噂の女バス先輩は……(完結)
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デフォルト名「海野由美(うみのゆみ)」
真田弦一郎達と同い年
女子バスケ部
とても負けず嫌いでストイック
真面目
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最近、体幹トレーニングを頑張っていると真田君に話したら、おすすめのトレーニングを教えてほしいと言われた。自分のメニューは覚えていたが、鍛えたい場所は人それぞれだと思い本を貸す約束をした。
約束の本を袋に入れて学校に持ってきた。今日の天気は午後から雨予報。テニスコート以外の練習だと、放課後に会えない可能性があるので休み時間に真田君のクラスへ足を運んだ。午前中はお互いのクラスが移動教室などでタイミングが合わなかった。昼休みは委員会の活動があったので午後の休み時間にまた足を運んだ。
ちょうど幸村君と柳君が真田君と話していた。私に気づいた幸村君が柳君に合図して、2人一緒にこっちへ向かってきた。
「あ、もしかして邪魔しちゃった?真田君にこの本を渡したかっただけだから気にしないで!」
「いや、ただの雑談だ。話自体も終わっているから、弦一郎に直接渡してやってくれ」
「?わかった。ありがとう」
「じゃあね海野さん」
2人に手を振って別れる。振り返ると真田君は何か考え込んでいる様に見えた。雑談だと言っていたが、本当は深刻な話だったのではないのか?と思って様子を見ていた。真田君はおもむろに顔を上げながら呟いた。
「今回はコミュニケーション能力の不足を教えられたな」
「どうしたの?真田君」
「!海野さんいつの間に」
「貸すって約束していた体幹トレーニングの本持ってきたから渡しにきたよ。午前中は移動教室で会えなかったからさ」
「あ……あぁ。ありがとう」
「真田君のコミュ力ってなんか親しみやすさより、業務連絡感強いよね」
「むぅ。やはり不足か」
「急にそんなこと考えるなんて何かあったの?」
「それよりも……お前に謝らないといけないことがある」
申し訳なさそうに話を始めようとする真田君。しかし、もうすぐ次の授業が始まりそうだったので部活後に待ち合わせて2人で帰る約束をした。
ーーー
部活が終わり、待ち合わせの場所に向かう。テニス部の部活時間は少し長いことは知っていたので先に着くことは予想できていた。
夕方から降っていた雨も止んでいた。
「遅くなってすまない」
「お疲れ様。全然大丈夫だよ」
「ここで話そう。バス通学のお前にとって駅まで歩くのは遠回りだろう」
「気にしないで。せっかくだから一緒に帰ろうよ」
「そうか。まずは、わざわざ時間を作ってくれてありがとう。早速本題に入るが俺の過ちで海野さんに悪いことをしてしまったんだ」
「どうしたの?」
「実は……」
ゆっくり帰路につきながら真田君は話し始めた。
「幸村と蓮二から聞いた話なんだが、俺がお前に挨拶しているところを見た後輩が珍しがって、他の部員から色々聞き回ったらしく、昔のお前の噂を知ったらしいんだ」
「あ〜1年の時に私が部員にキレて『鬼の海野』ってあだ名で学年レベルの孤立したやつ?懐かしいね。すぐ夏休みに入ったから噂も少しの間だったけどね」
「あぁ。その後輩には口止めをしたと言っていたから、また広まる恐れはないだろう。しかし、俺が普段から後輩ともコミュニケーションを取れていれば、その後輩も回りくどい事をしなかったはずだ。わざわざ掘り返すことをしてしまって申し訳ない」
「ちょ……頭あげて!気にしてないし、全然大丈夫だから」
「俺からも厳重注意しようとしたが、蓮二にもっと後輩とコミュニケーションとる努力が先だと叱られてしまって」
「それで悩んでたのか!後輩に舐められず、仲良くって難しいよね」
