テニスって面白い?(完結)
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この小説の夢小説設定・男性夢主
デフォルト名「望月光瑠(もちづきみつる)」
切原赤也と同い年
テニス初心者
ふざけるが根は真面目
しっかり者
ポジティブ
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小学校卒業に合わせて、大阪から父親の転勤先である神奈川へ引っ越す事になった。中学校は母親が『何にでも真剣に取り組む熱い魂を育てます』という校風と歴史に惹かれて、立海大付属中学を勧めてきた。母親曰く、俺は「根は真面目でしっかりして手が掛からない子だけど、もっと何かに夢中になって欲しい」とのことだ。正直、夢もやりたいことも無かったので何でも良いと思い、言われるがまま受験した。今日からその立海大付属中学に通うことななる。
「俺、望月光瑠。大阪から引っ越して来て友達どころか土地勘もないから色々教えてもらえたら嬉しいわ。よろしく」
近くにいる人にとりあえず話しかける。方言イジってもらったり、おすすめの店を教えてもらったり、話題に困ることは無かったので男女問わずクラスに馴染むのは早かった。
担任の挨拶ではクラブ活動の所属を強く推奨していた。全国レベルの部活動も多く、クラスの自己紹介で「どこの部活に入部します」と宣言する人が何人もいた。その中でも一番印象に残ったのは入学式に先輩と大喧嘩して目立っていた切原赤也君だった。
「俺はテニス部に入部して、全国No.1のこの学校でNo.1になる!」
大きな野望にクラスで大きな拍手が起きた。志の高い同級生に圧倒されると共に、自分にはそこまで夢中になるものは無かったと気付かされた。何かしらの部活配属していれば、何か夢中になるものが見つかるだろう。放課後はいろんな部活の見学に行くことにした。
友達が一緒に部活の見学を誘ってくれたが、周りの意見に引っ張られたく無かったので断った。運動部26種類と文化部26種類に加えて同好会もあるため、多種多様の中から選べるか不安ではあったが、それ以上に期待が大きかった。
「さて、適当にブラつきながら見て回ろうかな」
早速、運動部を見るためにグラウンドや体育館を散歩する。どの部活も活気的でレベルが高かった。気さくな先輩に声をかけられて少しだけ体験をさせてもらったり、新入生へのアピールとして演武を披露したりと、部活内の雰囲気も何となく分かってきた。
(派閥が見てわかる所は疲れそうで嫌だなぁ)
全体的に1周見ていくつか絞ってから改めて見学でも体験でもさせてもらうのが効率的だと思い、早足で周る。それでも半分も見ることができなかった。もうすぐ下校時間となるので切り上げて続きは明日にしよう。そう思いながら東門へ向かうと、テニスコートでテニス部員の人集りが見えた。
「なんか変な空気だな。ついでだし見ておこうか」
コートに近づくと、切原赤也君が上級生と試合をしていた。教室でNo.1になると言っていた時と全く違う苦しそうな顔だった。上級生は瞬間移動の様に動いたり、炎が見える様なすごい打球を打っていた。ルールの知らない俺から見ても圧倒的な差だった。
思わず釘付けになって、試合を最後まで見ていた。
試合が終わると、切原赤也君は逃げる様に校門へ走り去っていった。戦った上級生は涼しい顔をしていた。俺はその光景を呆然と見ていた。
「これが全国No.1か……こんなの見たらアイツ心折れちゃうんじゃないか?」
切原赤也君を心配しながらも、テニスコートの中にある遠い世界を見ていた。
ーーー
次の日、教室で見た切原赤也君はノートに何かを一生懸命書き込んで1人で過ごしていた。授業中は寝て先生に怒られていたが、どこか上の空でずっと昨日の試合を引きずっていると思った。俺から話しかけるつもりは無かったので、横目で様子を見つつも自分の友達と話して過ごしていた。
放課後は昨日の続き、部活の見学に行った。今日は文化部を中心に回っていた。運動部とはまた違った雰囲気に浸っていたが、頭の隅にはテニスコートでの出来事を思い出していた。
時間は有限で、効率が悪いことは頭では分かっているのに、気づいたら足はテニスコートへ向かっていた。
(テニス部が普段の練習をしとったら、すぐに戻ろう)
テニスコートはまた昨日と同じ様に人集りができていた。コートで試合をしているのは切原赤也君と、昨日とは違う先輩だった。それでも切原赤也君の動きがバレている様に見えた。こんなにも圧倒されているのに全く諦めない彼の姿に心が打たれた。
(本当にNo.1を目指しているんやなぁ。あんなに粋がってる奴なんて才能があって、それを自覚している人ばかりだと思ってた)
試合が終わると、また切原赤也君が走り出す。俺は何も考えず追いかけた。
ーーー
「やばい。見失ったら迷子になるやん」
試合後とは思えないほど、ずっと走っていく切原赤也君を何とか追いかけてきた。そろそろ諦めるかと思ったら何もない場所で荷物を置いてラケットを取り出していた。
「はぁ?こんなところで何すんねん……って壁打ち?」
その後も砂浜を走り込んだり、1人で練習しているのをこっそり見ていた。いろんな部活を見学していたが、ここまで必死な人を見なかった。
しばらくすると2人生徒が切原赤也君話しかけて、3人で移動した。こっそり連いていくと見慣れた通学路に辿り着いた。迷子にならずに済んだことにホッと安心した。
ーーー
何度も挑戦しては1人で練習する彼を見守り続けて数日。部活見学も諦めて俺は切原赤也君に夢中だった。これじゃあストーカーだなと思って、壁打ちの場所で声をかける。
「切原赤也君。同じクラスの望月光瑠です」
彼は息を整えながら黙ってこちらを見ている。
「あー冷やかしじゃないから、あんま睨まんでもらえるかな?あまりにも切原赤也君がカッコイイからさ」
「はぁ?冷やかしじゃん。あんなにボロ負けしてカッコイイ?馬鹿にすんな」
「してないよ。ボロボロになった君は本当にカッコイイよ。何度も立ち向かって、1人で練習したり。俺、テニス知らんけど、なんか気づいたら切原赤也君のことスゲー応援したくなって声かけたんよ」
「……ふーん。どうでもいいけど、そのフルネーム呼びやめてくんない?赤也で良い」
「赤也。テニスってそんなに面白いの?」
「はぁ?面白いとか面白いじゃなくて、俺はあの3人をまとめて倒してぇだけだ。悪いけど、邪魔しないでくれる?」
「そっか。邪魔してごめんね。黙って見てるよ」
赤也の表情は決していい顔とは言えないが、どこか楽しそうだった。しばらくすると、いつも赤也に話しかけてる色黒スキンヘッドの人とガムを噛んでる赤髪の人が来た。
「ん?先客か?」
「へぇ。赤也にも一応友達っていたんだな」
「こんにちは。親友の望月光瑠です」
「誰が親友だよ!さっき初めて喋っただけだろ」
「照れんなって!No.1君!」
「やっぱお前馬鹿にしてるんだろ!どいつもこいつもっ!」
怒りながら追いかけてくる赤也に謝りながら逃げた。
単純で協調性もなくて自己中心的な赤也が面白い以外で夢中になる理由が知りたいと思ったので、俺はテニス部に入部することを決めた。
(続く)