U -17合宿所(未完結)
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この小説の夢小説設定・女性夢主
デフォルト名「海野由美(うみのゆみ)」
真田弦一郎達と同い年
女子バスケ部
とても負けず嫌いでストイック
真面目
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毎年、夏休みの最終週に私と真田君で庭園散歩しながら全国大会の報告をする事が恒例となっていた。立海3連覇を目指していた真田君にとって最後の大会で惜しくも準優勝という結果を受け入れているのか分からず、会うまで不安だった。しかし、待ち合わせ場所にいた真田君はいつも通り……いや、むしろ機嫌が良さそうに見えた。
「真田君!おはよう」
「おはよう。海野さん」
「大会お疲れ様……その」
「うむ。そのことだが、海野さんに報告したい事があるのだ。実は……」
全国大会では悔しくも準優勝だったが、U-17選抜候補の合宿に立海のレギュラーメンバーが選ばれたとのことだった。突然の世界の話に驚き喜んだが、目の前にいる人が遠い存在になってしまった様な寂しさもあった。たとえ真田君から私のことが見えなくなっても、ずっと応援したい気持ちは確かだった。
ーーー
そんな会話をして数日後。
合宿へ向かった真田君、幸村君、柳君を見送った後、連絡を入れても幸村君からしか返信が無かった。しかも、幸村君から「真田君と柳君が合宿メンバーから脱落したから帰った」と聞いていたが、学校には来ないし、電話もメールも返ってこない。学校に2人の所在を確認しても合宿所にいるとの事だった。幸村君に何度も確認したが嘘をついてると思えなかった。
合宿から1週間経った頃の夜に、真田君から電話がしたいと連絡があった。直ぐに電話をかける。ずっと聞きたかった声が聞けて、安心したのかその場に座り込んだ。
『海野さん。久しぶり。今大丈夫だったか?』
「真田君今どこなの?無事なの?柳君は?」
『柳も隣にいる。俺達はU-17の合宿所にいる。お前からのメールを見て、随分心配をかけてしまったようだ。本当にすまない』
「2人共無事なのね?幸村君からは真田君と柳君は学校に帰ったって聞いてたのに全然連絡ないし心配したんだから!」
『す……すまない。それは事情があってだな』
『海野さん。柳です。俺から説明しよう』
柳君から勝ち組と負け組の話、メンタル強化の為に勝ち組の幸村君は別の場所で負け組だけの練習があったことを知らされていなかったという事、負け組の真田君と柳君は厳しい練習で連絡の取れる状況でなかった事を教えてもらった。
「とりあえず無事が分かって安心したよ。連絡ありがとうね」
『あぁ。こちらこそ心配してくれてありがとう』
『明日からは返信もできると思う』
「いや、無理せず頑張っているなら連絡することないよ。幸村君にもよろしく伝えておいて」
電話を切って深く息を吐いた。真田君たちの合宿は始まったばかりだった。それに対して私は、バスケ部の全国大会も終わって、代替りして部活に顔を出すのも数える程度しかない。同時に中学卒業後の進路に向けて切り替えなければならない。自分もやることはたくさんあるんだと考えると同時に、世界という舞台に走り出す彼らが眩しくて羨ましかった。
ーーー
電話をして数日後、職員室に呼び出された。進路の話だろうかと考えながら担任の席へ向かった。
「海野、すまないが、金曜日にこの封筒をテニスU-17代表候補合宿所へ持って行ってもらえないだろうか?地図はこれだ」
「私テニス部じゃないですよ?」
「そうなんだが、コーチの斎藤さんという人から電話で海野が持ってくるように指名されてだな……金曜日の放課後に持って行ってほしい。よろしくな」
「え?本当にそれ以上説明ないのですか?」
封筒なら郵送すればいいのでは?バスケ部でしかも女の自分が何故指名されたのか?混乱していたが、もしかしたら真田君たちに会えるかもしれないと思えば断るのも勿体無い気がしていた。
金曜日の放課後に合宿所へ行くことにした。
ーーー
合宿所は電車を何度も乗り換えてついた駅から歩いて40分ほどかかった。たどり着いた頃には日が傾いていた。早く封筒を渡して帰らないと辺りが暗くなりそうだ。大きな門の前でインターホンを押して返答を待つ。道中は綺麗に整備されているし、監視カメラもあり、さすが日本代表を育てる施設だと関心をしていた。
『はい』
「私、立海大附属中の海野由美と申します。斎藤至さんに封筒を持ってきました」
『私が斎藤で〜す!門の鍵は開いてます。そのまま真っ直ぐきてください』
