U -17合宿所(未完結)
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この小説の夢小説設定・女性夢主
デフォルト名「海野由美(うみのゆみ)」
真田弦一郎達と同い年
女子バスケ部
とても負けず嫌いでストイック
真面目
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幸村に呼ばれて寮の入口に行くと、合宿所に居るはずのない海野さんが越知先輩といた。話をしていると斎藤コーチが現れて、俺と幸村と柳の3人が面談時に海野さんの話をしていたから呼び出したと説明される。そういえば、テニス以外でメンタルが強いと思った人のエピソードを質問された時に海野さんの事を話したな。
しかし、なぜか海野さんと斎藤コーチは一触即発の状態だった。それでも今日は一泊するらしく、合宿所の案内するために2人は、この場を離れて行った。
「越知先輩、どうして海野さんと?」
「散歩をしていたら偶然」
「警備の犬がなんとか言ってましたが……」
「あぁ。1匹の警備の犬が襲ってきて、彼女が追い払ったんだ」
「せ……先輩ではなく海野さんが?」
「そうだ。庇ったつもりが、いつの間にか前に出て果敢に向かって行った……少し犬が可哀想だったが」
驚きながら3人で顔を合わせると笑みが溢れた。合宿所にいる警備の犬も追い払うとは、驚いたが、負けん気が強い海野さんらしい話だ。
「むぅ。しかし、あんなに怒った海野さんは初めてではないか?蓮二」
「そうだな。話を聞く限りでは我々の心配をしてくれている様だ」
「真田と柳が崖の上の練習の話してる時、かなり青ざめていたよね。ふふ。少し面白かったよ。……先輩、普段の彼女はもっと穏やかなんですよ」
「さして興味はないが、そうか」
斎藤コーチは夕飯まで海野さんを借りると言っていた。夕飯は一緒に食べられるのだろうか?頭の隅っこで気にしながらも、それぞれ自由時間を過ごした。
ーーー
「……最後にここが、あなたの部屋になります。こちら室内用のシューズもご用意しましたので使ってください。他に聞きたいことはありますか?」
「私への用はもう終わりで、朝になったら帰っても良いですか?ここから直接部活に行きたいのですが」
「え〜学校にも部活お休みしますって連絡しましたし、せっかくなので合宿所を見学して行ってくださいよ。彼らも喜びます。それに、バスケ部は中学で引退されるそうですし?」
「端的に目的を話してもらえませんか?一方的に呼ばれて、試されて……とても不愉快です」
「これは、すみません。怒りが人の本質を見るのに1番手っ取り早いので、つい」
「じゃあ安全面については……私を怒らせるための嘘ですか?」
「……そこは僕の担当ではないので詳しくは知りません。すみませんね」
笑いながら話す斎藤さんをムスッとしながら睨む。選手の頑張りは本人次第の所もあるが、環境や人間関係でコンディションが崩れることもある。それは海野自身バスケ部で痛感することが何度もあった。
(部員と心から仲直り出来ていたら。あるいは信頼できる人が1人でもいたらバスケ部を引退せず高校でも続けていたのかな?)