「気さくなお前でも悩むのか?」
「同級生でも手こずった私だよ?仲良かった先輩は卒業されて……人間関係の悩みは尽きないよ」
どうやって距離を縮めるか意見を交換した。流行りに疎く渋い趣味を持った真田君には相手の話を合わせることは難しいことが想像できた。だから部活以外に共通している勉強や学校行事などが無難だと考えた。
真田君と話しているとあっという間に駅に着いた。
ーーー
「……うむ。さっそく明日から話を振ってみよう。ありがとう海野さん」
「少しでも役立てばいいな。お互い頑張ろう!」
「そうだな」
「じゃあまたね」
「あぁ」
手を振り真田君と別れる。
当時の噂のことを全く気にしていないと言えば嘘になるが、それ以上に悪い噂が流れても真田が私の味方でいてくれたことが嬉しかった。
丁度来たバスに乗り込み、久しぶりにあの時の事を思い出した。
外は、また小雨が降ってきた。
ーーー
バスケ部に入部して、最初は部員全員仲良かった。しかし、突然同級生の私に対する反応が冷たくなった。話かけても無視されたり、私だけ連絡が回ってこなかったりした。戸惑っていると2年の先輩も少しづつ冷たい対応となっていた。幸い3年生の先輩は変わらず仲良くしてくれたのでパス練習などで困ることはなかった。むしろ、上級生と練習することで、みるみる上達していると実感していた。このまま同級生と差をつけることが唯一部活に残る手段だと考えていた。
練習後、制服に着替えた後に全員で10分程度のショートミーティングを行う。なので、帰りは部員と一緒に帰る事になる。
同じバスに乗る同級生の部員がバスを待つ間もずっと横にいる私の悪口ばかり話していた。同じバスに乗りたくないと言われても同じ方向なので仕方ないと無視を決めていた。
ある日、教室に忘れ物をしている事に気づいてミーティング後に取りに行った。敵でしかない部員と離れてホッとしている事に気づいた。
すぐにバス停に向かえば部員と鉢合わせてしまうので、静かな教室をぼーっと眺めて時間を潰していた。ほとんどの部活も終わっているので学校は本当に静かだった。
パコーン…………パコーン…………
どこからかリズミカルで軽い音がする。フラフラと音の鳴る方へ向かうとテニスコートについた。
こっそり隠れて見ていると、テニスコートに男子テニス部員が3人だろうか?奥のコートに黒い帽子を被った人、手前のコートに癖毛の人、審判におかっぱの人がいた。交代しながら軽くラリーをしている様子だった。
(部活の後に仲の良い3人で自主練しているのかな。楽しそうだし、すごく羨ましい)
そんな事を考えながらも、なんとなくラリーを見ていたがボールはすごい早さで、複雑に回転がかかっていることに気がついた。本気で打ち合って楽しんでいる事に鳥肌が立った。
(簡単そうに見えたのはプロの試合と同じで、動きが洗練されているからなんだ)
その日から部活後にテニス部員の自主練をこっそり見るのが習慣となった。
ーーー
今まで私にとっての部活は殺伐とした環境で上手くなる事しか考えていなかった。しかし、あのテニス部員の自主練を見る事で、自分も楽しみながら周りの人に魅せる洗練したかっこいいプレイしたいという初心を思い出すことができた。
いつの間にか部活後の楽しみとなっていた。
自分も部活で噂話されていたのもあり、他人の噂話に全く興味を持たなかった。それでも男子テニス部が多々話題になる事はなんとなく認識していた。クラスの友達にテニス部が強いのか聞いてみたところ、今更?と驚かれながら有名強豪校だということを知った。また、三強と呼ばれる同級生がいる事も教えてもらった。
その中でも幸村精市君って人がかっこよくて、テニス部の練習を見学しに行く女子も多いそうだ。
もしかして、あの3人が三強なのかもしれない。そして、私の足を止めるきっかけとなったあの黒い帽子の人が幸村君だろうか?