インターホンが切れる音がした。勝手に大きな門を開けて中へ入る。言われた通り真っ直ぐ進むと大きく開けた場所についた。そこはたくさんのテニスコートが並んでいた。しかし、練習時間が終わっているのか静かだった。辺りを見回すと高身長で白髪の男の人の後ろ姿が見えたので追いかけて声をかけた。
「すみません。私、立海大附属中の海野由美です。斎藤さん……でしょうか?」
「……いや」
「あ、すみません人違いしてしまいました」
「さして問題はない」
「すみません。失礼します」
話しかけた白髪に青メッシュの男の人は近づくと身長が高くて驚いた。よく見るとジャージにJAPANと刺繍されていたので、おそらく選手だということが分かった。斎藤さんはさっきインターホン越しで会話して、こちらに向かっている途中だろう。もう少しこの辺りで待ってみようか。
「斎藤コーチを探しているのか?」
「え……はい。門のインターホンで真っ直ぐ進むように言われて来たので、もう少し待ってみます」
「そうか。普段はここから見える建物にいる。おそらく、そっちから来るだろう」
「!ありがとうございます」
最初は高身長と静かな形貌に少し物怖じしてしまったが、真摯な対応が嬉しくて思わず笑みがこぼれる。知らない土地に1人で来て心細かったのかもしれない。教えてもらった建物の方に歩き出すと、遠くから犬の声が聞こえて、どんどん近づいてきた。声の方を振り向くと1匹の強そうな犬がこっちへ向かってきていた。
「警備の犬がいることは知っているが。後ろに下がれ」
大きな背中が視界を遮る。犬から庇おうとしてくれたが、目の前の人は日本代表候補の選手だ。こんなところで怪我してプレイに影響が出たら……
考えるよりも先に体が動いた。バスケットのゴール下では身長よりも位置取りが大切だ。一歩で高身長の彼の前に出る。犬が大きく口を開けて飛んでくる。私の目には全てスローモーションに見えていた。手に持っている鞄を遠心力を使って思いっきり犬の顔前に振る。犬は距離を取って様子を伺っている。その隙を突くように、鞄の角を無理やり噛ませる。犬が怯んで後ろに下がる。高身長の彼の手を引いて逆方向へ走った。
「今のうちに建物の中に!」
「そうだな。こっちだ」
引いていた手が一瞬で逆転して引っ張ってもらう。振り返らずに走ることに集中していた。建物の中に入ると腰が抜けて勢い良く転ぶ。
「……大丈夫か?」
「はい。……ふふふ怖かった」
緊張が解けて震える手を見ながら腹の底から笑ってしまう。高身長の彼は私を見て困っているようだった。
「ごめんなさい。緊張が解けたら面白くなっちゃって……ふふふ」
「怪我は無いか?」
「私は大丈夫です。えっと……あなたは」
「さして問題ない」
「よかった。日本代表候補選手に怪我をさせてはいけませんからね。ここの管理大丈夫なんでしょうか?斎藤さんとも合流しないといけないのに……」
「この合宿所は監視カメラが至る所にあるので、一箇所にとどまっていれば見つけてもらえるだろう。行こう」
「はい。……あの、ここは何の建物ですか?」
「寮の裏口だ。入口の方に談話室がある」
話し声が聞こえる部屋もあり、お邪魔している自覚が湧いてきて居心地が悪かった。早く斎藤さんと合流できる事を祈りながら早足で移動する。
ーーー
「ここで待っていれば良いだろう」
「ありがとうございます」
ソファーに座ると、高身長の彼も向かいのソファーに座った。もしかして一緒に待ってくれようとしているのだろうか?何も話さず、目線もわざと逸らしている様子だった。
「あ、あの。もしご予定がありましたら、私一人で待たせていただきますので」
「さして問題ない」
「……」
「……」
沈黙しているが、彼はリラックスしているように見えた。沈黙が苦ではないタイプならそこまで緊張しなくても良いのかもしれない。ずっと親切にしてくれた人に対して、怖さや気まずさは全く感じなかった。
ーーー
「先輩お疲れ様です……え!?海野さん?」
「幸村君?久しぶり!」
「なんでこんなところに……真田!柳!ちょっと来て」
幸村君が奥に向かって声をかけると、真田君と柳君も現れる。二人の顔は傷だらけで、真田君に関しては眼帯をしていた。驚きながら2人を心配をした。合宿始まってすぐ、真田君と柳君と連絡取れなくなった時期……つまり負け組の練習がどれだけ壮絶だったのか怪我が物語っていた。どんな練習内容だったのか誇らしそうに教えてくれた。
「へぇ。崖に登ったり、鷲に風船が割られないように逃げたり、地獄の特訓ね……」
2人の話を聞きながら腹の底から怒りが込み上がってきた。短期間のスキルアップとはいえ、大きな怪我をするかもしれない、場合によっては選手生命に関わる事故に繋がるかもしれない練習をやらないといけないのか?最先端の設備で練習できる環境で、どうして危険な事をさせるのか?さっきの警備の犬の件と言い、この合宿場の大人は何を考えているのか?