斎藤さんへの不満は、かなり私情が入って中立的な判断では無いとは思う。それでも大切な友人達がより良い環境で頑張って欲しいから黙っていられなかった。
「僕は海野さんが選手と交流したら良い影響が出ると思ってお呼びしたので、たくさんの人と話してもらえると嬉しいです。さぁ、もうすぐ晩御飯なので食堂に行きましょう」
理不尽なことや怪しいことがあれば学校の先生など外部の大人に相談しよう。その為にも選手と交流は必要不可欠と考えて大人しく付いて行った。
ーーー
「は〜い晩御飯の前に、業務連絡です。明日まで私のお客様が見学されます。皆さん、積極的に交流してくださいね」
「……初めまして。立海大バスケ部中学3年の海野由美です。お邪魔しています」
大人数の前で緊張しながら自己紹介をする。あちこちから「立海?」「女?」「バスケ部?」と疑問の声が聞こえる。なぜ呼ばれたのかと言う疑問に斎藤さんは「お客様だから」としか答えなかった。
業務連絡を終えると、知らない選手達に囲まれて質問攻めに合っていた。
ーーー
囲まれた海野さんの様子を俺達は少し離れた席から見守っていた。
「たるんどる。あんなに囲んだら海野さんが困るだろう」
「まぁ待て真田。どうせ最初だけだよ。柳以外のデータマンの好奇心が落ち着いたら……あれ?千石ってデータマンだっけ?」
「千石はただ女子と話したいだけだろう。少し様子見て止まらないなら声をかけに行こう」
海野さん達の様子を見守りながら、食事に手をつけていると越知先輩が我々のテーブルにやってきた。
「先程は来てくれて助かった。よかれと思って海野と一緒にいたが、2人きりで気まずかったと思う」
「?越知先輩といて、気まずそうにしていただろうか」
「俺が話しかけるまでもニコニコしていたと思いますが……」
「警備の犬から逃げ切った後からずっと笑っていたから緊張していたのではと思っていたが……すまない、礼を言いたかっただけだ。食事を続けてくれ」
「あっ……越知さん?でしたよね?先程は本当にありがとうございました」
越知先輩が自分の席に戻ろうと後ろに下がると、いつのまにかデータマンの囲いから逃げて来た海野さんがこちらに向かっていた。
「犬の件といい、斎藤さんと合流するまで一緒に待ってくれたり心強かったです。ちゃんとお礼も言わなくて……」
「……礼にはおよばない」
「本当に助かりました。あっ私、あちらのテーブルで食事をする交渉をしていますので。これで失礼します」
にっこり笑いながら海野さんは越知先輩にお辞儀をした後に、俺達に手を振りながら先程までいたテーブルの方へ戻っていった。
その後も海野さんの笑い声が時々聞こえていた為、周りと馴染んでいると窺える。心配する事は何もなさそうだった。
ーーー
夕食後も海野さんの周りには人が集まっていた。弦一郎も精市も気にしていなさそうだったが、俺には海野さんから声をかけているように見えた。夕食の時間に貞治やあくと兄さん達に練習内容や合宿所のルールなどを聞いていたそうだが、全く同じ質問を他の人にも聞いて回っているようだった。
海野さんが呼ばれた理由が選手との交流だとして、斎藤コーチはどういった効果が期待しているのか?
しばらく様子を見ながら考えたが、いくら仮説を立ててもしっくりくる答えはなかった。四天宝寺のメンバーと楽しそうに話している姿に少し顔が緩み、話の区切りが良いところを見計らって海野さんに声をかける。
「海野さん。就寝時間が近づいているが風呂には入ったか?」
「もうそんな時間?ありがとう柳君」
「えー姉ちゃん行っちゃうん?ワイまだ話したいこといっぱいあるのに!」
「こーら金ちゃん。わがままはアカンで?」
「ほな、またね由美ちゃん。今度女子会しましょうね」
「小春!女子会やったら俺も混ざられへんやんか!」
「いや、小春先輩おる時点で女子会ちゃいますやん」
「海野はんもゆっくり休んでください」
「はい!また色々聞かせてください。おやすみなさい」
ーーー
四天宝寺の皆さんに会釈して、柳君とも一言交わした後に、着替えを取りに部屋へ向かう。さっきまでずっと色んな人と楽しく話していたから急に1人になって寂しさと疲れを感じていた。結局、真田君達とあまり話せなかったな。と後ろ髪引っ張られながら、今日話した人達のことを思い出していた。
誰もがテニスで強くなりたいから、この合宿のメニューに食らいついて、そして強くなった実績も実感もあると話していた。そういった話を聞くたびに、選手達が苦しい思いしているのではないかと勝手に勘違いしていたのだと気付かされて恥ずかしくなってしまった。
早足でお風呂に行き、顔を湯船に沈めながら真田君達の電話や合宿所での出来事を思い出していた。
「私の考えすぎなら良いけど……」
崖登りや犬を襲わせたり、中学生と高校生で体の成長だって違うのに一緒に行う練習が適切なのか心配になる。確かに自然の中や、自分より強い相手と競うことで身につける力もきっとある。日本の代表の覚悟に素人の考えは余計なお世話なんだろうか?