ーーー
「あの頃は、こっそり勇気を貰うだけで十分だったのに、仲良くなるなんて微塵も思ってなかったなぁ」
小さく呟きながらバスの窓から雨をぼんやり眺めた。
(そういや、真田君が声かけてくれた日も雨だったな。コートも濡れていて流石に自主練もなくて、いつも見ているラリーの動きを思い出しながら真似してたのを見られたんだよね)
ーーー
雨が降っている日はもちろん、テニス部は自主練どころか部活だってコートで出来ないので筋トレ中心のメニューだった。それでも、コートを確認しないと落ち着かなかった。
いつも30分ほど覗き見して時間を潰していたが、その日は1本後ろのバスの時間まで頭の中で彼らのラリーを思い出して動きを真似ていた。
「時々、ラケットの面が平行な時もあるよね……そっか。テニスラケットを腕として、ラケットの面を手だと考えたら回転のかけるイメージ湧きやすいかも」
やっぱり球技は回転が大切だ。バスケでも指先まで意識しないとコントロールができない。少しでもバスケに活かせる動きがあればと自分なりに考えていた。
人の気配がして一瞬後ろへ顔を向けると黒い帽子の彼がこちらに近づいていた。サァっと血の気が引いた。そういえば、覗き見している時に時々目が合ったんじゃないかと思うこともあった。反射的に慌てて逃げようと荷物をまとめたら声をかけられた。
「す……すみません。邪魔するつもりはなかったんです。ただ、興味深いことをしていた様だったので、ぜひ考えをご教授いただけますか?」
「あ……こちらこそすみません。あの……そんな大したことはしてませんよ。それに私、1年生なので敬語止めてください」
「ん?同級生なのか?」
これが初めて交わした会話だった。
自主練を覗くのを止めてほしいと言われる覚悟だったが、他スポーツ目線からの分析には興味があって声をかけたとのことだった。
「私、海野由美です。女子バスケ部で部活後に忘れ物取りに帰った時に、たまたま皆様が練習しているのを見かけて……いつの間にか毎日の楽しみにもなっていたので、よかったら今後も時々見てても良いですか?邪魔はしません」
「そういうことなら、もっと近くで見学したらどうだ?部活中の野次馬とは違うのだから」
「野次馬って……私こそ野次馬です」
「勝手に写真を撮ったり、サーブの時も騒がしくしないのなら問題ない」
「え?当たり前の事……なるほど。噂では聞いてましたが、やっぱり幸村君ってすごく人気があるから色んな見学者がいるのですね。モテるのも大変ですね」
「あぁ。練習に支障が出ているから止めてもらいたいんだが……中々聞き分けの悪いやつらばかりでだな。俺と幸村と蓮二で感覚を取り戻すために自主練していたんだ」
「え?あっ……ごめんなさい。私、あなたが幸村君だと勘違いしていました」
「む?すまん。自己紹介をしていなかったな。俺は1年の真田弦一郎だ。もう一度言うが、お前も敬語止めないか?」
勝手に真田君を幸村君と勘違いしていたり、同い年とは思えないくらい私ばかり緊張してしまっていた。頭が真っ白になって顔も熱く落ち着かなかったが、それでも私の考えを否定せずに最後まで聞いてくれた。話をしてるうちに緊張が解けて真田君との会話が楽しくなっていた。
「そっか!この部分はバスケでも活かせそう!」
「うむ。……む。いつもと同じくらいの時間になってしまったな。そろそろ学校出るか」
「あ。本当だ。……もうちょっと真田君の話聞きたかったな」
「ん?電車通学ではないのか?」
「真田君電車なの?なら駅まで一緒に帰っても良い?私バス通学だけど、駅からも出てるから!」
「遠回りにならないか?」
「大丈夫!真田君がテニスする時ってどんなことを意識しているのか聞きたい!」
「ふっ。あぁ良いだろう」
ゆっくり歩みながら真田君の話を聞いた。4歳から幸村君とテニスをしていたこと、幸村君や手塚君という強いライバルがいること、柳君とは中学から知り合って、幸村君と柳君の3人で立海三連覇を目指していること……色んな話を聞いた。
Jr.大会に出場するだけでも素晴らしい実績なのに、真田君は常に上を見続けていた。私も真田君の様に志を高く持った人になりたいと思った。
明日は幸村君と柳君を紹介してくれると約束した。
ーーー
(今思えば、憧れの人達と話せたことに浮き足立ってたし、明らかに顔や態度に出ていたのかもしれない。そりゃアイツらが放置しないよね)
ーーー
