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囚われた親友に

 小田切とは中学ではさほど話していなかったのに、高校に入ってからはよく話すようになった。アイツから話しかけてくることがほとんどだったが、俺から話し掛けることも増えた。周りからは奇異の目で見られていたようだ。

『あいつと話してて楽しいか?……って言われた』

 小田切は怒っていた。でも俺は冷静だった。

『俺もそう思う』
『はぁ?!楽しいじゃん!楽しいからこうやって話してんのに。もしかして、柏木は楽しくないとか?』
『いや………楽しくない……わけじゃない』
『ならいいじゃん。あいつら全っ然分かってねぇのな!』

 俺はお前が分からない。俺みたいなガリ勉といて、何が楽しいんだ?お前は生粋の体育会系だが勉強も出来て要領も良い。おまけに美形だ。そんな揃った完璧な人間が、俺のような輩といても楽しくないだろう。小田切は優しいから、嘘を吐いて俺が孤立しないように振る舞っているに過ぎない。
 ……そうだとしても……悪い気はしない……。

『柏木勉強出来るし、教え方上手いじゃん。先生のよりずっと分かりやすいぜ』
『それは誉めてるんだよな?』
『勿論!』

 良いように使われてるだけのように感じなくもないが、それでも学校ではこうして話して、コイツが部活が無い日は息抜きで遊びに行ったりとても充実している。

『柏木は進路決めた?』
『進学する』
『どこ?』
『東大』
『うわマジ?さすがレベル高ぇ……俺は無理だな』
『お前も勉強すれば行けるんじゃないか?』
『いやいや無理っしょ。ここも部活推薦だったし』

 そうか、無理か……。なんて、ほんの少し残念に思った。大学でももしかしたら、と甘い考えもあったが、そう上手くは行かないものだ。俺もレベルを落とすつもりもない。小田切とは高校までだ。

『でもさ。進路違ったって、いつでも会えるし。ちゃんと連絡よこせよー?』
『!』

 コイツは………学校が離れても、関係を続けるのか?俺と……

『おい返事しろって。嫌じゃないだろ?』
『……ま、あ……な』

 どうせ新しい環境になったら、コイツはいなくなる。新しい関係を築いていく。俺を………忘れていく。
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