「そんな覚悟だから、私はバスケを続けられなかったのかな」
自分の声が反響して消えていく。
私は1年の時に部活の同期と仲良くできなくて反発するように力をつけていたが、代償に同期を信用できなくなった。表面上は仲良くしていてもプレイに大きく影響していた為、先輩が引退した途端に試合で何もできなくなってしまった。自分の部活に対するネガティブな経験と気持ちを真田君達や選手に押し付けていたのかもしれない。自己嫌悪と恥ずかしさで消えたくなる。
「少ない時間、迷ってる暇はない。気持ちを切り替えて明日も選手の話を聞きながら、練習を見学しよう」
ーーー
「え。中学生は特別メニューで、高校生は自主練なので通常練習の見学ができない?」
選手と話しながら朝食を取った後、通常練習の見学をコーチの解説付きで見せてくれる予定となっていた。しかし、コートに行っても数人が打ち合っているだけで通常練習が行われる雰囲気では無かった。場所を間違えたのかと不安になっていると、遅れて来た斎藤コーチに練習が中止になったと告知された。
「そうなんですよ。今朝、三船コーチが良い練習法を思いついたそうでして……そちらの練習は見学をお控えいただきたいですが、他は自由にして良いですよ」
「自由にして良いですよって……いや、選手優先にしてください。これでお客様優先って言われた方が信頼無くします」
「あぁよかった。また怒られちゃうかと思いましたよ」
「昨日は……」
昨日はすみません。と反射的に言いかけたが、やはり安全面については納得していない事を思い出してグッと堪えた。
「……っ怒りが人の本質を見るのに1番手っ取り早いって斎藤さん言ってたじゃないですか」
「あ〜そうでしたね。では、何かありましたら昨日案内した場所にいますので」
少し微笑みながら斎藤コーチは自分の仕事に戻って行った。コーチの後ろ姿を見送った後、いつでも帰れるように荷物を持っておこうと部屋まで早足で移動した。
ーーー
「〜っせやから、サボりちゃいますから!タオル取りに行ってただけですって」
向かいから高身長の2人が歩いてきた。越知さんと……関西弁の高校生の様だ。越知さんは分かるが、もう1人は昨日お話しただろうか?記憶を辿っていると目が合った。聞こえる様に大きな声で挨拶すると、笑顔で大きく手を振り応えてくれた。越知さんと対照的な人だと思った。
「おはようさん。昨日めっちゃ人気者やったから話しかけるの諦めとったわ。俺、毛利寿三郎言います!俺も立海やから仲良う頼みますわ。で、こんなところで何してるん?」
「毛利さん、改めまして海野由美です。中学生の特別練習は見学できないとのことで、自由にしていいと言われたので……」
「あらら、コーチも人が悪いねぇ。せや!これから月光さんとトレーニングルーム行くんやけど一緒に行かへん?」
「え!トレーニングルームお邪魔して良いんですか!?」
「ええんとちゃう?せっかくなら体験しんせーね」
「ぜひ体験したいです!急いで部活の練習着に着替えてきます」
(昨日ランドリーお借りして良かった)
早足で部屋に戻り練習着に着替える。日本代表の合宿所で使われている最新の機械を体験できるだけでここまで来た甲斐があると、心を躍らせながら荷物を持ち、廊下まで早足で戻る。
「お待たせしました。よろしくお願い致します」
「ほな、行こか」
ーーー
昨日斎藤さんに案内されて外から少し眺めたトレーニングルームへ一緒に入る。奥のベンチブレスに1人選手がガシャンと音を立てながらトレーニングを行っていた。
遠くから見ても特徴的な方はおそらく日本No.1の実力を持つと言われている平等院さんだと思う。この合宿所をまとめていらっしゃる方なので斎藤さんに紹介されて挨拶はしたが話はしていないので、どんな人なのか知らない。
「気になるマシンがあったら教えたるで」
「じゃあ……ランニングマシン良いですか?」
ワクワクした気持ちが露呈していたのか、楽しそうやなと笑いながら毛利さんがランニングマシンを設定してくれた。走りながら越知さんと毛利さんに合宿所について、お二人の意見を聞かせてもらった。
ーーー
「……なるほどな。月光さんの言ってた通り、海野は立海メンバーの事心配で合宿所のこと探ってんねんな」
「えっ?」