約束の日、部活のミーティングが終わりいつも通りテニスコートへ向かおうとしたら帰路が同じ方向の同期に絡まれた。
「ねぇ。海野どこに行くの?」
「……関係ないでしょ?一緒に帰りたくないんでしょ?」
「なんでそんな冷たいの?たまには一緒に帰ろうよ」
クスクス笑いながらゆっくり近づいてくる。帰ろうとしていた先輩達も様子がおかしいと気づいたのか、少し遠くから様子を見ていた。
(複数人じゃないと話しかけることも出来ないくせに。でも、このままテニスコートに行ったら真田君達に迷惑かけてしまう)
そのまま立ち止まって同期が飽きるのを待つ。
「あれ?早く行ってよ。いつも何してるか心配してるんだよ?」
「もしかして先生と禁断のなんとか?」
好き勝手に「気持ち悪い」とか「泣いちゃうんじゃないか」とか言わせておけばいいとは思っている。しかし、今日はとてもしつこかった。
せっかくの楽しみを邪魔されているのに苛立って、黒い気持ちが渦を巻きながら深くなる。どれだけ私が視界から外しても、追いかけて引っ張る人がいる。こんな時真田君ならどうするだろうか?もう何も考えることが出来なくなっていた。怒るのも面倒臭い。
「邪魔だから早く帰れよ」
真っ直ぐ目を見て淡々と言い放った。自分の嫌なところをかき集めて、煮出して、濃くなった黒い塊を吐き出した様な声だった。下校時間でたくさん人がいるのに、水が打った様に静かになった。思わず自分でも驚いたが、それ以上に近くにいた生徒が驚き私を見ていた。
自分の体とは思えない様な感覚のままゆっくり校舎の方へ歩いた。
この場所から早く離れたかった。
ーーー
自分の教室に向かいながら、さっきの出来事を何度も思い出していた。あんな強い感情を持っていた事やそれを人にぶつけたことによるショックと驚きで混乱していた。起きたことを悔いてもしょうがないとは分かっているが、あの時にすぐ謝れば良かった。そもそも、もっと耐えれたはずなのに。そんな事ばっかり頭の中でグルグル考えていた。
しばらくすると少し落ち着いてきて冷静に考えられる様になってきた。
「少なくとも噂になって教室には居づらくなるだろう。友達や先輩にも避けられるかもしれない。……女子バスケ部の人数も多いから他クラスでも噂が広がるとなると」
せっかく話せるようになったのに、真田君に嫌われてしまうかもしれない。
毎日通う学校という狭い世界で、憧れている人にまで嫌われてしまったら本当に居場所を無くしてしまう。恐怖が押し寄せて心が押し潰されそうになってしまう。
時計を見るとそろそろ真田君達の自主練が終わる時間だった。
このまま嫌われてしまうなら、最後に何もないふりして会ってもいいかな?
ーーー
重い足取りでテニスコートへ向かう。テニスコートが見えると真田君も振り返り、こちらに向かって手を振りながら声をかけてくれた。
「!海野さん。やっと来たな。ちょうど切り上げて帰ろうとしていたところだ。幸村と蓮二を紹介したいから着替えるのを待っていてくれないか?」
「遅くなってごめんなさい。もう帰る時間だよね?」
「あぁ。今日もよければ駅まで一緒に帰れないだろうか?」
幸村君と柳君の方を向いて、なるべく明るい声で話しかける。
「こんにちは。女バス1年の海野由美です。ご一緒しても良いですか?」
「あぁ」
「もちろんだよ」
ーーー
(心の中にはずっと重くて黒い渦があるのに、それを無視して楽しいフリをしているのも辛かったな。幸村君も柳君もすごく優しく接してくれたのに嘘の自分を見せてる様でずっと痛かったな)
今思い出すだけでもキリリとお腹が痛くなった。
ーーー
帰り道の会話では、なるべく聞き手に回りたかった。でも真田君が今日はお前の話を聞かせてほしいと興味を持ってくれているのが苦しくて仕方なかった。
さっきあった部員との出来事を知らないところで好き勝手言われるくらいなら、自分から言ってしまおうと思い、なるべく明るく打ち明けた。
「でも、私だって馴染む努力はしたのよ?何で無視するの?って聞いても答えてくれないし……幸い3年の先輩とは普通に話せるのでパス練習とかは3年の先輩と組んでる。だから圧倒的に強くなって、無視する子達をねじ伏せたかったの!なのに皆の前でキレちゃったから流石に3年の先輩にも呆れられちゃったも。自業自得なんだけどね」
人に話すと少し頭がスッキリしてきた。そうだ。私はできる努力をしたはず。それなのに怯んだら否を認めたことになってしまうのではないか?