入口から何かぶつかったような鈍い音と男の人のうめき声が聞こえて、振り返る。高身長の彼にも負けないほど背の高く、長い黒髪をくくった男性がおでこを抑えながらこちらに歩いてきた。
「どーも海野さん。ここのメンタルコーチしてます、斎藤で〜す」
「……どうも」
「あらら、そんな怖い顔しないで」
「ん?斎藤コーチが海野さんを呼んだのですか?」
「そうです。君たち3人が私の面談で話題にあげた噂の子に会ってみたくて呼んでしまいました」
「あの。さっき私達、警備の犬に襲われたのですがー……」
「あぁ。あれもわざとですよ?あなたの精神力を見せていただきました。いや〜越知くんと会うのは想定外でしたが、守られても尚、前に出て戦うなんて中々できることではないですよね。とても素晴らしいです。」
「もし一歩でも間違えたら、怪我したかもしれませんよ?」
「越知君なら大丈夫だよね?」
「はい」
「あと崖の上の練習について聞きました。安全面についてはどうなっているのですか?」
「海野さん。俺達なら大丈夫だ。その練習のおかげで革命を果たすことができたんだ」
「選手が無理するのは当たり前なのです。私が言いたいのは、無茶させないように大人が安全性を確保できていますか?犬がパニック起こして誤って選手を傷つけないですか?崖から落ちても骨を折らない保証はありますか?自己管理も必須ですが、わざと危ないことをやらせているのではありませんか?」
「……なるほどね。堂々と自分の意見を言えるのは強みですよ。このU-17のマネージャーでもやりませんか?」
「断ります。私はバスケ部ですし、将来の保証もしてくれないじゃないですか」
「おや?バスケ部はもう引退されていますし、勉強ならここでもできますよ?」
「引退しても残り少ないギリギリまで後輩の育成はします。私は代表候補でもない一般人なので授業を優先しますよ。この封筒渡しましたので帰ります。明日も部活があるので」
「あ、安心してください。あなたのお家と学校に電話して、今日はここで一泊して明日の部活もお休みすると話はしてありますので。こんな時間に帰す方が危ないでしょ?明日は土曜なのでウチの見学でもしていってください」
「は?何の権限でそんな勝手なことをー……」
「ちなみに、この封筒の中身はただの白紙です。用があるのは海野さんですから」
にっこり笑う斎藤コーチに苛立ちが止まらなかった。わざと私を怒らせているように思えた。だから、一度冷静になって受け入れる体制をとる。
「ー……っ着替えも何もありませんが」
「こちらに予備の服をご用意してますよ。さぁコインランドリーと泊まるお部屋をご案内します。越知君、幸村君、真田君、柳君、夕飯の時間まで彼女借りますね」
越知さんに頭を下げて、3人にも視線を合わせてから斎藤コーチの後ろを追った。一通り施設の案内をしてもらって、最後に部屋で泊まりに必要なものを揃えてもらった。
ーーー
「で、実際はあの3人の誰と付き合っているのですか?」
「勝手に付き合ってるとか妄想しないでもらえます?」
(続く)