「中学生言うても選ばれただけあって結構やるねんで?俺ら高校生もおるし大丈夫やって」
「……高校生の先輩が守るから中学生は大丈夫だという意味なら、高校生の皆さんは誰が守ってくれるのですか?」
空気を凍らせてしまった。この一瞬だけ全員の呼吸が止まったかの様にマシンの音だけが部屋に響いていた。
親切にしていただいた先輩だからこそ、私は練習で怪我や故障をしてほしくない。正しく大切に試合へ向けて身体を作りに集中してほしいと思っての発言だったが流石に失言だったと思い、慌てて撤回する言葉を繋ごうと口を開いたと同時に、部屋の奥からフハハハハと大きな笑い声が轟く。
「ふっ。こいつの方が分かってるんじゃねーか。義では世界を獲れないってことを」
そう言いながら歩いていく平等院さんに一瞬も目が離せず、そのまま汗を拭いたタオルを肩にかけながらトレーニングルームを出て行くところまで見送った。扉がバタンと音を立てて閉まるまで私は一歩も動くこともできなかった。
「……びっくりした。義では世界を獲れないって自分の事は自分でなんとかしろって事ですか?」
「せやねぇ」
「そんな極端な話じゃなくて、上下関係も大切ですが、それ以上にチームとしての協力の仕方があると思います……うまく言葉には出来ないのですが」
自分の経験から感じる違和感はあるが、ぐるぐる頭を回しても言葉が出てこなかった。
もっとも、最新機器があるにも関わらず理不尽な練習や安全性に疑問を抱いている話のつもりだったが、それを個人で乗り越えろで片付ける平等院さんとは話がすれ違っている様な気がする。それを越知さんや毛利さんに言っても仕方がない事も分かっている。
越知さんと毛利さんは目を合わせて困っている様に見えて、何か喋らないといけないと慌てて話しかける。
「あのっ私、部外者だからこそ聞ける話や出来ることがあるんじゃないかと思ったのですが、出過ぎたことでした……すみません。忘れてください」
「いや、そない俺らのこと考えてくれて嬉しいわ。なぁ月光さん」
「あぁ。気持ちだけ受け取ろう」
「すみません。ありがとうございます」
気持ちを切り替えて、その後も話をしながらランニングを続けた。毛利さんは立海生と言う共通点もあったため、親近感からプライベートの話もたくさんした。短い時間だったが、かなり打ち解けることができたと思う。
ーーー
「ふぅ。もうすぐお昼やし、そろそろ切り上げません?海野も結構体力あるんやねぇ」
「持久走なら陸上部にも負けてませんよ」
「ふっ。頼もしいな」
「ありがとうございます。制服に着替えてきますので、お先に食堂へ行ってください。……あと、もしご迷惑でなければ連絡先教えてもらえますか?」
せっかく仲良くなったからという理由の他にも、中学生だけの特訓などで連絡取れなった時に高校生と繋がりがあればという私情で聞いてみた。昨日は誰とも連絡先を交換しなかったが、同じ学校で仲良くなった毛利さんなら聞いても良いかなと思った。
「ええよ!……あ、今ジャージやから携帯持ってへんかったわ。連絡先教えてもろて良い?」
「真田君、幸村君、柳君が私の連絡先知ってますので誰かに聞いてもらえれば……」
「あっ……あ〜あの3人ねぇ」
急に毛利さんの歯切れが悪くなり、無理に笑っているところを越知さんが肩に手を置く。気まずそうな空気を感じ取って一つの仮説に辿り着いた。
(そういえば、あの柳君が珍しく怒っていた時にテニス部の先輩の愚痴を聞いた事があったけど……もしかして毛利先輩のことだったのでは?)
「仲が悪いのですか?」
「いや〜ちょっと……ははっ」
「それなら私の連絡先書いて渡しときますね。同じ部活だからって皆仲がいいとは限りませんよね」
鞄からノートと筆記用具を取り出し、名前と連絡先を書いてページを破り毛利さんへ差し出した。毛利さんは驚いた顔をしながら、おそるおそる紙を受け取った。
「ええの?アイツらと仲良いんとちゃうん?」
「?私が真田君達と仲良いから毛利さんに連絡先を教えないとはなりませんよ。一応、内緒にはしますけどね」
「……ありがとう。後で連絡するわ」
「よろしくお願いします。お声がけいただいた上に面倒も見ていただき、ありがとうございました。失礼します」
お礼と挨拶をしてトレーニングルームを後にした。
(続く)