「たるんどる。自業自得と諦める前に、お前が間違ったことをしたのなら明日謝れば良い。間違っていないなら堂々していれば良い。違うか?」
真田君が真剣に私の相談に向き合って、単純化してくれた。そして否定するのではなく、私の意見を尊重してくれて本当に嬉しかった。幸村君も柳君も今日初めて会ったのに、嫌な顔をせずに聞いてくれた。それだけでも私には心強かった。戦う決心もできた。
ーーー
バスが目的地に着く頃、雲の合間から太陽の光が差し込んでいた。もう雨は上がるだろう。
(嫌われ者となった私が噂の三強と話をしていたら、3人にも迷惑をかけると思ったから「知らないフリをしてほしい」ってお願いしたのに、真田君は会う度に声かけてきて笑っちゃいそうになっちゃうし大変だったな)
夏休みに入ってから部員と決着つけるために同期を集めて大喧嘩した。幸村君がテニススクールで強さに嫉妬した他の生徒に茶化されたことがあると聞いて、もしそんな理由なら悪化していく一方だと思ったからだ。自分が出来ることがあるなら諦めたくなかった。
先輩とばかり話してて協調性がないとか、パスの力が強すぎるとか、正直納得はできなかったたが、話を聞いて一言私が「ごめん」と謝るだけで終結した。
ーーー
部員と和解して、テニスコートへ遊びに行く理由は無くなった。それでも、3人にはお世話になったので夏休みの部活練習が重なった日にテニスコートを覗きに行った。他のテニス部員もいたので少し離れたところから3人を探した。
すると、水飲み場で水筒を持った柳君を見つけた。
「海野さん?久しぶり」
「柳君!ちょうど良かった。良い報告あるんだけど、もう部活終わる?」
「あぁ。着替えたら精市と弦一郎も呼んでこよう」
「ありがとう。ここで待ってる」
ーーー
「海野さん久しぶりだね」
「その様子だと解決したのだろう。お疲れ様」
「そうなの3人ともありがとう」
「俺たちは何もしてないよ。真田以外」
「そう真田君!無視してって言ったのになんで話しかけてくるのかなぁ?余計に変な目立ち方したじゃないの!」
「な!お前が無視するからだろう」
「無視した時点で察してよ!」
「俺には俺の流儀があるんだ。挨拶は基本だ」
「頑固者!」
「どっちがだ!」
睨み合う私と真田君を幸村君と柳君がクスクス笑う。それに釣られて私と真田君も顔から力が抜けた。
「……ねぇ。試合が終わったら、どこか遊びに行こうよ。全国大会の話を聞かせてよ」
「あぁ。良い土産話を用意して待っている」
素直に「心配してくれて、ありがとう」とは言えなかったけど、今度はちゃんと心から笑って3人と話せることが嬉しかった。
……嫌がらせが無くなっても一度できた同期との溝を私はゼロにすることが出来なかった。それでも、バスケ部の中で一番強くなって、中学3年間はやり遂げたいと思っている。そこまでが私の意地と覚悟だった。
ーーー
私1人のこんなしょうもないプライドでも1年生からベンチ入りしたし、全国大会ベスト8まで勝ち進んだ。そんなチームの部長候補まで登り詰めたよ。きっと3人なら全国大会3連覇も叶えられるよね。
部活もクラスも違う私達は、ライバルでも友情でもない。この関係性に名称はないが、それでも、お互いに刺激しあえる関係であり続けたい。そして私は彼の事を全力で応援したい。
噂の女バス先輩は……(完)