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囚われた親友に

『2番、小田切 英二おだぎり えいじ
「はーい」

 中学2年でクラス替えをし、俺の前の席に座る彼は初めて見る顔だった。

『3番、柏木 陵』
「はい」

 担任が出席をとっていると、前にいる彼が振り向いて話しかけてくる。

「よろしくなー!柏木!」
「あ、ああ……よろしく」

 第一印象は、明るい奴だと思った。しかしそれはあくまで第一印象。印象は変わるものだ。
 クラス替えをしたというのに、彼はあっという間にクラスの人気者になっていた。立ち回りの上手い奴なんだと印象が根付く。
 きっとそれは自分には無いモノだったから、客観的に見て羨ましかったのだろう。 俺は人付き合いが苦手だった。そんな俺にもしょっちゅう話しかけてきた。

『柏木、ここってこれでいいんだよな?』

 数学の教科書を開いて、解いた問題を見せてきた。回答もあってる。解き方も完璧。
 ………本当に良く出来る奴なんだ。
 俺はほんの少しだけ回答の仕方のアドバイスをした。そうしたら、彼は嬉しそうに笑う。

『へぇ~、やっぱり柏木に聞くと分かりやすいわ。教え方上手いよな』

 そんな風に誉められると悪い気はしなかった。不思議と嫌味はない。ただ爽やかなんだと思った。
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