけてもらって楽しく練習に励んだ。
「あ、赤也お疲れ。見て!だいぶ長く続けられるようになったんだよ」
「光瑠お前大丈夫か?」
「え?大丈夫って何が?」
「真田先輩だよ!光瑠にほぼ付きっきりでさぁ。あー怖い怖い。しかも地味なラケッティングだけで面白くないだろ?」
「そう?真田先輩は丁寧に教えてくれるし、ラケッティングも延々とやれるで!」
「うげ……そうだった。お前はドMだったな」
「ドMなんて言われたことねーよ!……それに真田先輩って顔もカッコイイし、周りもよく見ていて、面倒見よくて、自分にも厳しくて妥協しない感じが漢として憧れるよなぁ!俺、立海に来て、テニス部に来て良かったよ」
「まじかよ。わっかんねぇ」
「俺、外周走ってた時もずっと真田先輩を見て元気もらってたし、明日からも毎日練習見てもらいたいっ!」
「こいつ……やべぇ!!」
コツコツと自分の出来る新しいことを少しずつ増やしていく。同期や先輩が見守ってくれるなら、あの時の赤也とビックスリーの試合を見た時の様な、深くて遠く輝いていた世界にも行ける様な気がした。こんなことを赤也に話したら調子に乗るなって怒られるんだろうな。
俺はテニスが上手くなるだけでなく、赤也のように諦めが悪くて、真田先輩のように他人にも厳しくできるくらい自分に厳しい漢になりたいと心で誓っていることも内緒な。
テニスって面白い?(終)