噂の女バス先輩は……(完結)
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デフォルト名「海野由美(うみのゆみ)」
真田弦一郎達と同い年
女子バスケ部
とても負けず嫌いでストイック
真面目
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たるんでいた。
教室で幸村と蓮二から俺が隙を見せたばかりに後輩の赤也に海野さんの噂のことを知られてしまったことを聞いた。
「しかし、俺が女子に挨拶することが、そんなに不思議か?」
「部活と委員会の真田しか知らない人は驚くだろうね。鞄にうさいぬのキーホルダーでも付けてユーモアなところをもっとアピールしてみたら?」
「う……うさいぬが何かに引っ掛かったら困るだろう!」
「弦一郎は部員とのコミュニケーションをとることをもっと意識したほうが良さそうだな」
「むぅ……そうだな。もっと後輩との距離を縮めることはチームにとって必要なことだ。俺の課題とさせてくれ」
後輩部員にもテニスの練習以外の雑談をこちらから切り出してみるかとぼんやり考えながら、あの時海野さんと初めて会った時のことを思い出していた。
ーーー
幸村と蓮二と部活後に30分だけ自主練習をしていた時に視線を感じた。部活中の視線や偵察とは多分違う様な気がした。
離れた場所から見ているのか、こちらから姿を確認することができない。そして、自主練が終わる前に視線は無くなるので誰か確認することもできないのが、もどかしくあった。
幸村と蓮二に相談してもあまり関心がなさそうだったので気にしないことにした。
だが、次の日が雨だったので、自主練習を休みとなった。いつも視線を感じる場所に行けば覗き見している人物に会えるかもしれないと思い、部活後にまたコートの方へ向かった。
もし偵察だったとしても、応援してくれる人だったとしてもこちらから話すことは何もない。頭ではそう思っているのに、なぜか気になって仕方がなかった。このモヤモヤもその人物に会えば分かるのではないかと信じるしかなかった。
「校舎の方からだったな。他の部活もとっくに終わっているはず。……もしかしたら先生かもしれないな?」
自分の中で納得の出る仮定が出て、歩みを緩めると花壇の奥に人影が見えた。正確には花壇を挟んで反対側にある1号館と2号館を結ぶ渡り廊下の下に人はいた。
なにか考える素振りをしながら、野球やテニスの動きの真似をしている女子生徒だった。周りに他の人の気配がない。何をしているのか気になり、少し近づいた。
「そっか。テニスラケットを腕として、ラケットの面を手だと考えたら回転のかけるイメージ湧きやすいかも。野球バットとかバトミントンと違って……」
スポーツの動きを真似て体の使い方などを分析している様だった。俺も、剣道の呼吸・足さばき・振りの速さなどがテニスの参考になると思って稽古している。だから、他スポーツ目線からの分析には興味があった。
声をかけようともっと近づくと、こちらに一瞬顔を向けた後に荷物をまとめようとしていた。背中を向けられて顔も見えないが、慌てっぷりから怖がらせてしまった様だ。彼女が立ち上がると同時に声をかけた。
「す……すみません。邪魔するつもりはなかったんです。ただ、興味深いことをしていた様だったので、ぜひ考えをご教授いただけますか?」
「あ……こちらこそすみません。あの……そんな大したことはしてませんよ。それに私、1年生なので敬語止めてください」
「ん?同級生なのか?」
「本当すみません。いつもコソコソ見ていて、お邪魔でしたよね」
「コソコソ……もしかして自主練を覗いていたのはお前だったのか」
「え?あれ?いつもこっちを見ていたのでお気づきの上で、注意に来たものだと?」
「注意?部活の見学は禁止にされていない。……そうかお前は、俺たちの練習を見て他のスポーツの参考にしていたのか」
