噂の女バス先輩は……(完結)
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デフォルト名「海野由美(うみのゆみ)」
真田弦一郎達と同い年
女子バスケ部
とても負けず嫌いでストイック
真面目
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堅物の真田先輩が穏やかに挨拶した女子生徒は、1年前は鬼と呼ばれて、唯一挨拶してくれる真田先輩を無視していた。
海野先輩が鬼と呼ばれた理由は「部活後に校門で、周りにいた人が動けなくなる何かがあった」からだ。
漠然とした「何か」とは?
その鬼と挨拶し合うまで距離を縮めた真田先輩は何をしたのか?
そもそも本当に付き合っていないのか?
丸井先輩とジャッカル先輩から聞いた話で、より海野先輩の謎が深まっただけな気がする。
聞いた話を一晩中考えていたがモヤモヤが大きくなるだけだった。
朝練で体を動かせばスッキリするだろう。部室でさっさと着替えて準備をする。
「何より、真田先輩がたるんだ顔してるからいけないんスよ」
「たるんでるのは貴様の方だろ!赤也!」
「ひぃ!すみません真田先輩!……って仁王先輩」
「プリッ。たるんだ真田なんて、変な幻覚を見るほど悪いものを拾い食いしたのかのぉ?」
「おはようございます切原君。仁王君、1年生をいじめるのは感心しませんね。」
「ピヨ」
「っス。柳生先輩と仁王先輩。変なこと聞いてもいいっすか?」
「私達で分かる事でしたら」
「あの……海野先輩って知ってます?」
柳生先輩は顔色ひとつ変わらなかったが、ニヤニヤ笑っていた仁王先輩の顔が急に真顔になる。
「……なんじゃ?本当に悪いものでも食ったのか?」
「海野先輩とはうちの学年の海野由美さんのことでしょうか?」
「あー名前までは知らないんスけど、真田先輩がこの前部活中に手ぇ振ってて」
「『一目惚れしたんですけど真田先輩の彼女だったらどうしたら良いですかねぇ?』ってことかのぉ?」
「ちょっと!話をややこしくしないでください!……まぁ真田先輩とどういう関係かも気になる所なんスけど」
「海野さんは強くて優しい方ですよ。切原君が一目惚れしてしまったのでしたら応援しますとも。」
「柳生先輩まで変なこと言わないでください。……ん?海野先輩って他にもいるんスか?」
「真田と親しい海野は一人しかおらんぜよ」
「優しい?ちょっと聞いてた話と違うような……鬼とかなんとか」
「切原君。その話はどこから聞いたか知りませんが、それは勘違いですよ。私、1年の時に海野さんと同じクラスでしたので」
「え!マジっすか!?ちょっと教えてください!」
「私の主観でよろしければ……」
ーーー
噂は突然広まった。同じクラスメートの大人しい方だと思っていた海野由美さんが、鬼のような気迫で大勢いたその場の生徒を全員黙らせた。朝からそのような話をいろんな形であちこちから聞こえた。根も葉もない噂を広めるのはジェントル精神に反すると思い、噂をする生徒に声をかける。
「やめたまえ。君はその場にいたのかね?」
「でも結構見てた奴多いみたいだぜ」
「少なくともアイツと同じ女バスの奴らは全員見てるって」
「おい、アイツとか言うなよ。逆鱗に触れたらどうすんだよ」
海野さんが教室に入った瞬間。あれだけ噂で騒がしかった教室がぴたりと鎮まる。しかし彼女は何も気にせず、ピンと背筋を伸ばして真っ直ぐ自分の席へ向かう。
クラスの異変に驚いて立ち止まるか、最悪引き返してもおかしくないのに、彼女は普通に過ごそうとしていた。
この異様な空気を予測した上で振る舞っているのなら、肝が据わっていらっしゃる。他の女子バスケ部の方々はずっと私達が被害者だと言い回っていたのに、小さく教室の隅に固まって海野さんの様子を伺っていた。
授業中も休み時間も海野さんの周りに誰も近づかず、一人で過ごしていた。移動教室も自分のタイミングで向かっていった。彼女自身も何事もないように過ごしているので、わざわざ話しかけるほどでもないかと悩んでいた。
(教室を離れている今なら周りを気にしないで話ができるかもしれませんね)
声をかけようと柳生は足を早めて海野さんを追いかけた。
他のクラスの生徒も海野を避けているように見えた。噂はどこまで広がっているのか?気を取られていると誰かが海野さんに声をかける。
「おはよう海野さん」
「……」
せっかく声をかけてもらったのに、何も返さずただ通り過ぎた。しかし、声かけた男子生徒は優しい顔をして海野さんの後ろ姿を見送っていた。
好意的に挨拶した彼も通り過ぎてしまったところを見て、何も知らない私が話しかけても出来ることは無い様な気がした。
ーーー
「その話しかけた人って真田先輩じゃないっスか!?」
「そうです。その時は、まだテニス部に所属していませんでしたが、委員会が同じだったので真田君のことは知っていました」
「突然孤立した女は面白そうと思っとったが真田が関わってると知って、俺自身は関わらない様にしとったきに」
「仁王君。アナタの悪い所ですよ」
「ピヨ。火のないところに煙は立たないじゃろ?」
「で、柳生先輩は海野先輩のことをいつ優しいって思ったんスか?」
「あれだけ皆さんが避けられていましたが、夏休み明けには真田君ともきちんと挨拶されてましたし、クラスにも馴染んで行事にも積極的に参加されていましたよ。力仕事から細かい作業まで他の生徒のサポートに回っている姿が印象的でした」
「噂も75日って言うからのぉ。それでも真田を無視したのは事実ぜよ」
「それもきっと理由があったのですよ」
ーーー
海野さんを見守るとしても私なりの真実を知ることも大事だと思い、あの時、真田君に声をかけていたのです。
「あの。私、海野さんと同じクラスでして……何かご存じですか?彼女の助けになりたいです」
「あぁ。あいつなら大丈夫だ。今は戦わないといけないらしい」
それだけ言って真田君は去った。やはり海野さんはこの状況を分かった上で登校して、一人で過ごしていた。そして、真田君も知った上で見守っていた。
ーーー
「おそらく、海野さんは噂になることが事前に分かっていたから、真田君を巻き込まない様に共有していた。しかし、真田君は海野さんを無視することができなかったのではありませんか?」
「それ本当っスか!?」
「本人に辛い当時のことをわざわざ掘り下げるのも失礼かと思って話を聞いたわけではありませんが」
「憶測ってわけか。柳生は推理小説の読みすぎじゃ。現実はそんなに綺麗なものじゃないぜよ。さ、そろそろ部活に行かないとその真田が怒鳴り込んでくるぜよ」
柳生先輩と仁王先輩があーだこーだお互いの主張を話しながら、部室を後にする。
「んー確かに、真田先輩なら変な噂が流れる前に本人に喝でも入れそうっスよね?てか、結局、何があったんスか!?二人は付き合ってるんスか!?」
赤也はその日の朝練は全く集中できなかったとか
(続く)