全ての謎が解けた。その上、自分と似た様な考え方をしているのかもしれないと思うとこの女子生徒に興味が沸いた。
「名前を聞いて良いか?あと同級生だからお前も敬語の必要はない」
「私、海野由美です。女子バスケ部で部活後に忘れ物取りに帰った時に、たまたま皆様が練習しているのを見かけて……」
最初は楽しそうだと見ていたら、すごく簡単そうに見えるのにボールの動きは複雑なことに気づいてから、段々見ることに夢中になっていた。簡単に見える動作は、洗礼されているからだと考えて身体の使い方を分析していたとのことだった。
「……いつの間にか毎日の楽しみにもなっていたので、よかったら今後も時々見てても良いですか?邪魔はしません」
「そういうことなら、もっと近くで見学したらどうだ?部活中の野次馬とは違うのだから」
「野次馬って……私こそ野次馬です」
「勝手に写真を撮ったり、サーブの時も騒がしくしないのなら問題ない」
「え?当たり前の事……なるほど。噂では聞いてましたが、やっぱり幸村君ってすごく人気があるから色んな見学者がいるのですね。モテるのも大変ですね」
「あぁ。練習に支障が出ているから止めてもらいたいんだが……中々聞き分けの悪いやつらばかりでだな。俺と幸村と蓮二で感覚を取り戻すために自主練していたんだ」
「え?あっ……ごめんなさい。私、あなたが幸村君だと勘違いしていました」
「む?すまん。自己紹介をしていなかったな。俺は1年の真田弦一郎だ。もう一度言うが、お前も敬語止めないか?」
その後、テニスの動きを教えたり、海野さんの考え方を教えてもらったりと話をした。少しずつ距離が近づいたのか海野さんはタメ口で話す様になってきた。
「そっか!この部分はバスケでも活かせそう!」
「うむ。……む。いつもと同じくらいの時間になってしまったな。そろそろ学校出るか」
「あ。本当だ。……もうちょっと真田君の話聞きたかったな」
「ん?電車通学ではないのか?」
「真田君電車なの?なら駅まで一緒に帰っても良い?私バス通学だけど、駅からも出てるから!」
「遠回りにならないか?」
「大丈夫!真田君がテニスする時ってどんなことを意識しているのか聞きたい!」
「ふっ。あぁ良いだろう」
ゆっくり歩みながら海野さんは俺の話を真剣に聞いてくれた。話しながらも改めて自分の中の決意を再確認できたので、俺にとっても充実した時間となった。
「俺の話ばっかりですまなかったな海野さん。また明日も来てくれないか?ぜひ幸村と蓮二にも紹介したい」
「すごく楽しかった!ありがとう真田君。明日も部活が終わったら絶対行く!またね」
「あぁ。待ってる。今度はお前の話を聞かせてくれ」
手を振って別れた。
ーーー
その次の日から海野さんの戦いは始まった。彼女にとっては嫌な思い出だと思う。しかし、周りを気にせず自分を貫く海野さんの姿を見て、野次馬の見学者に苛立っている自分がたるんでいると気付かされた。知らない間に緩んでいた身を改めて引き締めようと思えた大事な出来事だった。
おかげで後日の練習ではもっと集中できるようになって、見事全国大会を優勝することができた。幸村と蓮二と全国3連覇を目指す良いスタートだ。
海野さんとはスポーツが違えどお互いに高め合える間柄でありたいと思っている。ライバルでも友情でもないこの関係性の名称を知らない。だが、刺激を受けて常に前向きの気持ちへ引っ張ってくれる海野さんを心から応援したい。そして、海野さんにとって俺がそんな存在になれる様に努力を怠らないと心に誓った。
ーーー
「今回はコミュニケーション能力の不足を教えられたな」
「どうしたの?真田君」
「!海野さんいつの間に」
「貸すって約束していた体幹トレーニングの本持ってきたから渡しにきたよ。午前中は移動教室で会えなかったからさ」
「あ……あぁ。ありがとう」
「真田君のコミュ力ってなんか親しみやすさより、業務連絡感強いよね」
「むぅ。やはり不足か」
「急にそんなこと考えるなんて何かあったの?」
「それについてはお前に謝らないといけないことがある」
(続く)